【閑話】31_大聖信弘の起床と騎士団長の報告
よろしくお願いします。
閑話ですが長いです。(初の5000字越え…)
お暇な時間にどうぞ。
「う…、うぅ・・・・・」
何処だここは…。頭がグワングワンとする…。
駄目だ、目が開けそうにない…。
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「ん、んんんーーーーーん…」
上半身を起こし両腕を大きく上げて伸びをする。
なんか久しぶりに深く眠ったなぁ、疲れが一気に抜けたみたいだ。
「・・・・ここは何処だ?」
白いベッドで眠っていたようだが、借りている自室ではこんなベッドじゃない。もっと大きいサイズのベッドのはずだ。それに場所も見たことのない部屋だ。周りには同じ白いベッドが5個も備え付けてあり、木製の棚には何かの瓶が大量に置いてあり、棚自体も所狭しと設置している。
パッと見、医務室か病院みたいな場所に思える。
ガチャ。と扉を開く音が聞こえ、そちらに顔を向けると扉の前に友香がいてこっちを見ていた。
「ん?・・・・あ、おはよう」
「・・・・・。ちょっ、ちょっと!誰か!ノブ君が起きた!!」
バタバタといきなり走りだし、どこかに飛んでって行った。
何だあいつ。挨拶もしないでどこかに行くとか失礼だな。
「でも、なんでここで寝てんのかな?変な事でもやったか?」
酒なんて飲んでないし、友香もいるから誘拐ではなさそうだし。昨日は何をしてたっけ。うーん…。
「・・・・、あのゴリラに殴り飛ばされたっけ」
ダンジョンに潜って5層には少し強い魔物が出てくるから実力試しに丁度いいと言われていて、背中に切りつけてもダメージが無いんだった。それで効いていないことに驚いている間に殴り飛ばされて…。
「俺は気絶したのか…」
何て情けない…。
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そのあとは友香と担任である加奈子先生、医者と思われる人、そしてこの国の王子であるセキアがやってきて、体調はどうか?とか問診や鑑定を掛けられ、問題ないと告げられた。その時は友香は声を出して涙を流しながら抱きしめられ、加奈子先生とセキアは「よかった…、よかった」と呟いては涙をハンカチで拭いていた。
友香が落ち着き、気絶した後のことは明日にすることになった。何がどうなっているのか全く分からないけど、異常なことが起きていたらしい。言われた通り明日まで分かっていることを頭の中で整理しておいた。
――――――――――――――――――――
食堂で朝食を友香とセキアの三人で取りながら気絶した後のことを聞いた。
あのゴリラが俺を殴り飛ばした後、ガントさんを攻撃していたこと。途中、古戸が横からしゃしゃり出てきてゴリラを攻撃して倒したこと。
「あいつ、途中から攻撃してきた挙句に手柄を横取りしたのか」
「ガントさんでも防戦一方だったのよ。打開してくれたのは良いことよ」
「でも納得いかないよ!だってガントさんが一番頑張ったんだろう!?ならガントさんに譲るべきじゃないのか!?」
どうせガントさんが弱らせたところを古戸が攻撃して横取りしたに決まってる!
「ま、まぁ落ち着いて。ノブヒロ様が無事に起きただけでもよかったじゃないですか。もしかしたら目が覚めなかったのですし…」
「・・・・・・・」
言葉に詰まるけど、戦闘に再戦できなかった俺が情けない…。まるで俺が子供みたいじゃないか…。
「話を進めるよ?そのあと、古戸がゴリラを倒したんだけど、それよりもヤバいやつが出てきて…」
「ヤバいやつ?」
ゴリラよりも強い魔物が出たのか!?
