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今日は仕事がないらしい彼と、私の部屋で、揃って本を読む。
「どうしたの?さっきからよくそれに触っているけど。やっぱり邪魔だった?」
「いや、嬉しくて、触って確かめたくなるんだ」
「っ、そんなに喜んでもらえるなんて!僕の方が嬉しいよ!」
さっきから何度も触っていたのに気付かれてしまったようだ。苦笑しつつ、また触っていたピアスから手を離す。ちょうど集中が切れてしまったので、読んでいた本を閉じて立ち上がった。
「散歩に行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
散歩と言っても屋敷の中を歩くだけだが、これが意外と気分転換になった。歩きながら、久しぶりに、ここに来たばかりの頃を思い出す。今でこそ自由に動き回ることができるが、最初は、こうして屋敷内を歩くことすらままならなかった。禁止されていたのではなく、実際に体を動かすことが出来なかったのだ。