25_17歳との対面
仕事中、マウスを動かしたり小さい面積で大量の情報を格納してくれるデスクトップパソコンに感動してしまった…。
最近の記憶は溶けて蒸発しやすいです…。
「分かりました、ペイリルさん。融合しましょう」
とはいえ、少し怖いんだよな…。
「魔法はペイリルさんが行使するでいいんですよね?」
「はい、私が行使します。貴女はそのままでしていれば大丈夫です」
魔法を簡単に教えられても作れないからね。
『それはあたしの当てつけか?』
い、いや~…、それは違います~…。
「では、始めますが良いですか?」
二回だけ深呼吸、目を閉じた。
「お願いします」
――――――――――
「・・・・・あれ?」
あたり一面が真っ白になっていた。
目を瞑っていたから真っ暗のはずなのに…。
「ここはどこ~…」
「どこだろうなぁ…、ほんとに…」
うん?応答された?
声が聞こえた方に振り向くと、『僕』がいた。
身長や身体、服装も同じだけど、色白の肌だからかそれとも一面が真っ白だからなのか、目の下にある隈が大きく見える。
「はじめましてだな、29歳の俺」
真顔で挨拶されても…。29歳?ってことは…。
「君は17歳の僕?」
「そうだよ。レイと29歳の俺が人格を出てくるなんて思ってなかったがな」
「ほんと、どうしてなんだろうね…」
交通事故で死んだら男の娘になってたしクラスで召喚されるし、色々とぶっ飛んでるよね…。
「ここはどこか分かる?」
「さぁ?でも分解されて融合するって話だから、たぶんだけど今は融合しているんじゃない?」
「うーん…。脳の潜在意識?に入ったような感じなんだけどな、夢を見ているようなあの感じ…」
「まぁ、俺たちの願いなんて関係なく、すぐにこの空間からは追い出されるんだろうな」
そりゃあそうだろうね…。
「でさ、お前に聞きたいことがあるんだけど…」
「何さ、自問自答でもするのか?」
「お前とは違う人格だから自答では無いよ。…俺が生きていた世界はどうだった?別の人から見れば楽しかったか?」
「どういう意図の質問だ?」
17歳の世界は楽しいかだと?
「あれだ、叱られた時とか嫌なときがあった時に『こんな人生は嫌だ』とか『誰か代わりに動かしてくれ』とか、そう思わないか?」
「失敗したときはそんな風によく考えるけど…、それがどうした?」
本当になんの質問をしているのか…。
「俺は常日頃から『こんな人生は嫌だ』って思っている。『代わりに動かして導いしてほしい』とも。そして29歳の俺…、まぁお前が俺の身体を乗っ取った」
「言い方はあれだが、概ね間違えてはいないな」
不本意だ、とそれを付け足す必要があるけど。
「それで、残り少ない休みと登校、ここ異世界では充実したか?楽しかったか?」
日常生活はどうだったか。
「母親はぶっ倒れるわ生徒は僕らを異物のような視線しかしないわ。挙句に異世界に誘拐されては役立たず扱い。答えるなら充実したけど楽しくなかったな」
「あぁそうだよな。誰からも俺たちを後ろから指を差すんだ。『あいつはおかしい』、『役立たずだ』って」
本当、誰にも歓迎されていないかったね。
「でも、人生経験もあるけどレイもいたから気にしなくなったよ」
「どういう意味だ?」
目を細めて睨んでくる17歳。
「僕の29歳の人生は本当に碌な事が無かったよ。正確には皆が出来ることが上手く出来なかった。グラウンドに石灰を真っすぐに引けなかったり仕事が新人よりも覚えが遅かったりした」
記憶力(頭)が足りなかったり経験が浅いとかもあるけど、うまく事が運べない方が多かった。
「でもレイの喝を入れてくれたおかげでもう少し頑張ろうって思ったんだ。仕方ないって開き直ることもできたよ」
「お前はマゾか」
「マゾじゃないよ。考え直したんだよ」
嫌な顔をする17歳。自己嫌悪かよ。
それから世間話をした。
あの教師は嫌だった、職場の環境がブラックだったと不平不満からあの授業は楽しかったとか縛りプレイで進めていたゲームをクリアした達成感だの、益体のない話を続けた。
「…そろそろ時間だな。お前の身体がぼやけてきたぞ」
「そっちこそ、身体がぼやけてる」
17歳の足元から徐々に透けてきた。もう少しでこの空間から追い出されるらしい。「もうお別れだね。色々と話せて楽しかったよ」
「同じ顔と会話なんて俺は微妙だがな…」
本当はそうだろうがこっちは自分の顔が見慣れていないから他人と話す感覚だよ。
「まぁ、また会おうよ。困ったときは助けてね」
「その時は後がどうなるか分からないが良いのか?」
「あはは。状況を動かしてくれるだけありがたいよ」
プラスとなる状況に進めてくれると嬉しいけどね。
「じゃ、また会おうね」
「またいつかな」
視界がぼやけ始め、真っ黒になった。
お読みいただきありがとうございました。
ちびちび書いていたストックは出しました…。




