冒頭
運命のその日は普通に訪れた。
限りなく普通に今まで通りを装って俺に忍び寄っていた。
何時も通りの時間に起きて、片方しか親がおらず。職業は、と聞かれるとあまり答えたくない職業の父親は家に滅多にいないので、俺は朝御飯を用意し、食べて学校へ向かう。
高校に入学して一年と一ヶ月、家から徒歩30分、自転車15分、そんな距離にある山城高等学校というなんのおもしろみのない、一応、進学校に通う。
何時も通り、本当につまんないくらい何時も通りに自宅、普通の一軒家からチャリを出して何時も通りに学校に向かう。
遅刻もしないし、早くも着かない、そんな可もなく不可もなくな時間に学校に着く。俺の人生を体現してるようで虚しくもなるが、仕方ない。
一年通って飽きてきた、よく見る古い校舎、別に私立のピカピカに興味はないが、変化がないのも寂しいものである。
自分が変わればいいって?………一年通って分かった事は、俺はここで変わろうと思ってないということかな。
言ってて意味不明、つまり色々言い訳にして逃げて、楽しい世界にしようなんて考えてないってこと、今ある幸せを精一杯幸せと感じるのが賢いと悟った。
………これも言い訳だって気付いてない訳じゃない。きっと俺からは変われない。世界が変わってくれなきゃ。
今日は何だか暗い事ばかり考えてしまう。『あの日』だからかな。
当たり障りなく皆に朝の挨拶をしながら自分の席を目指す。
その道中、一人の女子と目が合う。
名前はなんだったかな?
香里美々(こおりみみ)だったかな?
あだ名は『氷の女王』、漫画やゲームですぐに耳にしそうな名前だが、本当にあだ名そのまんまのキャラだ。名前に関しては俺もあまり言えないが、この女は誰とも話をしない、関わらない。冷たい人間、それが周囲の人間が香里に付けたレッテル。
そしてこの女、異常なまでに頭が良い、IQが……250とか300とか、確かめようがないので定かではないが、テストはどの教科もほとんど満点を取る異常者、この勉強において周りがライバルの進学校ではそれが拍車をかけて彼女を孤独にした。
目が合ったのを流して、俺は自分の席に座って一限目の用意を始める。