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扉を開けると、柔らかな花の香りがした。春。世界が鮮やかさを取り戻す季節である。いつものように、いや、今日は努めて外に出ることを考えないようにしながら庭を歩く。そうすると思い浮かぶのは、もらったピアスのことだった。糸を手繰るように、ピアスにまつわる記憶が呼び起こされる。
私が最初に貰った装飾品もまた、ピアスだった。贈り主は魔法の師匠。私の瞳と同じオパールで、同じ色の石を手に入れるのにずいぶん時間がかかってしまったと師匠は笑っていた。そのピアスには特別な魔法がかかっていて、対となるもう一組のピアスがあった。それはアイオライトのピアスだった。師匠には大切な人ができたら贈れと言われたが、今は誰が持っているのだろうか。
昔を思い出していたら、ずいぶん時間が経っていたらしい。彼が庭まで呼びにきてしまった。
「春先はまだ寒いんだから、そんな薄着でいると風邪を引くよ」
「そうだね、もう部屋に戻るよ」
「そうかい?」
「ああ」