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お題『死んだ恋人を思って』
男は荒れ地に来ていた。灰色の空を見上げ舌打ちをする。
墓石代わりに地面に突き刺した剣の前に座り、ドンとワインボトルを置いた。
男は錆びで赤茶けた剣に手を置き、笑う。次いで、グイとワインをあおった。
快活に笑う男の頬に雨粒が当たる。男は黒に変わった空を見上げた。
錆びた剣に雨粒が当たる。柄からぽとりと赤い滴が落ちた。
男が立ち上がると、雨脚が増した。フードをかぶり、強い意志を孕んだ瞳で、剣を見据えた。
「じゃ、行くぜ」
男が去った場所には、錆びた剣から溶けだした赤い水たまりができていた。