「それが、半透明の人が出てきたの。背中に大きい羽が六枚も付いていて、神様みたいだった」
「神様?なんだそれ」
ゴリラの後に神様とか。話が飛びすぎだろ。
「本当なのよ!ガントさんが言うには、ペイリルダンジョンには勇者が挑戦すると一度だけ封印された魔神ペイリルが出てくるって伝説があるのよ!」
「そうなのですか?てっきり御伽噺だと思ってたんだけど」
セキアがそう相槌を打つ。ふーん、御伽噺ねぇ。
「どんな話なんだ?それは」
「あぁ、聞いたことありませんか。ペイリルダンジョンでは勇者様が挑むと魔神ペイリルが現れて、『私を倒してください』と譫言を言う話です。ただ勇者様がどんなに攻撃しても倒せないという御伽噺です」
そんな御伽噺程度なら普通は信じないだろ。
「嘘ならもう少しまともなのを言ってくれよ」
「本当なの!クラスメイトもガントさんも見てるんだから!」
はぁ…、まぁ皆が同じことを見てるんなら本当かもな。
「でも何かあったのか?魔神なら俺たち全員を倒すはずじゃないのか?」
こっちは勇者なんだし倒さないと後から面倒になるだろ、普通。
「それが、なんか自分を殺してみたいなことをブツブツ言ってたのよ。御伽噺みたいに『私を倒して』って感じに…」
雰囲気から嘘じゃなさそうだけどなぁ。
「それに、古戸も死んじゃったし…」
は?古戸が死んだ?
「それってどいうことだ?あいつが死んだって?」
「そうよ。皆は魔神ペイリルのせいか、空気がすごく重くて誰も動けなくなったんだけど、古戸だけはその時に動いたのよ」
「あいつだけ動いていた…。それでどうなった?」
喉が渇いてきた。コップを持ち上げて水をぐびぐび飲む。
「・・・・・。なんか分からないけど、飛び上がって魔神ペイリルに真正面から攻撃したのよ」
「グッ、ゲッホォ!!ゴホッ!」
盛大に咽た。マジか!あいつ魔神に真正面で攻撃したのか!?しかも飛び上がって!?馬鹿じゃないのか!
「キャッ!汚いわね!」
「ゲホッ!ゲホッ!…す、すまん」
俺は咽ながらハンカチで机を拭く。まさか古戸の話で咽ることがあるとは…。
「はぁ、続きだけど、古戸は魔神ペイリルになんかビームを打たれて身体ごと消滅したの。文字通りにね…。魔神ペイリルもなぜかは知らないけど消えたし」
「・・・・・正直、残念です。無属性しか使えないって聞いていましたが、他の属性も使えるとは思ってなかったのですから」
友香とセキアはしんみりとした声でそう言った。
「・・・・古戸は死んだのか」
「そうね…。少なくともここにはいないわ」
まさかあいつが死ぬなんて…。学校の成績はいつもトップクラスだったのに。
「とりあえず、古戸は死んで皆は無事帰ってこれたのか…」
「そういうことよ。ノブ君は二日も起きないし、どうすればいいのか分からなくて…」
「二日も…」
俺はそんなに眠っていたのか?思えばあの筋肉だるまみたいなゴリラに真正面から殴り飛ばされて、生きていることが奇跡に近いのか…。普通なら重症なのに生きている今が不思議なぐらい…。
思えば友香の泣き顔を見るのは久しぶりだな…、最後に見たのは幼い頃か。
知り合いとはいえ、女の子を泣かせてはいけない。原因は俺の力不足だ。あのゴリラを背中に攻撃して、一撃で倒せれば早かったのに、出来なかったからこうなっているんだ。
右腕が自然と強く握りしめる。
「こうなったのも力不足の俺が駄目だった…。もっと強くなって魔物や魔族からも大切なものを守れるようにしてやる!」
俺は誓う。高井友香を泣かせないために、守るために!もっともっと強くなる!そして、魔王も魔神も倒して見せる!
