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第5話 春の収穫祭

◇第5話 春の収穫祭


春になった。気温が上がり暖かい気候になる


▽収穫祭の始まり


作物は一般で春と秋に二度収穫する。

菜園は薬草や果樹園のほか畑(主に米又は小麦、野菜)・牧場・鶏舎まであり、全て商会で管理運営されている。菜園内にある寄宿舎で10人ほど住み込み管理運営されてる、作業員も全員が孤児院の出身者。


収穫量は施設で消費できない程の量だ、余る作物や肉は商会を通して外部に売りに出される。

ここは農場も併せて経営されているから変でも何でもないのだ。


小麦の刈取り(米は秋)野菜の収穫は孤児院総出で作業にあたる。この時は訓練も座学もお休み。

米は小麦と同じ主食として食べている。ピラフ、パエリア、混ぜご飯物が多い、白米とおかずで食べる習慣はない。

ただ食に関して興味は沸かない、借り物の体で味覚を味わっても虚しいのだ。


子供達は嬉々として麦刈りに励んでる。

頑張った子にご褒美が貰える。

収穫祭に少額賞金と甘いお菓子をちょっとだけ皆より多く頂ける。


祭りの司会者から

「今年の年少組の優勝者はカレンに決定しました」

「彼女の刈り取り量は歴代最高です、全体で4位の記録も快挙になります。よく頑張りました。おめでとう!」

カレンは壇上でぴょんぴょん跳ね、満面の笑み浮かべて手を振っていた。

会場から驚きの声と割れんばかりの拍手が沸いた。


「続きまして年中組の優勝者は・・・・・・・・・」

   ・

   ・

   ・

   ・

「以上、これを持ちまして表彰式は終了します」


カレンは山盛りのクッキーと賞金袋抱えやってくる。

「やったー クッキー一杯もらえた」

力こぶ叩いて実力を示す、女の子は甘い物大好き。

「年長者抑えて4位はすごいぜ」

「ゴーキなら、やれば出来るでしょ」

「それがよー 途中で飽きて止めちまったぜ」

「ブッ!」

ゴーキは根気がなかった。

「ユーキは何位だった?」

「僕は7位」

「俺の方が上だ 5位」

「手を抜いたバカに負けてんじゃん」

ユーキは頭を掻く。まだ体力がない。

「バカっていうな!」

「脳筋バカじゃん」

「バカって言うやつがバカなんだ」

「バカはバカ」

永遠とバカの応酬が続くのであった。《合掌》



めでたく無事に収穫祭は終わった。




▽子供と体力


早朝、仲良し3人組が集まった。

「来年の武術大会まで日あるけど、これから遣りたい強化決まった?」


武術大会は年明け1月の末ごろに年に一度の勝ち抜き戦ことの大会をいう。

ちなみに月はない、ただ月単位で考えないとピントこないので表現している。


「俺は剣衝したい、風切り刃だせたらカッコいいし・・・」

「うん、うん カッコいいじゃん」

『じゃん』って何処の言葉だよ。

「風切りかー、大会に出るなら覚えていた方がいいかな?」

「もう風切り刃に決定よ!!!」


訓練開始


剣装の風切り刃に決めたはいいが、まずは剣に剣衝するから始めなければいけない。

しかし練習始めたはいいがゴーキやカレンの頭は『?』ついたままだった。闇雲にやっても成果は出ないのはあたり前だろう、ちゃんとした指導もないから大変だ。


《仕方ないヒント出してやるか》


ユーキが突然想いついたように、

「ゴーキは剣にバーンと剣衝しようとしてない」


「そう思ってるぜ、そこは気装壁と同じ、一発で刀身に剣衝すればいいんだろう?」

理屈が得意じゃないゴーキは間違った考え方をしていた。

「ぜんぜん違うよ、まず気装壁は部分的に気装を厚くしているだけだし・・・」

「えっ、そうなのか?」

「明らかに脳筋バカよね~」

「まずは、いきなり剣に剣衝するやり方は捨てよう。手順は剣を持っ手に剣衝を延ばす感じかな? その後は少しづつ剣先まで伸ばすと成功。こうやって・・・・・・」


ユーキは小さな短剣を取出し実演して見せた。


「お、お前、剣衝やってるのか」

「えっ、えっ、なんで出来るの?」

剣衝できる時間は一瞬しかないが、短剣を見て自分で驚いてるユーキ。


「いきなり出来たの、ユーキって天才じゃん!!!」

カレンが嬉しそうに褒めてくれた。


皆、半日かけて剣に剣衝できたが、目標は風切り刃をやりたかった。

しかし、いくら短剣を振っても風切り刃は出る様子がない。


