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「おはよう」
いつも通りの朝が始まる。瞼の裏が、朝の柔らかな光で明るい。耳からは、室内履きが床を叩く音が近づいて来るのが聞こえる。まだぼんやりとした頭のまま、口を開いた。
「今日もいい天気みたいだね」
「うん、今日もよく晴れているよ」
嬉しそうな声が返ってくる。何か良いことがあったのだろうか。いつもなら天蓋の外から声をかけて来るだけなのに、今日はカーテンを開いて覗き込んできた。
「さあ、起きて。贈り物があるんだ」
「贈り物?」
今日はどうやらイレギュラーな日のようだ。ここにきてから、私がどうしようと彼は毎日同じことを繰り返して来たというのに、どんな心境の変化だろうか。疑問に思ったが、目も覚めてしまったので起き上がって身支度をする。その間、彼がじっと私を見ているのにもすっかり慣れてしまった。彼は特別裕福というわけでもなかったが、私の部屋だけはその中だけで完結するように改装していた。
私が彼に監禁され始めてからおそらく7年。私が時間の流れを知るには季節を手がかりにするしかなかったが、冬から春へと移り変わる麗かなある日の朝のことだった。