11_道具屋での出来事②
女の子が腕を真上に上げて裾をずらした。そこにはあるべきはずの腕が無かった。血の匂いがキツイのはどうもまだ傷口が塞がっていないからだろうが…。とりあえず傷口を診ることにしよう。
「ふうむ、どれ」
儂は立ち上がり女の子に近づき、両腕の患部に触らないよう肘を持って診る。止血はしているようだが骨と肉が剥き出しの状態。
「腕は戻らないんだろうけど治療できる?やっぱり難しいかな…?」
女の子がそう言ってくるが、この傷どころか腕が無くなるなんて大人でも立ち直れないほどのショックを経験するんじゃがのぅ。ここまでひどいとは思わんかった。
「治療は出来るがのぅ、皮を覆う程度までしか出来ぬ。腕までは元に戻らぬがそれでも良いか?」
「それでもいいよ。と言うよりも治療できることがありがたいよ!」
「ならそうするが…」
調子も声も明るいこの子は強いのぅ、ただ眼が死んでいるようじゃが…。そこは言わんほうが良いじゃろう。魔力を傷口に纏わせて目を瞑り回復魔法を唱える。
「我、其方の傷を癒さん」
翠色に淡く光り、じりじりと皮膚が覆っていく。傷口に集中させるよう魔力を操作し続けること数分。纏わせた魔力が尽きて光が消えた頃には傷口は癒えた。道具屋を開店して以来、ここまで魔力を使ったのは初めてじゃのう。
「お、ちゃんと治ってる!ありがと!」
「良いんじゃよ。ただ腕まで再生できないのは申し訳ないがのぅ」
それが出来たら本当の意味で治療出来た、と言えるんじゃろうが。
「いいのよ、この能天気な奴が言うんだから。それより本当にお金払わなくていいの?普通は請求するんじゃないかしら」
この娘はかなり警戒しているようじゃ。確かにそう考えるのがふつうじゃ。
「老いぼれにお金がいっぱい持ってもよく使わん。ここでずっとのんびりしていた方がまだ良いからのぅ」
まぁ信じなさそうではあるがね。
「払わなくてもいいんなら良いけどね、こっちは助かったわ」
「ほんとにありがとね!なんか必要になったらここ来るよ!」
この子らの返答で頬がほころぶ。久しぶりの会話だからか。
「またここへ来ておくれ」
二人は店から出ていった。たった数十分だが楽しかったのう。それにしても、
「あの子から魔力が漏れ出ているのはなぜじゃ…」
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僕らはお店から出てきた。街中に道具屋を探していたけど人も多くレイはあまり探してくれなさそうだったから、僕が一軒ずつ探して見つけたのがこの道具屋。周りの建物よりも寂れているように感じるけどフラスコが描かれている看板はあったから入ってみたけどポーションは手に入るし腕の治療もしてくれた。
「お金は要らないっていうけど、借りは出来ちゃったね。どうやって返そうか」
「あの人の要望に応えればいいのよ。出来ることがあればだけどね」
借りねぇ、どんな形で返せれば良いのだろう。
「ひとまずだけど、ポーションと腕の治療は出来たんだからそれでいいでしょ。どうやって借りを返すかは後からでもいいわ」
すぐに借りを返そうとしても迷惑になっては本末転倒なんだし、とレイはそう付け加える。今はお金を貯めて色々買う方がいいのかな。お金要らないって言ってたけど。
カフェテリアもないだろうしお金もないし、僕らは宿に戻ることにした。




