14_待機と会議
すいません。時間が空いた上に内容が全くないです。
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
僕ともう一人の女の子、フォレムを互いに見つめ合う。
(なんだろ、すごい睨まれている…。第一印象が悪いことは自覚してるけどここまで嫌われてるのか…)
ロウタは普通に見つめているつもりだが、目が死んでいるため感情が読み取れず、フォレムは警戒して訝し気に見つめていた。
「会議だろうから時間が掛かるはずだし、とりあえず座ろう?」
僕は壁に凭れ掛かり床に座る。ずっと立っていると疲れるしそのまま参加するんならここで体力を使うぐらいなら座った方が楽だ。…距離を縮めると言うか、少しでも印象良くしたいし。
「…ふん」
フォレムは鼻を鳴らして運よく空いている椅子に座りドヤ顔を決めた。『椅子は空いているのに床に座るんだ?』そんな声が聞こえそうな気がした。一緒に待つことは嫌だということは分かった。
「…はぁ。どうしてようかな」
そんなフォレムから視線を外し、一つ溜息を吐いて待っている間はどうするかを考える。
(ここで魔法の練習だと見咎められそうだし、ゴブリン大量発生のことでも考えようかな…)
ひとまず、ゴブリンの大量発生について考えることにした。
天井を見つめる感じで頭を上に上げて、ぼーっとしながら考える。
昨日、一昨日で見たゴブリン。身体は道利色の皮膚をしていて、僕と同じぐらいの身長で棍棒を持っている。一チームで3~4人ぐらいで作っていた。他の情報だと気性が荒く好戦的、ゴブリンには上位種が存在するらしい。まだ情報が少ないだろうし、有識者というか一番長生きしている人に聞くことにしよう。
(ってことでペイリルさん、ゴブリンについて教えて!)
『なんとなくですが、こっちに聞いてくると思いましたよ…』
呆れたような声をするペイリルさん。
(だって今聞ける人は誰もいないし、ペイリルさんの方が詳しそうだから。…創造神だし)
両腕が無い状態だと書類もまともに扱えず、そもそも資料室が出入り禁止となっている可能性もある。そうなれば魔物について詳しい人に原因が何なのか聞く必要がある。
『先ほどの情報は確かに合ってますけど、いくつか抜けている情報があります』
(レイが言ってた上位種がいることだよね。その上位種もどれぐらいの種類がいるの?)
『えぇ、上位種は存在しますよ。ボブゴブリンからゴブリンナイト、ウィスプも存在するはずです』
(ウィスプって?ゴブリンナイトならなんとなく分かるけど)
大体は名前で想像しやすい名前だがゴブリンウィスプだけが分かりにくい。魔法を使うゴブリンっぽいけどどうなんだろう?
『魔法を使うゴブリンの認識で合っています。基本的に初級魔法を使うはずですが、今はどうなっているのか分かりませんね…』
(そうだねー。かなりの時間あそこにいたらしいからねー)
何百年もペイリルダンジョンにいたらしいから、外の魔物が知らないうちに進化してた!ってこともあるだろうし。いや絶対ある。
(ま、恐らくゴブリン大量発生は上位種が存在していて、そいつがなんかやっていることで良いんだね)
『大雑把な推論ですね…。どんなゴブリンが存在しているのか考えないのですか?』
(んー…、あまり短時間で結論を出すのって苦手なんだよね。最上位種が存在していることを前提ってことで。最上位種じゃなければそれはそれで良かったって思えばいいかな)
朗太自身もそこまで物事を推理出来るような賢い頭は持っていない。それよりも長い時間を掛けて物事を考えることが多いため推理が苦手だったりする。
『考えはそれで良いのでしたら、次は広範囲魔法を考えてはどうでしょうか?』
(広範囲魔法?あー、確かにそういう魔法も使えないなぁ。どうやって創ろうか…)
一体を対象にした攻撃魔法(ただしシールドの形状変形)しか使っていないため大量の敵に対しての広範囲魔法は考えていなかった。この場合は広範囲魔法と言うよりも殲滅魔法が妥当だろう。
(んーっと、今はシールドと水属性魔法しか使えないって設定だからこの二つで広範囲魔法を作らないといけなんだけど、水属性魔法でそんなことって出来るかな?)
