21_創造した人のお話
よろしくお願いします。
いやぁ、会話は難しいこと難しいこと…。
構想は頭にあるんですがねぇ…。
『おーい、起きろー!』
「ん・・、うーん・・・・」
誰か声が聞こえる。
う!さむ!なんでこんな寒いの!
目を擦りながら立ち上がる。
『やっと起きたわね。どんだけ寝てたのよ』
「だって、レイが突っ込んでいったから・・・・。あれ?」
身体が動かせる?確かレイが動かしてたはず・・・・。
『もとに戻したわよ。ロウの身体なんだし。』
「まぁ…。そうなんだけどね」
ゴリラでは戦えなかったけど…。
「やっと起きたのですね・・・・」
レイとは違う女性の声が聞こえた。
部屋中央に女性の姿が現れた。
六枚の白い羽が生えている大きい女性だ。
あの威圧は無く、十分身体を動かせる。
「・・・・。死ぬのかな?」
ここでたった一人でラスボス(感を出している敵)を相手にするのは流石に…。
『なんか話を聞かせたいらしいわ。だから殺していないようだし』
「そうです、私の話を聞いてほしいのです」
「なんの話?」
「私の過ちを聞いてほしいのです」
『それを聞かせたくてロウが起きるまで待ってたのよ』
「どのくらい寝てたの?」
『さぁ?既に体内時計なんて狂ってるわ』
「分からないよなぁ…。当然か」
「私の話を聞いてくださいませんか?」
「あ、はい。聞きます」
声が少し怒気が含んでた。
返事しないとやばい。
「ふぅ…、では私の過去の話をします」
え、結構話長くなりそう?
――――――――――
私はある星で神様のもと、小さな光として生まれてきました。
生まれてきたその小さな光は神様の命により仕事を行い続けます。
そして数百、数千年も仕事をし続けることで天使に昇格していきます。
私も同じで小さな光から生まれてから数千年、神様に遣われていました。
え、ブラック?ブラックとは何でしょう?
ですが、ある時に神様にこう仰いました。
『そなたはもう歩いていける。自分で生物を創り、観察し、学び続けよ』と。
そして私は遥か彼方の星に移動し、環境を整え、生物を生み出し観察しました。
生物が成長し続け、知恵を身に着けるまでに進化することに感動を覚えました。
知恵を身に着けた生物…ですか?それは色々です。人間に住人、妖精たちにエルフやドワーフ、色々です。
その中で私とは違う神を生み出し、信託を用いることで存在を認識させ、生物たちを私たちに敬うようにしました。
――――――――――
「それがあなたの生い立ち、なんですね」
小さな光という存在を生まされて、出世できるまでずっとこき使われて、そして『なんか教えること無くなったな~』となれば追い出す。
何というブラック。
そしてその先で星と言うか、世界も生物も神様を創り、観察していたと。
「ってか、神様なんですね」
「えぇ。私は神様です」
にっこり微笑むあなたは本当に女神です。
本当に綺麗です。
レイはそんな神様に立ち向かっていたんだね。
この人?じゃなかったらその場で死んでいたよ。
『全くその通りね。運がよかったわ』
(返事軽ッ!)
「あの、続きを聞いても良いですか?」
女神さまが訪ねてきた。
「あ、はい。どうぞ続きを」
――――――――――
こほんッ!では続きから。
私は生物が知恵を身に着け始めた時からある信託を下ろしました。
この世には魔法と呼ばれる奇跡を。
枝を擦り続けることで生まれる火種も遠くから運んでいた川の水も、魔法を使えば一瞬で生まれる奇跡を生物に教えました。
生物たちは魔法、奇跡が生まれたことにすごく感謝されました。
そこから生物たちは魔法を使うようになりました。最初は生活から使われ、徐々に狩りに転用するまでに技術を高めました。
そして、小さな集団から村、やがて大きい国となるまでに生活範囲を広げました。
観察をし続けていた私は、嬉しかったのです。小さな奇跡をここまで技術として高めたことを。
ただ、ここまでは良かったのです。
ここから狂い始めました。
大きい国は広い大地で点在しており、それぞれが違う成り立ちで大きくなりました。そしてそれぞれの国はその存在を知り、それぞれの目的で戦争をするようになりました。鉱石が多く取れる国、森林が豊富な国、凶暴な生物が少ない国など、それぞれの国を攻め始めました。
奇跡を生む魔法を使って戦争をするようになりました。
私は悔いました。魔法を使って傷付け合うために利用することに。信託から戦争とは無縁な国に下ろしました。種族を転化し、力を得る方法を。
――――――――――
「その結果、生まれたのが魔族ってことだよね?」
「えぇ。そうです。なぜお分かりに?」
「図書室でその絵本を読んだんです。国同士で戦争し続けることを止めるために信託を下した。それで魔族が生まれて止めるよう説得したけど、逆に戦争に利用しようと攻められて、逃げ返したとか」
僕はあの絵本を思い返す。欲望を優先する奴らって恐いな~と思ったけど。
「読まれたのですね。その通りです。後に魔族と呼ばれる種族が生まれました」
――――――――――
魔族の出現と戦争を激化したことに、生み出されていたこの世界の神々は私を弾圧しました。
私は魔族たちに出来る限り戦争に参加しないことを信託で伝え、下界であるこの世界に堕ちました。
そしてダンジョンを創り最奥で外の世界を観察するだけの存在に徹しました。
それぞれの国同士が共通の敵として魔族を定めたのでしょう。
信託通りに魔族は戦争に参加しませんでしたが人族が魔族を攻めるようになり、それに合わせて別々の国は戦争をしなくなりました。
国同士の戦争自体は続きました。ですが無作為な戦争は無くなりました。
皮肉ですよね、戦争を止めるために生まれた魔族が戦争の火種として攻められ続けるのですから。神々は別世界から勇者召喚の軌跡を生み出しました。
目的は私ペイリルを倒し、魔族を絶滅させることでしょう。
――――――――――
「そして、私は勇者がこのダンジョンに来訪した際、姿を現して倒すようお願いしているのです」
「どうして倒すようお願いするんですか?」
「私は失敗したのです。種族を変える方法を伝え、そして絶滅に追いやり、世界を戦争に満ちてしまったのですから」
「なので罪悪感から倒すようお願いしていたってこと?」
「はい、そうです」
うそーん。
お読みいただきありがとうございました。