《ちったぁー考えろよ、・・・またヒントを出すか?》



ユーキはハット気づいた様に。タローのお陰だけど。

「そーかー、打つ瞬間に気衝出せばいいのか・・・」

振ると地面を這うように砂ぼこり上げて風の刃が走った。理屈でいうと厳密には違うけど、この世界出来る出来ない事の方が大事だ。


二人が駆け寄ってきた。

簡単なことだったと、ユーキは先ほどの気づいた事を説明した。


言葉で気装、気装壁、気衝、剣衝、剣装と言っても明確な違いはないと思った方が大正解だ。技のどれもこれも『気』が変化したもので基は所詮一緒なのだ。この真理に気づけないからこそ、技の習得を難しくしていた。




午後から練習を再開


全身汗だくになりながら剣を振るう。振る、ひたすら振る、さらに振る・・・


「どこが簡単なんだよ!」


一向に成果がでないゴーヤがこぼす、カレンも頷いた。

この日は結局ダメだった。


「まじ、天才だぜ! あいつ・・・」

と思う二人であった。


そんな事とも知らず、涼しげな顔して練習に励むユーキがいた。


訓練して三日目


「やったー 出たぴょんー」

カレンがぴょんぴょん飛び跳ね、Vサインを出す。


暫くしてゴーキも。

「出た、出た、出たぞ・・・」

両手を挙げ大はしゃぎする。


「皆 おめでとう! お疲れさん」


《ところでVサインなんて、この世界にあったっけー???

何故カレンから前世の言葉や仕草がでるのだ? この世界の七不思議か?》



休憩


これは少しまずいと思う。

三人とも疲労困憊している。無理もない剣衝は高等技術、風切りの技は多くの気を消費する。

それと収穫祭の疲れも抜けていない。


前世の情報を、自分の知識だと思わせてユーキに流す。


「皆 聞いてくれる」

大の字に寝てた身体をむっくりと起きた。


「ここのままじゃダメだと思う」


何を勘違いしたのかゴーキが無茶なこと云う。

「ダメだから、さらに地獄の特訓するってことかー」

カレンは手の平を振り無理の仕草をする。

ユーキは呆れ顔で、

「逆だよ逆、休みの日を作ろうって話なんだ」


「ユーキ それはダメだよ、他は死に物狂いに練習してんだぜ。休んだらおいて行かれるぞ」

「そうよねー さすがに休むのは良くないじゃん」


もう少し情報を流す。

「聞いたか読んだか覚えてないけど、子供のうちは無理しちゃいけないんだと・・・」

ユーキは不安顔で説明する。


「そんなの初耳だぜ」


答えず、ユーキは果樹園のリンゴの木を指さした。


リンゴの成木と苗木があった。

「二本のリンゴの木わかる、大きい方が大人で小さい木が僕たち」

「俺は木になった憶えないぜ」

「例えだよ例え、あんたバカなの」


ユーキは苦笑しながら苗木を指さして

「そう例えと思ってね、小さな木の枝にリンゴの実を沢山つけたらどうなる」


左手のひらを右拳で叩き、ゴーキは判った仕草をする。

「枝折れるんじゃね、あんな細い幹だと風で倒れるからな」


「つまり僕らも必要以上に無理すれば折れたり倒れたりするってことさ」


「なら幹を太くすればいいさ、俺ならするぞー」

無茶ぶりするゴーキは筋金入り脳筋バカだった。

「木の幹は、私達の身体の例えで現在の大きさって意味だ・・・」

頷くとカレンもガッテンの仕草して理解した。


「いーい、私達の身体は小さいでしょ。木の枝にリンゴの実を多くつけるは、例えると筋肉をつけ鍛えないといけない。けど、成長過程にある私達がやり過ぎると身体がもたないことよね! ユーキこれで合ってる?」


三人の身長は決して低くない、前世なら大人と同じかそれ以上にある。しかし、この世界の人間は皆大きく成長速度も速い、身長2mが普通にごろごろいる。


「カレンの言う通り、子供の身体は脆いから、成長するまで限界を超えちゃいけないと思うんだ」

カレンはユーキの向けて親指を立て。

「グッチョ!」

「よし分かった。今日はどこまで頑張る?」


こいつ分かっちゃいねー ゴーキよ、お前は無敵だ。


上手い例えじゃないけど理解して貰えて良かった、これで一安心。俺は繋いでいた脳の回線をプチっと切っておいた。


そして午後からは日向ぼっこしてお休みになった。


それを見てた人からは随分な余裕だなと揶揄された。稀に第三区に人はやって来る。




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