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異教徒、トルコ説話の一片 The Giaour, A Fragment of a Turkish Tale. (1813)  作者: バイロン卿ジョージ・ゴードン George Gordon, Lord Byron/萩原 學(訳)
異教徒 vs 太守ハッサン
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しかし決してない、年取ったハッサンが

たそがれ時の水際で休まることは。

泉を満たした水が涸れ果てては

心を温めた血の巡りも無くなっては!

But ne'er shall Hassan's age repose

Along the brink at twilight's close:

The stream that filled that font is fled -

The blood that warmed his heart is shed!

もうここには、人間の声などというものは

聞こえまい、怒り、悔み、喜びの声は。

疾風の孕む最近の音は哀しくも

葬送の慟哭だった、女の、狂おしいまでの。

And here no more shall human voice

Be heard to rage, regret, rejoice.

The last sad note that swelled the gale

Was woman's wildest funeral wail:

全ては静寂の中に包まれ鎮まり、

ただ強い風には格子窓がはためくばかり。

突風吹き荒れようと、雨降り注ごうと

その留め金を止める手もなくなると。

That quenched in silence all is still,

But the lattice that flaps when the wind is shrill:

Though raves the gust, and floods the rain,

No hand shall clasp its clasp again.

砂漠の砂に、見つかれば嬉しいものだ

荒れ乱れようとも同胞の足取りなら

だから、ここでは悲しみの声ですら

あるいは安堵のように響くことすら……

On desert sands ‘twere joy to scan

The rudest steps of fellow man,

So here the very voice of grief

Might wake an echo like relief -

少なくとも言えるはず、「すべてが失われたのではない」と。

「一人だけでも、残っている生命がある」と。

そこに黄金の部屋数多あれば、

そこに孤独を逃れられれば。

At least ‘twould say, ‘All are not gone;

There lingers life, though but in one' -

For many a gilded chamber's there,

Which solitude might well forbear;

まだ崩れてはいない丸屋根の許

ゆっくりと朽ち果てつつある…

だが笑わざるその門には暗黒が漂ってくるし、

そこには物乞いの一人も待ってはいないし、

Within that dome as yet decay

Hath slowly worked her cankering way -

But gloom is gathered o'er the gate,

Nor there the fakir's self will wait;

遍路の托鉢僧も留まりはしない、

布施応援を当てに粘りもしない。

立ち寄りもしないのは、疲れた他所者でも

神聖なる「パンと塩」を祝福するためにでも。

Nor there will wandering dervise stay,

For bounty cheers not his delay;

Nor there will weary stranger halt

To bless the sacred ‘bread and salt'.

富めるも貧しきも同じように

見向きもせず通り過ぎるように、

礼儀も憐れみもなくなった

ハッサンと共に山蔭に消えた。

Alike must wealth and poverty

Pass heedless and unheeded by,

For courtesy and pity died

With Hassan on the mountain side.

その屋根が、人の避難所だったところが、

孤独な飢餓の巣窟と化してしまうのだ。

客は広間を飛び回り、家臣には労役から飛んで逃げられ、

ハッサンのターバンが異教徒のサーベルに裂かれて以来!

His roof, that refuge unto men,

Is desolation's hungry den.

The guest flies the hall, and the vassal from labour,

Since his turban was cleft by the infidel's sabre!

dervise:dervish の古形。イスラム教の托鉢僧。くるくる廻る踊り念仏を披露し法悦に入る

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