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第2話 覚醒前(1)

◇第2話 覚醒前(1)


ユーキの脳に住み着いて1か月


マジに同時並列の人格と聞くと本当に物騒な話しだよな。

二重人格と違うは二つの知識と記憶が脳の中に存在することだろう。

現代なら脳をいじくり回し徹底的に調べられ、いろいろ人体実験にされる事案じゃないか。

ぜんぜん嬉しくもない。



▽最近の流れ

ユーキ本人と直接話してはない。

言語を完璧に理解していない場合、こちらの意思が伝わらないと思うからだ。

ユーキの日常生活はリアルタイムに俺の脳?に伝わる、つまり共有できる。

お陰で簡単な日常会話は聞き取り出来るようなった。

同じ脳にいるんだから、ユーキの言語能力を使えそうな気がするが、使えない事は不思議といえば不思議だ。


前世の語学力は落ちこぼれだった俺からすれば、1ヵ月で日常会話出来る事はスゴイことだ。


孤児院の生活も慣れてきた、いや食事してないし生活してないから慣れるのはおかしいか。



早朝から昼まで菜園の農作業、午後からは一般常識の座学、教練と錬気。これが日課だ。


おかしいといえば、毎日行う教練だ。

これは院長提案の実戦訓練だ、しかも対人用の殺傷訓練とは穏やかでない。

剣が主力の世界だから剣を習うのは良いとは思うが、平民にそこまで必要か疑問である。

座学も変だ、壱ノ国(自国)の一般常識なら分かるが、憶えて損がないからと言って周辺国の一般常識もやらされる。




最も驚いた、いや喜んだのは『錬気』の授業だ。


錬気とは、体内の『気』を使って攻撃・防御や怪我の治療をできるものらしい。

ただ習得は非常に難しく長い鍛錬を要する、けれど素質ないとやっても時間の無駄らしいが。

自在に使えれば国や貴族、騎士団などに高給で雇われ生活に困らなくなる。


聞いた時はファンタジーがキターーーとこ踊りした。踊れない・・・気持ちだけね。

顔がニヤついて少し不気味な人と見られてもおかしくなかった。顔も・・・気持ちだけね。

面倒いわ・・・実体ないから気持ちだけの表現ってなんだよ。


実は転生する前から知っていたのだ、この世界を選んだ最大の理由は『錬気』があることだった。

『気』のお話しといえば有名な漫画が日本にもあるが、俺の中にあるのは隣国の任侠ドラマに出てくる『気』や気功の方だ。

江湖(架空)の地、他に武林とかといったかな? そこで繰り広げられる武侠小説が好きだった。

少林派とか武当派の武闘集団、丐幇かいほう まぁー、乞食と云うか謎の集団も出てきて面白かったな。必ず超人的な武人が何人も出てきて覇権を争うとか、けっこうハチャメチャの内容だった気がする。漫画にある武空術は無かったと思うけど、十数m飛ぶとか物理法則を無視するの普通だったかな? おかしかったのは剣で荷車を破壊する、剣を振っただけなのに火薬で爆破したように壊れる、《ドバーン》の音ともに荷車が飛び散るんだ。絶対ありえんぞ!

物語や会話(考え方)は日本人にない発想で面白くてハマって観ていた。



ここに来たのは『錬気』がある世界に興味があり、自分も体験したかったから。




ちなみに、ここの授業は基本、自由参加だ、一切強要されず自由に選択できる。必要な科目だけ勉強し社会に出て行く、こっちの方が制度的に無駄がなく俺は好きだな。



『錬気』は主に気装・気衝・治癒・索敵の4つがあり、気は互いに繋がりあい厳密な区分はできない。

体内にある『気』を身体に纏れば気装、放出すれば気衝や索敵、体内に入れるのが治癒となる。

誰にもある精神エネルギーなのだ。

簡単に習得することは難しく長い修練が必要。これ教官の受け売りです。



ユーキ達が選択し、習うのは気の基本中の基本である防御の1つ『気装壁』と使う錬気だ。

これを自在に使いこなせなければ戦闘系の仕事は諦めた方がいいとも言われた。




『気装または気装壁』は言葉の通り『気』を装って壁を作り攻撃を防ぐ技。


 (もっと格好いい名称はないのかと思うが)


