17_検証と索敵
よろしくお願いいたします。
やっぱり現実逃避として書いてた方が捗る気がしてきます…。
城壁から離れてわかる限りだが街の中央付近まで移動した。ロウタは既にレイから降ろされ、歩いて移動している。
「ロウ、少し待ってて。検証したいことがあるの」
「いいけど、何をするの?」
レイはロウタを待たせて手のひらに灰色の球を空中に出現させる。無属性魔法の球だ。それを自在に動かすことを確認すると今度は頭上に飛ばした。
「大体20メートル程ね…。私自身じゃなくても使える、と」
レイはそう独り言を言い、今度は無属性魔法の球を正方形のシールドにした。
「ロウ、次はあんたがジャンプして。身体強化は掛けていない状態で」
(・・・?)
なぜそんなことをするのか理解できていないが言われたようにジャンプしてみる。レイは正方形のシールドを見たまま動かない。
「うん、大丈夫なようね。私が背負うから、ロウはシールドの螺旋階段を作って。高い位置から別方向から攻めてくるかを見張るわよ」
「わかった。任せといて!」
再度レイはロウタを背負い、ロウタはシールドで螺旋階段を出現させる。高さはとりあえず50メートルまで作る。本来は魔術師がシールドを大きく作るにもかなり魔力が必要となるが、魔力が「----」と無限に使えるロウタだからこそできる使い方である。レイは最上段まで一段ずつ登っていく。
「ロウ、足場を作って。螺旋階段は消していいから」
「はいよー」
今度は足場として5×5メートルを作り、螺旋階段は消失させた。ロウタはレイから降りて足元の街並みを見渡す。
「うーん、軽く見渡せる程度だね。レイはここからでも前線は見えるの?」
「普通に見えるわ。ほんと余裕があるわね、あの人たちは。こっちをちらちら見ているわよ」
城壁からでもあまり見えなかったのに離れたうえで高い位置にいる場所でも見えるレイは相当視力が高いらしい。ロウタは普通に羨ましいと思った。逆にここから別方向から攻めてくるかもしれない別動隊が見えるのはレイだけ。
「それにしてもさぁ。本当に別動隊のゴブリンがくるかな?城壁での話ってまだ憶測と最悪の想定程度だし、もし来なかったら僕たち罰則されるんじゃない?」
50メートルで警戒をして数分後、ロウタが座ってそう愚痴る。来なかったら良いがそうなるとレイとロウタは何かしらの罰則が発生するだろう。指示を無視して勝手に行動をしているためこれも最悪、冒険者ギルドから追放されることもありえる。そうなれば日々の暮らしさえもまともにできない状態となる。
「本来ならそうなるのだけど、その可能性は無くなったわ」
「ん、どういう…、本当にきたの?別動隊が」
ロウタは首をかしげてそう聞き返す。レイはにやりと笑ってこう答えた。
「来たわよ、やっぱり現実って非情ね。前線よりもこっちが強そう…、さて行くわよ。背中に乗りなさい」
レイはロウタを背負って別動隊がやってくる方角へ飛んでいく。タイミングよくシールドで足場を作りながら飛んで移動していった。
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前線では大量のゴブリン達を倒し続けるギルドマスターと実力者と名高いA、Bランクの冒険者たち、そして騎士が奮闘して戦っていた。冒険者たちは普段組んでいるパーティで倒していく。人数は一パーティ5~7人と人数に差がある。対して騎士たちは一パーティ6人と組んでおり、複数の集団を均等に分かれていると言ったほうが正確かもしれない。
「それにしても、ゴブリンども相当多いじゃねえか!俺たちだけで倒しつくせるのかよ!?」
大きい声で愚痴を言ったのはAランク冒険者のキーラ。大剣を獲物として一振りで2、3体のゴブリンを倒していく。それでも見渡す限りほぼ、ゴブリンしか見えない。
「大声上げるぐらいなら少しでも倒せ!ここをやられたらゴブリンどもに埋め尽くされるんだぞ!」
仲間の一人も大声で返答する。前線が瓦解してしまうと城壁にゴブリンが埋め尽くされてしまい、街に雪崩れ込むのは時間の問題となる。たとえ魔術師が控えていて、広範囲魔法で倒し続けたとしても一人一人の使える魔力は有限。防衛しきれるかまではわからない。ならば前線ができることはここで踏ん張って少しでもゴブリンを倒すことだ。
前線で出現しているゴブリンは通常のゴブリンに併せて、ゴブリンナイト、ゴブリンウィスプ、ボブゴブリンの三種類しか出現していない。ボブゴブリンは通常のゴブリン、ゴブリンナイト、ゴブリンウィスプの上位種にあたり、筋力や知能が上がっている。ただし上位種でも人間の知能より劣ってしまうが、大人以上の筋力を持ち下位の魔物なら集団をまとめることがあるため、脅威度は高い魔物でもある。それでも高ランクの冒険者には簡単に倒せる程度の魔物でしかないが。
「お前ら、余力は残しておけ!後から強いやつが出てくることも覚えとけよ!」
冒険者ギルドマスターのミズルガはそう叫ぶ。ガントレットを装備しておりゴブリンを複数体、吹き飛ばしていく。それでも無限に湧いてくるかのようにやってくる。ふと、冒険者が一人、街の方に視線を向けると青色に光る何かが見えた。
「おい、なんだあれ!お会い光が空から降りてねぇか!?」
「こっちは手一杯なのに街にも異変があるのか!?もう対処しきれないぞ!」
無論、その青色に光る何かとはロウタが作ったシールドの螺旋階段である。ロウタからは前線が見えなかったが逆に前線からだと目立っていた。ただし螺旋階段までは見えておらず、青色に光る何かとしか見えていない。
「仕方ない!街の方はあいつらだけで対処してもらうしかない!最悪ここのやつらを一部、街に戻るぞ!」
ミズルガはそう叫んだ。ゴブリンたちの進軍はまだまだ続いていく。




