13_緊急収集?
宿屋に出て僕たちは冒険者ギルドに向かう。道中、広げていた屋台は閉められていてほとんどの住人は僕らの進行方向の逆、街の内側に向かっていた。子供と手を繋いで避難する親子、ゆっくりだが確実に進んでいる老人など、戦闘とは縁のない人たちが避難していた。
「思っていたより手荷物が無いんだね」
大きい布に保存食やら道具やらをまとめて備えるイメージだったけど。
「私たちが住んでいた所ではそれが出来たけど、ここでは出来ないのよ。道具をまとめるための知識と技術が無いし、重要視してないんじゃないかしら」
ふーん、そう考えれば物を多く運べるカバンの普及ってすごいのか。ほんと今更な発見だけれど。
冒険者ギルドの中は大騒ぎになっていた。カウンター奥の職員は忙しく動き、ベテランらしい冒険者たちは広場に集まっていた。もしかしたら情報を聞ける人に対して殺到しているのかも。
「かなり集まってるね。こんなに多いと情報が錯綜してるかも…」
「あ!レイさん!」
遠くからレイを求める声が聞こえた。そこには足早と女の子が二人、こっちに来た。
「一昨日ぶりです!」
なんか青色のコートを着込んだ人と茶色のコートを着込んだ人がやってきてレイに話しかけた。…こっちで知り合いなんていたっけ?そんな思いとは裏腹に話は続いていく。
「外は鐘が鳴り響くし、ここはかなり人が溜まっているんだけど、何があったの?」
レイは平然と聞いてくる。あれ、知らないうちに顔見知りになってたのかな?ただ単に僕が覚えていないだけ?
「街の外にいるゴブリンが大量発生したとギルドが通達したんです。どうするのかはまだ決まっていないというか、聞いてないのですけど…」
「大量発生した、ねぇ。どれだけ集まってるかまでわかる?」
「いえ、そこまでは分からないです。すいません…」
青いコートの女の子は申し訳なくそう言った。
「別に良いわよ。でも大量発生ねぇ。ロウならどう考える?」
「ん?何が?」
慌てて動いている職員を眺めて意識が逸れた矢先にレイが聞いてきた。大量発生?ゴブリンがうじゃうじゃいるでいいの?
「うじゃうじゃいる、じゃないわよ。ゴブリンの特徴はなんだった?」
「うーん、子供ぐらいの身長、人型、武器を使う。他には群れを作るとか?」
ぱっと思いつくものだとこれぐらいかな。ほかに何かあったかな。
「上位種が存在することもあるわ。本で読んだんだから覚えなさいよね」
レイが呆れてそう言う。そうだったけ?そこまで細かく覚えてないや。でも上位種ねぇ…、強い個体がいても不思議じゃないだろうけど。
「ゴブリンの上位種っていうと何がいるんだっけ?ボブゴブリンとか、それから…」
「この街にいる冒険者は全員いるかー!?」
そう言いかけた時、受付側から大声が飛んできた。カウンターの上で大柄の男が乗り、待機している冒険者たちに大声でこう言った。
「街周辺のゴブリンどもが多くなった!今から緊急で掃討依頼を行う!参加する奴らは今から依頼内容を会議室で聞いてもらう!内容は各パーティの代表者に聞いてもらうから一緒にこい!」
一方的にそう言った後カウンターから降りて奥に移動した。パーティの代表者らしい人達が一斉に動き出した。皆は参加するようだ。
「参加、するべきだよねぇ。誰が行く?僕だと参加すんな!って言われそうだけど」
容姿で判断してはいけないってあるけど、僕の姿はどう見ても子供で見た目が女の子。それに使える魔法もシールドって言ってしまえば参加拒否もあり得る。そうなれば街の中で稼ぐあてもないから数日間は食べられないかもしれない。
「ハァ…。分かったわよ、私が行くわ。レーブル達は参加するの?」
「参加したいんですけど、Dランクだと参加できるんでしょうか…?」
レイがレーブルと言われた女の子はそう答える。…思えば街まで案内してた子の名前がレーブルだったね。もう一人いるけどその子も忘れてしまったなぁ。
「とりあえずレーブル達も参加するなら、一緒に行くわよ。まとまった方が一緒に聞けて確認もしやすいから」
「は、はい!頑張ってお供します!」
ここでお供するって言葉あるんだ…?とりあえず僕はどうしておこうかな。
「あんたはここで待っといて。ただ、問題起こしたら分かるわよね?」
とレイはこう続ける。大丈夫だよ、あまり問題は起こしたくないのは考えているから。
「ここで待っとくよ。外歩いても良いこと無いだろうしさ」
歩き回っても疲れるしお金も全くないから食べ歩くことも出来ないしなぁ。
「そもそも緊急事態で露店開いてるのは戦闘に関係する店ぐらいよ。ここ周辺は食べ物しか出てなかったみたいだし避難してるんじゃないかしら。私たちは行くわよ」
レイとレーブルは奥へ行った。つまり僕とフォレムは二人で待機することになる。
今日はここまで!
…すいません、調子のりました。
お読みいただきありがとうございました。




