29_ペイリルダンジョン最奥にて③
よろしくお願いします。
暫く嘆き疲れた後のこと。
「これらを何かに再利用できないかしら」
レイが指を差して聞いてきた。
そこには黒い骨や皮みたいなものが転がっていた。
「あれって何?」
「だからロウに聞いてるのよ。解析して分からないかしら?」
解析して何に使えるか考えようと言うことか。
落ちてあるところへ行き、掴もうとする。
「・・・・むぅ、両手が無いんだった・・・・」
生きてこの方何十年余り、両腕が使えない環境なんて一度もないから、腕があることを前提に行動してしまう…。
その場で座り、落ちた状態で解析を掛ける。
------------------------
エンドダークドラゴンの骨
エンドダークドラゴンの骨の一部。
創作時に不要となった部分のみ出された部位。
武器、防具、道具等としては申し分ない素材となる。
------------------------
------------------------
エンドダークドラゴンの鱗
エンドダークドラゴンの鱗の一部。
創作時に不要となった部分のみ出された部位。
武器、防具、道具等としては申し分ない素材となる。
------------------------
ふーむ…。
「素材にしたエンドダークドラゴンの骨と鱗らしいよ。物作りの素材としては使えるようだけど…」
「物作りねぇ…。具体的にはどんなもの?小物入れとかふでばことかじゃないわよね?」
「さすがにそんなものは作らないよ…。いや作れないか」
素材が勿体無さすぎる。
骨と鱗、両方を使った物作りは。
「武器しか作れないか…」
でもまともな武器なんて作ったことがない。
刀や刃物は鉄を赤くなるまで焼き、叩いて鍛えることは分かるけど技術や工程なんて詳しくない。
銃なんて機構が複雑だろうし、すぐには作れない。
創造でも知識が無ければ作れないって解析結果でも出ているし…。
どうしようか…。
「棒状の武器なら作りやすいけど、レイはどうした方が良い?」
「あんたが作りやすいものを選びなさい。どうせいいものなんて作れないんでしょうし」
えぇ~…。期待してないってこと?それ。
「なんて嫌な顔するのよ…。作り方も知らないことは百も承知よ。刀とか銃器とか作れない事も理解してるわ」
「じゃあ、何を作ればいいんだよ…。簡単なものしか作れないよ?それこそ原始的な武器ぐらいしか…」
「なら原始的な武器でいいわよ。それを作りなさい」
え?それでいいの?
「それでいいの?少し頑張ればまともな武器作れるかもしれないのに」
「本当にそうならしてほしいけど、知識も技術もないんなら仕方ないわ。下手に頑張って素材が蒸発するよりもマシよ。それにこの身体はスペックが高いし」
そう続けるレイは堂々としていた。
「分かった。じゃあ棍棒を作る。多分スキルとかつけられると思うけどそれは後から検討ってことで」
「それで充分よ。お願いね」
材料を前に、創造を発動する。配置はレイが協力してくれた。
目的は武器として棍棒を創ること。
材料はエンドダークドラゴンの骨と鱗。
二つの材料が青白く光り始めた。どうも発動すると青白く光る仕様らしい。
一際強く発光し収まっていった。
そこには二つの棍棒が置いてある。
一つはビール瓶サイズの長さで、形状は鉄パイプのようなもの。
もう一つは野球バットほどの長さで、形状もほぼ似ている。ただ野球バットと違う点は、持ち手よりも上の部分は真っ黒い鱗がびっしりと生えていた。
二つに解析を掛ける。
------------------------
細長い形状が特徴。
エンドダークドラゴンの骨と鱗を素材にした武器。
持ち手の魔力を吸うことでシールドを展開、形状を自由に操ることが出来る。
また強度、リーチを広げることが可能。
------------------------
------------------------
バットの形状が特徴。
エンドダークドラゴンの骨と鱗を素材にした武器。
持ち手の魔力を吸うことで逆鱗を発生させる。
また強度、破壊性能を引き上げることが可能。
------------------------
両方とも魔力を吸わせることで効果を発揮させるもののようだ。
短い棍棒の方は、シールドを展開させることが出来る。
長い棍棒は鱗を逆立てて破壊性能を上げることが出来る。
「なかなかいい武器が出来たかな」
にっこり笑ってそう呟く。
「やっとできた?待ちくたびれたわ」
レイが後ろから顔を覗いて聞いてきた。
「できたよ!しかも二つ!」
「ほぉーん、結構良い出来ね」
バットの方を持ち、軽く振った。
「長さも丁度いいし、重さも扱え易い。これならかなり使えるわ」
肩に乗せてそう言った。
なんか様になってる。
レイが四次元バッグに棍棒を二つ入れて、左肩に斜めに掛けた。
「さて、そろそろここを出るわよ」
「そうだね、時間かかるけど脱出しないとね」
両腕が使えなくなったけど、無属性魔法である程度避けられるはず。
「何言ってるの。すぐ脱出できるわよ」
親指を後ろに差して観るよう煽られる。
そこには青白く淡い光が天井に向かっている。
「あれはなに?」
「ペイリルが言うには転移陣で、あれでダンジョン付近に移動できるらしいわ」
「・・・・・使うの?」
確か地中とか空中に転移する噂のあれだよね。
「正直、引き返すのが面倒。あれを使うわよ」
「大丈夫なの!?無事に出られるのあれ!?」
『大丈夫です。転移陣を確認しましたが付近の地上に出られるよう調整されていました』
ペイリルさんの声が響く。融合とかレイの人格を刻むとか、魔法に関して協力してくれたけど、本当に大丈夫なの?
「ここってかなり地下深い場所なのよね?一層ずつ歩いて上がっていくのにどれだけ掛かる?何時間、最悪何日間歩き続けるかしらね?」
うぅ、確かにどれだけ時間が掛かるか…。フロアに到達して階段を探す。時間が経てば空腹になってくる。魔物が死んでるから時間が経っているため腐敗が進んでいる可能性もある。そのため食料調達は難しいはず…。
そう考えると。
「転移陣を使うことが賢明…?」
「そういうことよ」
状況が既に積んでた…。
僕はレイに一張羅を着せられた(今更だけど脱いでいた)。
そして転移陣の中にレイと一緒に内側へ入る。
「どうすれば起動するの?」
「あたしが設定する。ロウはそのままにしてていいわ」
左手に立つレイが数分間、無言になる。
「出来たわ。もう少しで転移されるはずよ」
「じゃあ神様に祈ろうか」
『あの、一応私も神様ですが…』
遠慮がちにペイリルさんが言ってきた。
「そうだったね。配慮してなかったよ」
「ここで腐ってた神様なんて配慮しなくていいのよ」
「そう言わないでよ。僕も腐るだろうし」
『あの、フォローになってないですんが…』
光が強くなっていく。そろそろ始まるようだ。
「そろそろ起動するわよ。心決めなさい」
レイが僕の左袖を持ち上げて、ぎゅっと握った。
「生きてるか死んでるか、どちらに傾いてもずっと一緒よ」
「レイ…。うん、分かった」
どんな状況でも、レイと一緒。これは絶対だ。
「レイ、これから一緒に頑張ろう」
「望むところよ。ロウ」
そして、光で何も見えなくなった時。
レイと朗太の姿はそこには消えていた。
1章 完結
とりあえず1章は完結にします。
ここまで読んで頂いた方々、ありがとうございました。
後付け
暫く投稿はお休みします。詳しくは活動報告を確認してください。




