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第4話 覚醒前(3)

◇第4話 覚醒前(3)


ユーキの脳に住み着いて3か月、第三区教練場の午後は晴れ後曇り。


▽錬気の模擬戦闘


三人とも様になってきたな。


三人は器械体操のごとく飛んだり跳ねたり、攻撃したり防御したりと目まぐるし動き回っている。

何でも三人同時に戦う遊び、彼らからすると訓練らしいが。

一対一の組手だと、一人が暇でつまらないと言い出したので考えついた訓練方法だ。


今日はタイラン教官が見学にきていた。

タイラン教官は訓練を面白そうに関心してたが、余りやりす過ぎないよに注意された。

何でも腰の入った攻防をしなくなるので、一対一の対戦なった時ツメが甘くなると言われた。


それでも教官は「ほう!」と声を出すどの動きだったためかよく褒めてくれた。

目を見張ったのはゴーキの防御だった、打撃が当たる瞬間に気装壁を作り出し防いでいる。

完全に衝撃を殺し切ってはいないが、他の二人と比べたら雲泥の差だ。前衛の壁役に向いてる。


「カレンの必殺ワンパンチ!」 「ズドーン!・・・」


《ズドーンとかワンパンチとか自分で言ってどうする まるわかりだろ!》


カレンの気弾も素晴らしい。

気を練るスピードは誰よりも早い、威力・速度なら兵士程度と同じと太鼓判を推された。

兵士程度と言われても比べる物はないので判断しにくいが、大人並みの実力とは言われて気分は悪くない、それにしても習いたてで大人並みとは末恐ろしい八歳児がいたもんだ。



「ワッ!」「ガギーィン」

ユーキは避け、ゴーキはしっかりと防いだ。


「いちいち言葉にしなくてもいいぜ?」


「いいのだ 私は戦う美少女剣士だから!」

と言いながらカレンは勝ち誇った仕草をする。


《ワンパンチは気弾と違うからな! ゴーキに通じているのは何故だ?》


「休憩しようぜ」


少し元気がないユーキ。


ユーキは全てに平均以上の能力を持つ。

そつなくこなす技量は優れた才能なのが、逆に目立つものがないと悩んでいた。

二人の姿はキラキラ輝いて見え、平凡な自分に落ち込んでいる。

この時はこの才能こそが彼の最強の武器になると判っていなかった。


《ワンパンチはユーキの寝言らしい。その原因は俺ってこと・・・?》





▽おぼろげながら

『夜の徘徊者』を活用して情報を集めをしてる。


欲しい情報は孤児院の施設を統括してるエゾ商会のことだった。


噂話といえば、『おばちやん』の一択しかありません。食堂の休憩室から頂きました。

A「技師長 栄転して王都へ行くらしいわよ」

B「そうなの? いけ好かない技師の方も何処かへ行かないかな?」

C「院長、副院長、技師長も噂によると分離派なんだって」

B「その分離派って何?、あの技師も同じらしいけどキモイ奴ね」

C「分離派は優秀な人、血族、種族などが中心で社会を作っていこうする会派よ」

B「何それ、イヤそうな世界ね」

A「院長たちの人って好きになれないわ、菜園長が院長の時はよかったのに・・・」

C「いい人ですものね 菜園長」

B「菜園長が院長? 知りませんでした」

A「貴方が入る前のことね、なんでも副会頭と揉めたせいで降格されたって噂ですよ」


B「そうそう、あの技師 妙なこと口走ってましたよ」

AC「なになに」

B「数年後に俺達の時代が来るとか、ヒィヒヒ奴らに未来はないとか、意味不明なことを・・・」

A「確かに意味不明ね」


C「大きな声で言えないけど、噂で、あの人達相当黒いらしいのよ~」

Cは自分のお腹を差して、ここねと仕草をした。皆で苦笑する。


おばちゃんの情報網は凄いです。



もう一つの情報は衛兵がいる詰め所

A「おい聞いてるか? 噂」

B「あれか 同志とか集めてるやつ」

A「そうそう 将来役立つ者とか、なんとか、いうやつだろう?」

B「偉くなれるなら、俺も入れてもらいたい」

A「無理、無理 俺達みたいな能のない木っ端、相手にされないぜ」


B「所であそこの一派最近おかしいしな?」

A「あいつら、いつも偉そうにするし歪んでるしな」

B「そう歪んでるなー」


別の日

A「おい新しい商会出来たの知ってるか?」

