お題『赤ずきん』
「ここが、おばあちゃんがいる小屋か」
赤ずきんは扉脇の表札を見た。おばあちゃん、と書いてある。間違いなさそうだ。彼女はゴクリとつばを飲み込んだ。
「トリックアオトリート!」
ドカンと扉を蹴り開けた赤ずきんがM-16を横なぎに連射する。
飛び散る花瓶、割れる窓ガラス、床を跳ねる薬莢。
だがベッドの上のおばあちゃんは違った。チタン製の大型シールドで身を隠し、赤ずきんの登場を待ちわびていたのだ。
「はっはぁ、おかしの代わりにこれをくれてやらぁ!」
おばあちゃんは手榴弾のピンを口で抜くと、ロブの要領で赤ずきんへと投擲した。
「ハン、甘いのはお菓子だけにしな!」
手榴弾がおばあちゃんの手を離れた直後、唸るM-16によって空中で爆破した。
「チィッ」
爆破した破片を避けるようにおばあちゃんがベッドから転げ落ちた。赤ずきんは弾切れのM-16をおばあちゃんに投げつけ、頭巾の中からククリナイフを取り出した。
身体を倒し、這うように床を蹴った。
「その命もらったぁ!!」
「そのへっぴり腰じゃ、ウサギも狩れやしない」
おばあちゃんは転がる背中で床から跳ね起き、右手で逆立ち状態になる。そのままバレリーナのように開脚、捻りを加え風車のように回転した。
「いって!」
手首を蹴られククリナイフを落とした赤ずきんの後頭部に、おばあちゃんの踵が迫る。
バキ!
赤ずきんの頭が床にめり込み、ピクリともしなくなった。
「まったく、いたずらするならもっと腕を上げな!」
ハロウィンという祭りは、いつしかお菓子と命の取り合いになっていたのだった。
めでたしめでたし。