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落ちたと言っても、5段ほどの話だ。体を強く打ちはしたが、大した怪我ではなかった。だが、彼はそう思わなかったらしい。そして彼は、私が動き回らないようにするにはどうしたら良いか考えた結果、私を抱くことにしたらしかった。
最初はそれでもまだ良かった。その行為は苦痛でしかなく、反感を抱くことで私は自分を保っていられた。だが、それは次第に快楽へと変わっていった。
苦痛ではなく、快感によって声が出そうになることも、その行為への不快感が薄れていくことも、そしてそれに伴って外のことを考えることが減っていったことも、全てが絶望でしかなかった。
そしてある時、私の心は動かなくなった。苦痛も快楽も感じはしたが、そのことについて何も思うことはなかった。外に出たいとすら思わなくなったことに気づいても、それもすぐに忘れてしまった。
私の様子が変わったことに気づいた彼は、私を抱くことをやめた。それからは穏やかな日々が続いた。
そうして年月は過ぎていった。