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それからは、以前の日常に一組のピアスが加わっただけの、変わらない日々が続いた。
朝が来れば彼が起こしに来て、彼に時間があれば一緒にご飯を食べ、日中は読書をして過ごし、時折庭に出て散歩をする。
そしていつもの日常は唐突に破られる。
その日は、日が昇る前から目が覚めていた。ベッドにじっと横たわり、辺りの気配に耳を澄ます。
人の声がした。彼ではない。飛び起きて窓に駆け寄った。この屋敷の1階以外の窓は全て開かないのだが、目を凝らして外を見る。
ばたばたといつになく足音を立てて、彼が部屋に入ってきた。
「魔法省のやつが来た。君を探している。どうして、君のことは誰にも言ってないのに」
取り乱した彼を、じっと見つめた。その私の様子で、彼は察したらしい。
「君か!でも、どうやって!」
私は耳につけたピアスに触れた。彼に貰ったピアスだ。だが、最初の贈り主は彼ではなかった。