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儚い雪に埋もれる想い  作者: 雪莉月花
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序章



電柱の儚い光で、より一層輝いて瞳に吸い込まれる。



そんな雪に包まれているこの場所は、冷たく変わってしまっていて、元の景色が分からずにいる。 


それが乾ききった古傷に、踏みにじるかのようにじわりと沁みる。




もういい加減癒えても良いぐらい、年月は過ぎたはずだ。






 だが、だめなのだ。


 この見覚えのある景色を、眼中に入れただけで、体の中の臓器が悲鳴を上げて血を流している。



分かりやすく言えば、発作からの吐血という事だ。医師が言うには、過度のストレスが原因とのこと。


いったい、そのストレスは何処からくるのだろうか。 




その理由を問われれば、簡潔にこう答えるだろう。


「四年前に抱き続けた感情が、一瞬で舞い戻ってくる」と。 



いつまでも、昔の事を引きずっていても仕方がないことなど知っている。



それこそ痛いほどに、知り尽くしている。



だけど、今は亡き彼女が、どうしよもなく好きすぎて。


何気ないあの毎日が、とてつもなく懐かしく、愛おしくて。




そんな恋に溢れた甘い感情で、色付いていくのだ。





その衝動で、全身が内側から燃えるように温かくなっていく錯覚に陥る。


すぐにでも、この分厚い上着を脱ぎ捨てたいところだ。


しかし、あくまでそれは錯覚。




堕ち続ける一方で、心の根元は悴むばかり。


いくら体を温めたって、その冷え切った芯を溶かすことすらできやしない。




否。




そのやり方を、忘れてしまったと片付けてしまったほうが答えに近いのかもしれない。








しかし、そんなことを今は忘れてこの銀世界に、四年前と変わらずの景色に、私事ではあるが重ねたかったのだ。



そんな、今も断ち切れずにいる思い出をどうやら三年後に一つの物語として、語るときがきたらしい。


まぁ、語ったところでこの問題はどうこうできないことは痛感している。




 だが、心の片隅に、いつかきっと彼女が私のところに帰ってくるという生易しい妄想が、頭の片隅から離れられない。

 



一度、死を体験してしまった人が生を取り戻せるわけがないのに。 



 だけど、もしそれが現実になったら。




 私は、どんなに嬉しい事だろう。




そんな幻が叶ったときにはは、彼女を思いっきり抱きしめて甘い口づけを交わしたい。





 だが、どちらにせよ彼女が帰ってくる頃には、自身がガラスのように、粉々に潰してしまった記憶の破片を集めないといけない。




そう、私は四年前の記憶が所々欠けているのだ。



そして都合よく、その破片がくっつけられている。



 そんな、どうしよもなく自己中心的な私の我儘をこの場を借りて、少々いたたまれないが、聞いてくれないだろうか。

 





私はもう一度、白の色を目に焼き付け、少々ゆったりとした口調で、誰もいないこの景色に語り掛けた。










「……」

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