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第2話 復讐を誓うも、どうやらそれは難しそうだ

すみせん、風邪を引き繁忙期に入りてんややんわで遅れました。


あちこちで雄たけびを上げ、槍を振り回し人を突き殺し、刀を振り下ろし人を斬り付け、放った矢が体に刺さり、鉄砲の玉が雨のように降り注ぎ、何人もの兵士が倒れ、流れた血が大地を染める。

風があってもなくても空気は血の匂いが充満し、かすかに硝煙っぽい匂いもした。

ああ、これが戦争なんだ。

ゲームでもアニメでも映画でもTV越しでもない現実で、実際に私の目で見て起きている光景なんだ。

こうして目の前で人が次々と殺されていくところを見てなんとも思わないのは、ホラーと推理ものとスプラッタが大好きの母の影響か。

体に残る夏の暑さと湿気によるストレスのせいか。

まだ現実なんだと思えないからか。

我儘で自己中な、私を召喚した憎きあの女か。


「あの女ッ!!!!」


全てと言いたいが、最も強いのはあの女のせいだ。

思い出したら怒りが沸いて来た。

握った拳を地面に殴りつける。


「ふざけんなよあの小娘!!なんで全く関係のない異世界のことを私一人に押し付けるんだ!!」


ドンッ!!(ドーン!)


「知ったこっちゃねぇんだよこの世界のことなんか!!てめぇの世界のことだろ!!神に祈る暇があるなら自分でどうにかしろ!!」


ドンッ!!(ドーーン!!)


「なんで全く見知らぬ他人共にそんなことをしなくてはならない!!何故命をかけたタダ働きをしなきゃならないんだ!!」


ドンッ!!(ドーーーン!!!)


「対価を払え!!すべては等価交換!!いきなり召喚して戦場のど真ん中に捨てるか普通!!」


ドンッ!!(ドーーーーン!!!!)


「復讐してやるッ!!同じ目に合わせるなんて生ぬるい。苦しんで苦しんで苦しみぬき、死ぬなんてできないようにしてやる!!」


ドンッ!!(ドーーーーーン!!!!!)


「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ、」


地面に殴りつけた拳から衝撃は感じるが痛みを感じなかった。

でも確かに感触がある。


「あーー。これが夢か幻だったらよかったのに・・・・・・現実とかマジありえない」


血どころか赤くすらなっていない自分の手を裏返したりして、傷一つついていないことがわかると天を仰いだ。

青い空、白い雲、天高く照り付ける太陽。

こんな世界でも空は同じなんだ。


「眩しいな・・・」


太陽ではなく足元が。

座ったままの私の下から白い光が溢れ、やがてそれは私を周りから隠すように包み込んだ。


「今度は何だよ」


なんかもう、こんなんばっか。




ー - - - -




戦場の音と匂いが消えた。

そっと目を開ければ、戦場ではなくどこかの室内のようで、4人が私の前で平伏していた。


「今度は何?」


「誠心誠意の謝罪です」


「平伏が?」


「土下座です」


いや、どう見ても平伏にしか・・・。


「顔を上げてください。そしてどういうことか説明してください」


「「「「はい」」」」


平伏していた4人が顔を上げる。

美形だった。

超絶美形だった。

私を召喚したあの女も美人だったが、この人たちはそれを遥かに超えるほどの美形だった。


「あの、ここに座っているのも何なんであちらの席に・・・・・・」


「何かしようものなら」


「しません!!できません!!」


一気の顔を青くし、必死に顔を横に振る彼ら。


「分かりました」


以外とすぐ近くにあった席に移動し、勧められた椅子に座る。

細やかな装飾が施された椅子に座るのは気が引けたが、座らないと話が進まないからと我慢して座ったが、目の前のテーブルと食器類も高価すぎてなんだか怖い。


「どうぞ」


紅茶の入ったティーカップが置かれる。

湯気が立つ淹れたての紅茶は香りがしなかった。

それに、これを一口でも飲んでしまったら、二度と元の世界に帰れなくなってしまうのではないか。

じっと見つめていれば、毒が入っていると思われたらしく、毒は入っていないことを証明するためにポッドに入っている紅茶を別のティーカップに淹れて飲んで見せた。

紅茶には入っていなくても、ティーカップに毒を塗っていないという証明にはならない。


「あ、それともこの世界のものを一口でも口にしたら二度と元の世界に帰れないって思ってますか?それなら大丈夫です!この世界の物を口にしても元の世界へ帰れます。何一つ影響はありません」


「そう、ですか」


嘘はついてなさそうだ。

淹れたての紅茶を一口飲む。

味がしなかった。

こちらもどうぞと進められた一口サイズのお菓子(せんべい、飴玉、金平糖、クッキー、プチケーキ、ドライフルーツ等々)も食べたが、どれも匂いも味もしなかった。

異世界へ連れてこられた影響と考えておくべきか。

これ以上何も食べたくなくて、話を進めてもらう。


「まずは自己紹介を。私は導きと天界の女神クレアートル。クレアでいいわ。隣にいるのは私の夫の――――」


「夜と冥府の神プルトです」


「俺は正義と断罪の神ダムナーティオー。ダムって呼んでくれ。お金は大好きだけど賄賂とか渡されても断罪は公平に行うからよろしく!」


「ダムナーティオーの妻、真実と自然の女神ナトゥーラよ。ナーラと呼んで頂戴」


「花月桃華です。桃華と呼んで下さい」


超絶美形の人たちは神様だったか。

色々と文句は言いたいが、まずは説明を聞いてからだ。


「先ほども誠心誠意の謝罪をしましたが、もう一度言わせてください。この度は私どもの世界の事情に、無関係なあなた様を巻き込んでしまったことを、心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした」