・・・・・・・・・・・・・・
時は勇者達と騎士団がペイリルダンジョンに帰還し、数時間後のこと。
ガントさんはある一室の前にいた。
(大丈夫なのか…。最悪な事態は避けられたが犠牲も生まれた…)
ペイリルダンジョンの出来事は全て頭に焼き付いているし、報告もすぐ出来るよう整理してある。ただ、騎士団長としてあの対処しか出来なかったことに不甲斐なさを感じていた。
やはりあの人に報告するのは緊張する。年もかなり下に離れているのにだ。
(すぅぅぅ…、ふぅ…。よし、まずは報告からだ)
緊張を解すように深呼吸し、気合を入れる。
目の前にある、豪華な扉をノックし、立場と名前を言う。
「オートブ第一騎士団長、エダンカ・ガント!帰還しました!」
そう言って扉を開ける。室内はピンクを基調とした高価な机に箪笥、ベッドがある。そして部屋は何人部屋なのかと言うほどかなり広い。
椅子に腰かけて優雅に香りを楽しんでいる年端も行かない少女が座っている。
背中まである金髪に母親譲りである翠色の目、顔も整えられていて誰がみても美少女と言うだろう女の子、オートブ・テア・エミアがいた。
傍には灰色のメイド服を着ており、長髪を後ろに束ねている姿をした腹心のクネマも傍に待機している。
「早かったわね、ガントさん。部屋の前でもそう言わなくてもよろしいのに」
「いえ、年が離れていても王族には敬意を表すために行っていますので」
「用事があるのはクネマと貴方以外にはいらっしゃらないんですよ」
「それでも必要な事です」
これは王であるゴア殿下ではなくクネマを通してエミア様からの命令である。王族の命令は無下には出来ないのだから。
「まぁ良いです。ではペイリルダンジョンで行った勇者達の実践結果はどうなったのかしら?」
「はっ!」
私はすべてを報告した。
最初はゴブリン相手でも問題なく倒していたこと。
5層目での未知なる魔物の出現とロウタ・フルドの不意打ちによる撃破に魔神とみられる6枚羽をもつ者の出現とロウタ・フルドの消滅、帰還後の勇者様方の戦意喪失。そして騎士が数名の負傷するが命に別状なしとの報告まで全てを伝えた。
「勇者様数名は戦意喪失により戦闘に参加できないと仰っています。おそらく復帰は出来ないかと」
「そう…、そんなことが。やはり使えないものが多いのね」
(相変わらずクネマは辛辣な感想だ…。合ってはいるがな)
ゴブリン達との戦闘では剣術の型もろくに使えず、力押しで倒していた者が多かった。魔法も弱点である頭も狙わずに当てていた。主戦力では厳しい。
「その上、ロウタ・フルドも死んだのか…。祐逸の人材でしたのに…」
「そうですわね。無属性とはいえかなりの練度らしいのですが…」
(ロウタだけは高評価…。まぁ私もそうだが)
なぜかは知らないがロウタだけは評価が高い。戦術も一つ上手であることはこっちで見ていたし、エミア様もクネマもどこか思うところがあるのだろう。
「報告はこれで終わりですか?」
「…いえ、一つだけ気掛かりがあるのです」
「珍しいな、ガントが気になる所があったのか」
「報告することは全て頭に入れている。気になることも報告しておいた方が良いと思ってのこと」
クネマが茶々を入れてきた。私の知識では確証が得られないことを尋ねる程度だが良いかもしれない。
「どのような気掛かりですか?」
「はっ!フルドが魔神ペイリルに攻撃を受ける直前、こう聞こえたのです。『転移』と」
「転移?」
私は神妙にうなずいた。
「それはフルドが言ったのですか?」
「いいえ、魔神ペイリルから聞こえました」
「「・・・・・・・・・」」
クネマとエミア様は黙考する。この言葉はどう意味か、誰が聞いても分かるだろう。そして重大さも。
「フルドに攻撃が受ける直前に、魔神ペイリルが『転移』と、言ったのですね?」
「確かにそう聞こえました」
私は肯定する。
「もし、フルドに直撃したものが攻撃ではなく転移であれば…」
「その場で姿を消しても筋が通ります。そしてこの瞬間までオートブ王国が存命していたのも…」
「攻め滅ぼすつもりが無かったから、と言うことになります…」
上からクネマ、私、エミア様が仰った。
もし転移魔法が扱えれば、街中に魔物や兵士を転移させて住民や敵兵士を油断させた状態で戦争出来る。
その為、転移魔法が扱えるだけでかなり慎重にならざるを得ない。
「私の考察ですが、魔神ペイリルはオートブ王国を滅ぼす意思は無かったこと。そしてフルドがもし転移魔法によりその場で消失したのならば生存しているかもしれない、この二つです」
「もしくはまだ滅ぼさない、と考えられます」
横やりを入れるクネマだが、確かに一理ある。
「ふむ、この報告はお父様、ゴア王には?」
「いまだ不確定の為、報告しておりません」
致し方ない、とは思わない。魔法の知識があれば断言出来たかもしれないのだから。
「これ以上に報告は?」
「いえ、ありませぬ」
「なら下がってよい。報告をありがとう」
「はっ!ありがたきお言葉!」
そう言い、敬礼をして颯爽と部屋から退室した。
お読みいただきありがとうございました。




