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異教徒、トルコ説話の一片 The Giaour, A Fragment of a Turkish Tale. (1813)  作者: バイロン卿ジョージ・ゴードン George Gordon, Lord Byron/萩原 學(訳)
異教徒 vs 太守ハッサン
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場面は唐突に、荒廃したハッサン邸の現状に変わり、在りし日の様子に対比して語られる。

馬の姿は厩舎から消え。

農奴の一人もハッサンの館に見えず。

独りぼっちな蜘蛛の薄い灰色の(とばり)

波打って壁に次第に拡がる有様。

The steed is vanished from the stall;

No serf is seen in Hassan's hall;

The lonely spider's thin grey pall

Waves slowly widening o'er the wall;

コウモリが東屋をハーレムにする、

そして、その権力の要塞にある

烽火台(のろしだい)を梟が乗っ取っている。

野犬は泉の淵にうろつき吠える、

怖い顔して飢えと渇きに悩まされる。

The bat builds in his harem bower,

And in the fortress of his power

The owl usurps the beacon-tower;

The wild-dog howls o'er the fountain's brim,

With baffled thirst and famine, grim;

大理石の床に流れた水が涸れているから、

荒れ果て雑草と塵ばかり積もっているから。

昔は、水のきらめきが見られたものだ

それが昼間の暑気をも打ち払うのが。

For the stream has shrunk from its marble bed,

Where the weeds and the desolate dust are spread.

‘Twas sweet of yore to see it play

And chase the sultriness of day,

銀の露が高く湧くように

渦巻き幻想的に舞うように

辺りに贅沢な涼しさを漂わせ

空気を、大地を、青々とさせ。

As springing high the silver dew

In whirls fantastically flew,

And flung luxurious coolness round

The air, and verdure o'er the ground.

あの頃は良かったって、

雲ひとつなく星空が輝いて、

打ち寄せる光の波を浴びて、

夜にはその旋律を聞くことさえできて。

‘Twas sweet, when cloudless stars were bright,

To view the wave of watery light,

And hear its melody by night.

子供の頃、ハッサンは何度も

その滝の縁の辺りに遊んだ。

ハッサンは、何度も母の胸に抱かれ

その響きは休息にぴったりだった。

And oft had Hassan's childhood played

Around the verge of that cascade;

And oft upon his mother's breast

That sound had harmonized his rest;

若かりし頃のハッサンは何度も

その岸辺で美人の歌に癒されていた。

とろけるような音色を奏でるところに

音楽が混ざり合い、より柔らかく感じられた。

And oft had Hassan's youth along

Its bank been soothed by beauty's song;

And softer seem'd each melting tone

Of music mingled with its own.

serf:「農夫」「農民」より「奴隷」に近い存在

hall:主に「玄関」「広間」を言うが、「邸宅」そのものを指すことも

pall:幕や覆い、特に棺のカバーを言うが、ここで「棺衣」とすると唐突に見える

Waves:Webs を含意したのだろうけど、そこまで付き合えない

harem:「後宮」と訳すべきか。訳者にとって本作は、モーツァルトのオペラ『後宮からの逃走』本歌取りにしか見えないので、なるべくなら解るようにしたいのだが。

beacon-tower:「灯台」「信号所」「標識局」でも良いが、要塞の中にあるものなら。

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