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第9話 ■ 倉庫小屋の中を一掃せよ!

【前回までのあらすじ】

成績優秀だが人見知りのミフネ、工務店の娘にして運動神経抜群のフブキ、おとぼけだがデザインセンスが光る美術部のサユリ、三人の女子高生は、校内カフェに改装するため、倉庫小屋の片付けをしていた。

「せんせ~、これいつ終わるんですか~!」

段ボール箱3段重ねで載せた台車を押しながらサユリが倉庫小屋から出てきた。

初夏の熱気の中、ミフネもフブキも、さっきもらったばかりのツナギが汗でびっしょり濡れている。

「なん言いよんな。倉庫の中身を全部出して空き部屋にせな、カフェに改装できんやろ。」

表でイシハラ先生が冷たく言い放つ。


 ミフネは長い髪がじゃまになって、拾った輪ゴムを使ってうなじのあたりでひとつに結った。

家の外で髪を結うのなんていつぶりだろう。

中学時代は髪型の指導が厳しく、特に体育の時などは髪を結うように口うるさく言われたものだ。

しかし、うちの高校はけっこうゆるかった。

入学して以来、人の目線を避けるようにミフネはずっと髪を下ろしていた。

数年ぶりに、直接風がほほをなでていく。

なんて気持ちいいんだろう。


 先生は、三人の生徒が運び出してきたガラクタを倉庫小屋の前に分類して並べていた。

「まあ、いったん休憩しようか。」

汗まみれになった三人を見て先生も手を止めた。

先生は、軒下にあった保冷バッグから250mlの缶ジュース「つぶつぶオレンジ」を取り出すと三人に投げてよこしてくれた。

「ありがとうございまーす!」

三人は思い思いの場所に座り、缶ジュースのプルタブを開けると一気に飲み干した。サユリは軒下の冷たいコンクリートの上で、持っていたタオルを枕にして横になった。

挿絵(By みてみん)

 倉庫小屋の前のアスファルトの上には、身長を超えるような大きな木材や合板、ペンキの入った一斗缶、過去の学園祭で使われたと思われる看板や大道具などもあれば、家庭用冷蔵庫、調理器具、布団などの生活用品が並べられていた。

ミフネは立ち上がり、そのひとつひとつを眺めてまわった。


「もともとこの倉庫小屋には、夜間警備のために住み込みの校務員さんがおったんや。だから、奥にはキッチンや風呂なんかもある。

十数年前から専門の警備会社に委託するようになってからは単なる倉庫になっとるんやけど。」

段ボールの中身を分別しながら先生が教えてくれた。

「それで生活用品なども出てきたんですね。家族で住んでたんですか?」

「そうや。なんでわかったん?」

ミフネは、がらくたの入った段ボール箱の中からうっすら汚れたウサギのぬいぐるみを拾い上げた。先生はそれを見て納得した。

「だいたい、独り者とか小さい子のいる若い夫婦とかが住んどったらしいで。わたしもそんな頃のことは知らんけど。」


「先生は、今何をやってるんですか?」

フブキが尋ねた。

「部屋から出てきたガラクタを、『要る物』、『他の場所に移す物』、『捨てる物』に仕分けとんや。たとえば、木材や工具や調理器具なんかは、これから要るやろ。学園祭の看板や大道具なんかは校舎内の空き教室に運ぼう。あとは焼却炉行きや。」

見ると、ガラクタは三つの塊にかためて整理されていた。

「え~!?これをまたどっかに運ぶんですか~?!」

サユリは寝っ転がったまま悲鳴を上げる。


「わたしは、会議があるけん、あとはまかせたで。そや、使う物にはブルーシートかけときや。雨で濡れたら使えんくなるもんもあるけん。」

イシハラ先生はがらくたの山を指さして指示を出すと、その手を軽く振って足早に校舎内に去って行った。

ミフネは手に持っていたウサギのぬいぐるみを『要る物』として積み上げられた山のてっぺんにそっと置いた。

「よし!暗くなる前に終わらせようか!」

フブキが立ち上がる。

「うん。がんばろう!」

ミフネもタオルを首にかけると立ち上がる。

サユリは軒下で寝っ転がったまま力なく手を振る。

「がんばってね~。」

「おーい!や・る・よ!」

二人が同時に詰め寄る。

「ふえ~ん・・・。」


すべての搬出作業が終わったのは辺りが薄暗くなったころだった。

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