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第1話 転生と驚愕の事実

◇第1話 転生と驚愕の事実


目を覚ます、意識もしっかりある。無事に転生できたようだ。

正直どのように転生できるのか、教えてくれた『時の番人』もよく判ってなかったのだ。

ヘルマンさんとカミーラさんも経験したことが無いのだから文句などお門違いだ。


薄暗く周りを把握しぬくいが、人の気配は感じる。

寝言らしい声も聞こえてくる、聞いたことない言葉だ、声の質が高いことから子供だろう。転生で未知の世界を選んだから言語が違うのはあたり前。



まずは自分の身体をあちこち触ってみる。

(こ、これは子供の身体で、人間だ!    ・・・ああ良かった~)

カミーラさんの前任者は希望した転生だったらしいが、必ず人間に転生できる保証はなかった。


心臓の音が耳の鼓膜までドクンドクンと伝わってくる、顔は真っ赤に紅潮してるだろう。


触った感触は9、10歳児の体格だろうか?

10歳児だと50歳くらい若がってしまったことになる、思わず拳を強く握ってしまった。


頭の出来が良くない俺は、転生話しなど雲を掴むよで想像すらできなかったし、具体的な事が分からず出たどこ勝負は不安だらけだった。



動悸も治まり寝台から起き上がり歩いてみる、軽い、とても軽いのだ、心から笑みが漏れる。もとが老人からしてみればこの結果は至極当然であろう。


誰もが感じるだろう! やっぱり若いって素晴らしい~。


永遠の若さがあれば・・・いや無しだな・・・

理想的な体で頭も良く、いい女、いい男なら問題ない。でも反対だったらどうする、それが永遠に続くんだぞ。

人間は歳を取れば形は崩れてくるもんだ、歳をとっても維持してるバケモンは一部にいるだろうが大抵は崩れる。

歳を取れば皆同じ、若い時の優劣など所詮一時的なものだ。

若い時は綺麗だったけど老人になって醜くなる人間も結構いる、記憶力も薄れるし体力もなくなる、身体の形も崩れシミや皺も増える、老人になれば中身も外見も大きな差はなくなる。それを思えば人生悲観するほどじゃない。が、永遠に続くとなれば話しは別だ、死にたくなるほど地獄の苦しみだろうから永遠の若さはいらないな。


老人になるにつれ同窓会に綺麗どころだった人が集まらなくなる理由かもしれん。おっと、これは勝手な憶測なので信じないようにな。老人の戯言、失言だ。




周りを観察していくと小さな部屋と思っていたが数十人が泊まれる大部屋だった。

ここは学校の宿舎なのだろうか、状況に戸惑いつつも考えを巡らすけが見当はつかない。


起きてる人はいない、折角なので建物を探索してみる。ワクワクしながら廊下に出てみた。

これは学校の廊下といえるほど幅が広く長い。

やはり宿舎なのか? ただ薄暗いのでお化けが出てきそうで怖い。

建物は何棟か続いていて、想像してたより複雑で大きい。あちこち歩き回っているうちに迷ってしまった。


よく見ると小さく灯りのついてる場所があってホットした。

近くに行ってみると、入り口の扉に赤い文字で書かれた札が掛けられていた。

「ぜんぜん読めないわ」

扉に赤い文字の札がかかってるのは、前世で『赤』は危険とか禁止だよな。入ると普通マズイよなーと思うが。そうー あれだ!よく事件や事故に巻き込まれる王道の話し・・・。