火属性魔法なら爆発、風属性なら竜巻を起こすことなら想像しやすいが水属性魔法はあまり攻撃的な魔法が想像しにくい。あえて言えば津波を起こすぐらいだが相当量の魔力を使うことになる。地面の上から津波が発生と考えるのもどこか引っかかる。先入観が邪魔しているのだろうと当たりを付ける。唸りながら水属性魔法での広範囲魔法を考えるが出来ないと諦める。
(水属性魔法での広範囲魔法はあまり出来ない気がするし、シールドの槍でいいかなぁ)
それからレイが来るまでの間、ペイリルと一緒に広範囲魔法の相談をし続けた。
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私とレープルは各パーティの冒険者たちが進む方向に沿ってロビーへ戻っていた。ここの支部長らしい筋肉ムキムキなやつと職員からゴブリン掃討依頼の内容を聞いた。大雑把に言うと参加する冒険者パーティと一同でゴブリンをを伝えられた。大体は狩りや経験を積んだ高ランクの冒険者たちが前線に配置され低ランクや遠距離攻撃、魔術師たちは後ろで広範囲魔法で攻撃や支援を行うことになった。依頼と言ってるけど内容はどうも掃討作戦に思える大規模なもの。その作戦の間に何をするか、ロウタと相談しないといけない。
「…相当ゴブリンが増えていたらしいですね」
「大丈夫よ。大体は前線で倒されるだろうし、たとえ討ち漏らしが来ても他のやつらが倒すわよ」
戻っている途中にレープルからそんなことを話しかけられた。報酬が増えるかもしれないと考えるだろうし、血気盛んに飛び出すだろうと考えてレイはそう答える。
(本当は期待しない方がいいんだけど)
自分の身を守るのは自分だけ。たとえパーティを組んだとしても連携を崩されたり格上の敵に相対すればどうしようもない。だからレイの掛けた言葉はどうでもいい言葉だと考えた上でそう言った。
「…なにこれ」
「どうして集まってるのでしょうか?」
レイとレープルがロビーに着いた時、壁際に人だかりが出来ていた。正確に言うとロウタが待っているであろう所である。
(まさかあいつ、なんかやらかしたの?)
見物人は静かだがその奥では怒声が聞こえていて、誰かに対して苛立っているらしい。会議に参加していた人も戻っていてメンバーを探すついでに何があったのか聞き回ってるやつもいる。レーブルは相方のフォレムへ戻るよう言い、一番近い人に肘で軽く小突いて気付かせて何があったか小声で聞いてみる。
「ねぇ、なんかあったの?」
「ん?ん、そ、そうだな、なんか子供がいるらしくてよ。他のやつがそいつに話しかけたが無視されて、それで怒っているらしい…。どうなっているかは分からないが」
「そう、ありがとう」
心の中で舌打ちをする。やっぱあいつがなんかしたかとあたりを付ける。一度集離れて横に割り込んでいく。そこには床へ事切れたように座るロウタと目の前で男が仁王立ちで立っている。
「私の連れがなんかしたのかしら?」
「あぁ?てめぇがこいつの連れか?なに言っても反応しないけどもしかして死んでんのか?」
そう言って周りはゲラゲラと笑い出す。眉をひそめてしゃがみ、ロウタの顎を持って顔を上に向ける。眼は死んでいるのは変わりないが焦点が合っていないことと口が半開きになっている。
「…っチ。こいつ意識を飛ばしてるわね」
「おいおい、ガキをここに置くような場所じゃないだろ。ちゃんとお家に預けなきゃ~」
奴らはニヤニヤ嗤ってそう言う。言葉を無視してレイはロウタの顔を下ろし、身体の中心を指でなぞり脊椎がどの位置にあるかを確認する。そしてレイは握りこぶしで頭を攻撃、いわゆる拳骨を落とした。コツは脊椎の真上に拳骨を落とし、内部に衝撃を浸透させること。音はゴチっと地味な音が、周りに立っていた冒険者たちも伝わるほどの衝撃が走る。
「・・・・・・・んん、ん~~~~~~!!」
ロウタは徐々に覚醒していき、よく分からない痛覚が頭から首、背骨まで到達していく。耐えきれず頭を腕で抑えて床にうつ伏せになり悶えた。
「なに考えていたかは知らないけど、会議は終わったわよ。さっさと立て」
「ん~~…、広範囲魔法のことを考えてたんだよ…」
少し時間が経って慣れてきたのか返答した。広範囲魔法でなんで意識を飛ばしているのか。
「こいつは死んでないし、金を稼ぐ必要があるからいるのよ。必要な事も聞いたからもう行くわ」
レイがロウタは連れて行こうとしたとき、絡んできた冒険者がまた煽ってきた。
「ハっ!こんなガキがゴブリンも倒せるのかよ」
「おい、やめとけ。あのガキから魔力が漏れてるように感じる。無駄に煽るな」
仲間と思われる冒険者が止めに入る。鎧ではなくローブを着込んでいるのを見ると魔術師らしい。
「ところでレイ、なんでこんなに人集まってるの?」
「あんたのせいでもあるのよ。とりあえず離れるわよ」
人が集まって来ていることを今更気付きて質問してきた。適当に答えて冒険者ギルドから後にした。目的先はさっきまで止まっていた宿だ。屋根がある所で相談した方が楽だもの。




