表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/23

『音の世界』

 世界は音であふれてる。

 カチャカチャ、トントン、グツグツ、コツコツ。

 僕はそれらに耳を澄ませる。


 何の音なのかは、僕にはわからない。

 硬い音、熱そうな音、柔らかい音。

 目の見えない僕は音の中で生きている。


「お待ちどうさま」


 ふわっとかかる優しい声。僕の好きな音だ。


「ありがとうございます」


 コトリと音がして、漂うのは、暖かな、どことなくすっぱそうな薫り。


「うーん、豆、いつもと違います?」


 僕の鼻には違和感。いつもの珈琲と、ちょっと違う。


「今日はねー、キリマンジャロを、すこーしだけ混ぜてみました!」

「あぁ、だからすっぱそうな匂いがしたんですね」

「あら、さすがね」


 ちょっとびっくりした声色。暖かな手で頭を撫でられた。珈琲を飲んでないのに胸が熱くなる。


 彼女がどんな顔なのか、僕は知らない。

 歳だって、知らない。

 独りなのか、それとも……


 この喫茶店のとても安らぐ雰囲気だけは、肌で感じ取ってる。

 目の見えない僕を、拒否しない。


 世間は普通を尊び、異端を排除する。

 目の見えない僕は、普通にはなれなかった。

 道を歩いていても、たとえ白杖も使っていようとも、配慮された覚えはない。


 世間の冷たさを思い知ってもう二十数年。これでもちゃーんと働いている。

 盲目でもできる仕事。それは、耳を使う仕事。

 僕はこれでもミュージシャンだ。

 奏でるのは楽器じゃなくって、パソコンだけどね。


「あ、そうそう、次の曲ってできたの?」


 猫みたいに、弾む声。

 僕の横の席で、しゅるっと布がこすれる音がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