▽今日は講堂で『気装壁』の講習をやっている、もちろん参加は自由だ。


習得方法は至って単純だ、禅寺でする座禅をすることである。

タイラン教官は元剣士で冒険者だったらしく、体躯もあり錬気も上位者という振れ込みだ。


「目をつぶれ、呼吸を整えろ、そして気を纏って壁を作れ! まずは背中に気装壁だ」

とタイラン教官は怒鳴った。


(ええっーそれだけ! この人、教えるのが下手クソなんだけど・・・)



暫くすると、あちらこちらから『ギャー』と言って苦悶する者や啜り泣く者が出てくる。

タイラン教官が適当に生徒の背中を棒で強打しているのだ。


棒の強打なら『気装壁』で完全防御できる、気装だけでは衝撃を受けるから痛い。


全員が阿鼻叫喚の地獄を味わった所で、タイラン教官は「各自、自主教練するように・・・」と言って去って行った。

タイラン教官は生徒自身で教練しなさいと言ってるのだ、続けたら身体がボロボロになって教練どころじゃないから助かる。

あんな説明の仕方でだよ! 気装壁を出来るか確かめもしないで、棒たたきとは血も涙もない地獄の特訓だな~

それとタイラン教官がいなくなるのは他の所へ教えに行くためで、決して生徒の為にじゃない気もする。





がっしり体形のゴーキが聞いてきた、ゴーキは同じ仲間である。

「ユーキ お前どうだった、何かつかめた?」


涙目になったユーキは首を横に振った。

「わからないよ! ゴーキは平気そうだけど痛くないの?」


「痛いさー、でも最強剣士を目指してる者が、こんな痛みに怯んじゃいなれないだろ!」


「痛みに怯むって、アンタ脳筋バカなの?」


カレンが呆れ顔でツッコミを入れてきた。小柄で小顔、芯の強そうな女子だった。


「何だとー」

「何さー」

「いつも喧嘩しないでよ・・・ それより二人は何かつかめたの?」


二人とも両手を挙げバンザイしたあと頭を下げた。

《あぁーダメだったのねー》


錬気の種類や分類の仕方が適当というか、区分けは曖昧な所が多い気がする。

理論的でないから解りにくいし納得しにくいんだよね。


『錬気』は一筋縄ではいかないようだ。




気になった事がある。

やはりユーキの後頭部の下部部分に手術痕があった。

上手く説明は出来ないのだが脳の下部、脳幹付近に『ある物』異物を感じている。


そうイヤな物を感じるのだ。


『ある物』が何なのか分からないが、脳と繋がっているのは確かだ。


転生と関係あるのか定かではないが、その存在は不気味だ。



夜はいつもの通り徘徊です。

日中はユーキの体を使って錬気の訓練はできないし、脳を調べるのも難しい。

通常通りユーキが寝てから動き出す、これも随分慣れてきた。


考えることがある。

自分の体じゃない、考えれば考える程、馬鹿らしくなる。

しかも呆れるほどの運命だ、生きる意味はあるのだろうか? 全くもって理解しがたい。

納得できないが諦めて進むしかないのは哀しい、ガッテム!


最近、性格が変わってきたように思う。

若い頃は少し短気な性格で怒ったりしたものだ、けど年齢を重ねるほど大人しくなった。

年寄りになれば短気になるとか言われているが60歳は早すぎるだろう。

これ若返ったせいか、性格が変わったようだ。



俺は歳をとっても若い頃と性格が変わった気がしなかった。

若い頃は人は成長するもんだと本気で思ったが実際は違った、本質は10代の頃と変わらないじゃないかと思えるほどだ。

『年寄りになると身体の動きが悪くなる』と俺も単純にそう考えていた。けど現実は甘くなかった、

軽く首を振っただけで突然痛くなる、もう体中の至る所が突然発症したりする。そして突然治る、老いいくは理解不能の世界が待ち受けていた。

老いれば筋肉や皮膚は衰える、老眼になるし、記憶力が低下するなどなど、老若男女問わず誰もが知っている。言葉で理解できても、本当の理解は体験しないとその理不尽さんを実感できない。

例えば、ある時、人と会って会話した事すら記憶が無かった時があった。

『会ったでしょ!』と言われても『記憶が無い』から思い出せない。

この現実は驚くじゃなく、馬鹿になるんじゃないかと恐れたし怖かった。

記憶が飛んだ話は1度きりだが、この後必ずメモを取るようになったのはご愛嬌だ。

老いるとは予想もしないことが起きては消える、その哀しい現実を突きつけられることにつきる。


すっかり老人の愚痴になってしまった。




話しは戻って、若い体に併せて性格も変わっていくのかも知れない。


なんにせよ新しい世界だ、今日も『巡回』と訓練に励もう。



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