C「聞いた聞いた。人材育成とかで、分離派の若手が多数行ったらしいな」

B「ところで新しい商会は何をすのか、聞いているか・・・」

C「詳しい事は流れてこないな」

B「小国で武術の学園ができるらしいが、何でも商会も絡んでいるらしいけど・・・」

C「創立にエゾ商会が尽力してるのは聞いた」

A「孤児院の他に学園も創るのか?」

C「いや、孤児院みたいに会頭は関わっていないみたいだな。あくまで商会主体らしい」


B「最近 孤児院に来られないがお元気なのだろうか? 心配だな」

A「確かに、体調がすぐれないと聞く」

C「会頭がいなくなると商会は不安になるな・・・」

B「不謹慎なことを言うな!」

C「すまんすまん、そう言う意味じゃないよ」


C「あくまで噂だぞ、最近のエゾ商会組合の内部で分離派が揉めているらしい」

A「王都にいる同僚の噂だと、組合運営の事で対立してるそうだな」

C「ここも気を付けなければならないな」

B「確かにな、くわばら、くわばら」


噂をまとめてみると。

エゾ商会組合の分離派は将来何か計画を立てて、今は下準備している最中みたいだ。


俺が見た深夜の手術と関係あるかも知れない。あの後一度も手術をした気配を感じなかった。

夜の徘徊者がウロウロしていれば手術を中止した可能性もある。

何度か徘徊がばれて大騒ぎになり、施設中を捜し回る事があったのも中止にした要因だろう。



ある時、徘徊する俺に業を煮やした技師長は俺を寝台に縛り付けようとした。

それを見た菜園長が徘徊くらいで子供を縛るなんてと言って助けてくれた。

この言葉に技師長は苦虫をかみ潰した顔したまま出て行った。

そんな事件があった。


この後、技師長は王都に転勤して行った。



▽補助脳の発見と解析

そして脳内に埋められた物が漸くわかった、脳幹付近に張り付いた脳細胞。いわば第2の脳、補助脳といえるものだ。

補助脳は記憶する場所もある、ある道具を使用するれば行動や感情を制御・規制・指示を可能(構築)にするトンデモナイ代物だった。


週1回の個別に行われる「感謝の祈り」はエゾ商会への忠誠心を持たせる為かと思ったら、院長が水晶に唱えた言葉は補助脳へ書込みを行っていたのだ。

行動や感情を制御・規制・指示できるとは、一種の操り人形にすることは可能かもしれない。 


補助脳に住む俺様を舐めるなよ!

そんな呪いは発動しない様にした、信号がきたらチャイムを鳴らす魔改造にしといたぜ。



俺は院長と面談した後から、監視されてることは気づいていた。

奴らに俺の存在と『超感覚』を悟られるのはマズイ。


ユーキの身体は幼さすぎる、優れた能力や技能があっても脆弱なのだ。

俺が覚醒すればユーキは更に強くなるだろう、年長者と戦っても負けない力はあるはず。

それでも長時間なら負ける、複数の戦いも無理だ。基礎体力・気の力が全て足りない。

だから覚醒は先に延ばす。顔に出やすいユーキに隠し事は無理だから知らせない方いい。



《まずアレだな、錬気の訓練》



▽錬気の鍛錬

夜の訓練を始めた。脳に住む精神体なら精神エネルギーの『気』を扱えない訳がない。

案の定すぐ使えた、けれど世の中そう上手くは行かない。

出来ると使えるは同意語でない、覚えたては出来るだけで技を自由自在に扱えないし大した威力もない。スキルを取れば最強なんて物はない、ショボい風きり刃は扇風機に負ける威力なのだ。

覚えてからの訓練、長く地味な鍛錬あるのみだ。



けれど錬気は未知の物、少年のように心踊る。ついつい時間を忘れ熱中する。

錬気は楽しい・・・


「生きてて良かった~ ・・・・・・・けど俺 生きてないか???」


ひたすら練習し練度上げるのみだが、毎回寝ているユーキの身体を使うのは不便と思ってしまう。

誰にも見られることなく、何時でも自由に使える場所はないものか。外だと必ず見つかる可能性はある、人目につかない場所だとしても絶対はない。外がダメなら内となるのだが・・・


頭の上に「ピコン」とランプがついた、そう閃いた! ひょっとしたら可能かもしれん。



俺は地上最強を目指して歩みだすのだった。実体はないけどな。



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