01.二度目の世界の始まり_1日目
二度目の世界です。
とはいえ、まだ異世界に転移していません。
(ッ!!! はぁっ、はぁっ、はぁっ)
ベッドから上半身を勢いよく上げて飛び起きた。
体中から嫌な汗が流れていた。敷布団や掛布団にもびっしょりと汗が吸い付いていて、なお気持ち悪さが沸き上がる。
(い、生きてる!?)
体中をぺたぺた触り、時にはおなか、腕を触って傷が無いこと、特に左足と頭に外傷が無いことを念入りに確認し、異常が無いことに安堵する。
(よ、よかったぁ。今のが夢で…)
そう思い、ベッドから起き上がろうと座っておかしいことに気付く。
(・・・・。今暮らしているアパートにベッドなんてない)
眼だけで右奥を見てみると勉強机があり、上には漫画とゲーム攻略本が山積みになっている。見慣れているが、あのおんぼろアパートには無いものだ。それどころか数カ月前に実家へ帰った時はいつの間にか処分されたことを告げられた。山積みの漫画と攻略本も同様、処分されたはず。
次に左を見てみる。
少し天井に届くかってぐらいの大きい本棚がある。その中には教科書や漫画、ゲーム攻略本が収まっている。いくつか空間が出来ている所は勉強机に積まれているものだろう。また、本棚の右側に姿見もあった。
最後にベッドの枕元。もちろん見慣れている。高校生の頃によく使っていた枕と布団だ。
(間違いない。この風景、高校生の頃の部屋だ…。)
今度は頭を動かして周りをみてカレンダーを見ると8月23日になっている。
カレンダーをジッと見て、寝ぼけ頭を必死に動かす。
(と、とりあえず時刻と身分の確認をしなくちゃ!)
本当に高校生なのか?もしかしたら誰かのドッキリで高校生の部屋を再現して、眠っている僕を誘拐しこの部屋に置いて反応を楽しむとか!
そんな可能性を考えて、勉強机に向かう。高校生の頃によく読んでいた漫画にかなり昔に流行っていたゲーム攻略本が置いてあるが、それらすべての本を床に払い落し、何か書類が無いかを探した。かなり重い音がなって床に落ちるが気にしない。
いくつかの紙を確認し、通っていた高等学校の夏休みに関係する紙を発見、内容を見る。
(うん、始業式は9月1日、クラスは3年1組。そういえばクラスは3年1組だったな)
この内容を見て、所属していたクラスすら忘れていたことに気付いた。同窓会も参加しなかったしなぁ。
(じゃあ、クラスメイトの名前も…。だめだな、忘れた。これは名簿を探した方が早い)
クラスメイトを思い出そうとし、一人も思い出せないことに早々と諦め、次はどうするかを考える。
(今度は身分だ。たしか、入学か進級したら学生証が渡されるはず!)
あたりを見回し、壁に掛けてあるリュックを見る。少しづつ高校生時代を思い出してきた。黒のメインカラーをしたリュックを背負い、授業を受けて、休憩時間はボーッとし、お昼休憩は図書室で好きな本を読み、また授業を受けてすぐに帰る。そんな暗い学校生活だった。
(高校時代の学校生活、暗かったなぁ…。いや、そんなことより現状だ。とりあえず開けよう)
このリュックはそんな象徴のように見えて、頭を振ってリュックに手を取る。
筆箱に教科書、財布に変色した書類。一応書類を見てみると、5月19日のものだった。
(・・・・・・・・・・・)
全て書類を黙って確認するも日数がかなり経過していた。足元にあった青いゴミ箱に捨てる。
(財布の中身に学生証があるはずだ)
財布を開き、保険証、診察券を取り出す。名前、年齢を見た。
(17歳? 年と誕生日はカレンダーを合わせると過ぎてるが…)
次に本命の学生証を見ると。
(うん...。ちゃんと17歳と書いてる。じゃあ今は本当に17歳か?でも、顔写真は誰だ?このかわいい顔の人?)
きれいな黒髪で長髪、肌は色白だが、半目で光が消えている。現在進行形で病んでいますっていうぐらいには目が死んでいる。
(名前は「古戸朗太」?…は?僕?でも性別は男性って…。)
顔をうつむいて確認していて長い髪が視界に入っていることに今更気付き、まさかと顔を右に向ける。
姿見に映る姿は、長い髪に、色白の、でも死んでいる半目をしている、学生証の顔写真と同じ自分の顔がそこにあった。
お読み頂き、ありがとうございました。
まとめ
1.車に轢かれたが生きていた。
2.高校生時代に戻った疑惑。
3.男の娘になった?