そう言って、クレアを中心に4人は深く深く頭を下げた。


「悪いのは私を召喚したあの女ですが、それを止めることが出来なかったあなた方にも非はあります。しかし、私を戦場が助けて頂いたこと、言い訳もせず謝罪をしたその誠意は伝わりました。顔を上げてください。あなた方の謝罪を受け入れます」


「・・・・・・本当?」


「はい。ですので、さっさとどういうことか説明してください」


「そうね。そうだったわね。まず、あなたが召喚された理由は分かるかしら?」


「戦と争いごとをなくしてほしい、でしたか?」


「正解。ちなみに聞くけど、それを叶えてあげようとは思わない?」


「思いません(即答)」


「ですよね~」


「私にそんな力があると言われてもそんなものはありません。それをいきなり戦場のど真ん中へ捨てるか?あの小娘!次会ったらフルボッコにしてやる!・・・・・・こほん、失礼しました」


神様に向かって言葉が悪すぎたね。

けどあの女を思い出しただけで怒りと恨みと憎しみが沸き上がってくる。


「それがあるんだな~そんな力が。ナーラ」


「ええ。これを見て」


ナーラが横を指さすと、半透明のウィンドウが現れ、そこには隕石でも落ちたかのようなクレーターが映っていた。


「あのクレーター、隕石でも落ちたんですか?随分と大きな隕石ですね」


「いいえ、あなたよ。召喚されてすぐ戦場のど真ん中へ放り出されたでしょう?映っているのはその放り出された場所よ」


「私?え?私そんなに体重が重いんですか!?」


嘘だろ!?

確かにここ数年、自分でも不健康な生活を送っているって自覚しているけど、さすがにいきなり体重を1t以上になるほどはしていないぞ!

仕事がある日は、飯は1日に一回あるかないかくらいだし。

あってもサラダだけだったり、足してもおにぎり1個と野菜ジュースの組み合わせしか食べていないから、むしろ痩せてきているほうだと思うぞ。

痩せているといいな。


「違うわ。地面に八つ当たりしていたでしょう。これはその時のものよ」


「ファッ!?」


確かに八つ当たりというか、地面に拳を殴りつけていたけど。

え!?


「うわマジか」


「マジマジ」


思わず頭を抱える。

スキル的なチートじゃなくて物理的な力か。

・・・・・・・・・あっ?!


「もし憎きあの女に本気で一発ブチかましたらあの女死ぬの!?」


「死ぬ」


「なんてこったい」


これじゃあの女をボコボコにできないじゃないかチクショウ・・・・・・。

それどころか復讐できない可能性も・・・・・・。

そんなの嫌だ!!

あの女にはきっちり落とし前つけて苦しんでもらわないと気が済まない!!


「でも安心して!ここにいれば安全だし、あなたは元の世界へ帰れるから!」


「・・・・・・」(本当か?という疑いの眼差し)


「本当本当!この世界は滅ぶけど、あなたは元の世界で今まで通りの日常を送れるから!」


今なんか聞き捨てならない言葉が聞こえた。


「滅ぶんですか?」


「そういうルールなの」


クレア様によると、異世界人召喚はマジでヤバい危険な行為であり、神の間でも禁忌とされてきた。

異世界人召喚を行った世界はまた同じことを繰り返さないために、どのような理由があれど世界ごと消滅させるという共通のルールがあるらしい。

召喚された異世界人はすぐさま保護し、元の世界から迎えが来るまで神々の住まう神界で過ごしてもらうという。

神界は召喚者でも手出しできない最も安全で安心の場所だからだ。

そうして迎えが来て、無事に送り届けた後に、異世界召喚を行った世界を消滅させる。

そして禁忌を犯した者、つまり召喚者とその召喚に直接関わった者はそれ相応の罰と対価が支払われるまで、この時のために作られた専用の地獄みたいなところで、死ぬことも逃げることも狂うことも許されずに生きながらにして様々な責め苦を受け続けるという。

結構エグかった。


「もしこの禁忌に神が関わっていたら」


「いたら?」


「神としての力と地位を全て失い、同じ罰を受ける」


「神も人も平等なんですね」


神だからという理由で罪に問われないよりかはマシか。

しかし、この世界は滅ぶのか。

できれば、あの女を己の手でボコボコにしてから世界が滅ぶ瞬間をきっちりその目で焼き付けてやりたいんだが。

世界が跡形もなく滅べば、あの女の願い通り戦争や争いごとは起きないし。

あれ?これ使える?

あの女は私に「戦と争いごとをなくしてほしい」と言っただけで、何をどういう感じでとか具体的なことは一切言っていない。

言葉を当人の意図した意味通りに捉えるかは、此方側の受け取り方次第。

つまり、私があの女をボコボコにした後、あの女の願いが叶う(世界が滅ぶ)瞬間を見せればいいんじゃね?

あの女の願いは叶い、私は気が済むまで復讐できる。

winーwinだね!

まあ、あの女は禁忌の代償として地獄の責め苦が待ち受けているけど、それはそれ。仕方ない。

そうと決まれば迎えに来てくれた方に頼んでみないと。

聞き入れてくれるといいな。


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