でも入っちゃダメと言われれると余計に入りたくなるのが人間の性だ。


そして好奇心が勝った。


扉を開け明かりの方へ向かって、暗闇の中を恐る恐る歩みを進める。


扉の隙間から灯りが漏れている、覗くと寝台に5歳くらい男の子が寝かされていた。

部屋に大人が2人いる、病院の手術場で着る青いスクラブを着ている。


「施術を始めようか」


何を言ってるのか理解できないけど、一人の手に注射器が見える。手術なのか分からないが、子供の後頭部を指で触りながら場所を確認している。


注射器が後頭部に注入されようとしたとき、部屋の外からカランと音が響き渡った。

「誰だ!」

俺の近くにあった物に足が当たったらしくカランと鳴ってしまった。


男は物凄い速さで扉に近づいて開けた。


目の前がパーッと明るくなった。


「お前はユーキ どうして、ここにいる?」

その瞬間バタッと倒れる少年。

激しい動悸と眩しい光で、驚きの余り許容量を超えたのか少年の意識が飛んでしまった。


『チッ!』と男の舌打ちが聞こえた。





◇困惑


翌日、ユーキは院長室に朝から呼び出された。

「ユーキ君 昨日の夜、病室にいましたね。このとは憶えていないのですか?」

院長の言葉は怒気が込められている、あそこは病室だったらしい。

「夜のこと? ぼ、僕は寝台で朝までずーっと寝てましたけど・・・」

「本当ですか 何処かに出かけませんでした?」

「はい 何処にもいってません」

少年が嘘を言っているようには見えないが。


「シャンティ院長、深層判定機で確認してみてはどうでしょうか」

言ってきたのは手術の場にいたスワーゲン技師長という男だった。

院長は水晶のような物、机から深層判定機を取り出し呪文を唱え始めた。


そして再度聞く。

「ユーキ君 昨日の夜ことは憶えていないのですか?」

「夜は消灯時間に寝て、朝まで寝てました」

深層判定機は何も反応しない、聞いていた院長と技師長は互いに驚いた仕草をみせた。

「そうですか、ユーキ君 もう下がってもいいです」

「はい、失礼します」


ユーキが退出して早々に。

「院長 どういう事でしょうか?」

「彼は嘘を言ってませんね、つく事など不可能なのは貴方も知っているでしょ」

「しかし、私は彼を見ているのですよ。しかも彼は室内を覗いていた。それを記憶にないなんて現実にありますか?」

「そうですね・・・」

「いくら何でも、おかしいです」

二人はユーキの言動に困惑していた。見てるのに見ていない、居るのにいないなど理解しがたい。

院長は思い出したように言った。

「文献に夜に徘徊する夢遊病者がいると読んだことがあります。本人の意識は無いらしく、けど会話は普通に出来るそうです。彼もそうした病気なのかも知れません」

「ほうー、そんな嘘みたいな病気があるのですか?」

「私も読んだだけで見たことがありませんから断定しかねますけど・・・」

「一時的に記憶が飛んだだけという可能性もありますが?」

「その可能性もありますが、   あれが来年に決まったそうです。今は些細な問題ごとも起こしたくありません、時間をかけ慎重に判断した方がよさそうですね」

「あれが決まったのですか。なら、しばらくは観察対象とした方がいいでしょう」

「そうですね、他の方も監視するように頼みます」

「我々がいつも彼の近くにいると不審がられます、限定的な監視になりますがよろしいですか?」

「それでいいでしよう。私に考えがあります、監視はあの者に任せましょう」

「わかりました」




▽ユーキの不安

(僕はどうしちゃったんだろう?)

(院長先生は夜の事を聞いてきたけど全く記憶がない)

(話しからすると夜に出歩いていたらしい、これって誰かに呪われたのかな、なら早死にするかも知れない)

ユーキは言い知れぬ不安にかられ顔面蒼白になっていく。


「ユーキ 顔が真っ青だよ。院長に何か言われたの?」

心配そうに聞いてきたのは、可憐で小顔の可愛いいカレンいう少女の子だった。

「体は大丈夫だよ」

「お前、心配性なんだよ。男ならドーンと構えなきゃいけねーぜ」

ユーキより大きい男子ゴーキが胸をドンと叩いて言ってきた。

何とも的外れな言葉だろう。

「うん 頑張るよ」

3人は仲良しで班を組む友人で仲間なのだ。

寝る以外は四六時中一緒にいる友達で不思議な仲間達だ。






▽驚愕の事実

俺は寝静まった深夜に目を覚ました。

(ユーキって奴 ひでー軟弱じゃねかー 大丈夫か?)

(それより何だよー 人格が2つあるなんて馬鹿げてるにも程があるじゃねか!)

(異世界転生の意味ないだろうが、ふざけんな!)

(その内、脳が爆発するんじゃねかー)

(俺の人生、積んだ。俺の英傑伝説~幻想に終わった!)

矢継ぎ早に散々悪態をついてみた、声は出してないけどな。


ユーキの体に転生した時に心配していたことだ。

乗り移る場合、前の人格はどうなるのか? 想像したのは脳の持ち主と融合する、消されて置き換わる、死んで生き返り転生するなどを考えていた。そのどちらでもない、今更ながら転生を甘く見ていたかもしれない。



二重人格は良くある話だ。身体が一つで人格が二つ、この状態は見た目は同じだけど違いはある。同時に並列で存在していることだ、試しにユーキの起きている時に手を握ってみたら動かせる。ユーキの方からすると無意識の所作だろう、それと優先順位は俺の方にある。


(あぁー でも・・・何てこった!)


正直、状況を消化しきれていない、いやできない。

落ち着いて冷静になろうが、『私は他人の脳に住んでます』なんて誰が消化できるかよ!・・・

俺の体を返せ・・・・・・

(あっ! 身体は無かったわ)



ユーキがいるここは孤児院で間違いないようだ。

どうこうハッキリとした物はないけど、孤児院にしては俺が知っている施設と違和感がある。

だってな普通、深夜に手術はしないぜ。コソコソしてする手術が真っ当なことは有り得ない、つまり相当に胡散臭い場所ってことになる。


まとめると。

 1.孤児院が学校でもないのに教育しること

 2.夜の出来事、病室で怪しげな手術をしていること

 3.ユーキに掛けた呪文や院長たちの言動がおかしいこと

 4.ユーキの脳内に異物というか違和感があること

こんな感じだ。


まぁー知らない世界だ、いろいろ思い過ごしもあるかも知れない、判断する情報も足りてない。


まだ言語が判らないので、詳しく理解できないため苦労している。これは真っ先に憶えなきゃならない優先事項だな。


後は夜の徘徊をする、つまり情報集めすることだ。これは読み書き出来なくても不都合はない。

見つかっても『夢遊病者』なら咎められる心配もないだろう。





よし、今日も『巡回』に励もう。

さんざん悪態ついたわりに足取りは軽くトコトコと出かけるのだった。


なったもんは仕方ないと諦めるしかない。この先どうなるか心配しても始まらないし、知らないから不安になるけど、何とかなるさー!・・・

人生は長い、そして短い。いい事より悪いことの方が多いけどさー、見方を変えればそんなに捨てたもんじゃないよ。



俺は後になって渾名がついた『夜の徘徊者』、そのまんまじゃねーか! 《苦笑》



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