一話
処女作です。禁則事項が守れていなかったり誤字が多かったり面白くなかったりするかも知れませんが生暖かい目で読んでいってください。
ジリリリリリリ! ジリリリリリリ!
目覚まし時計のけたたましい音が部屋に鳴り響く。もう少し優しく起こせないものだろうか。
「うるさい……」
時計の煩さに怒りを覚え少々乱暴に止める。
しかし、この時間に鳴るように設定したのは自分なので完全な逆恨みだ。そんな逆恨みに対して怒ったりしてこないあたり時計というのは俺よりもずっと心が広いのかもしれない。まあ時計に心があるのかは知らないが。
ふと時計を見ると時計は八時三分を指していた。八時ぴったりに鳴ったのにこんな事を考えていたせいで三分も時間を浪費してしまった。俺は毎朝の楽しみを見逃さないために急いで起き上がりリビングに向かう。
『皆さんおはようございます。エイトニュースの時間です!』
なんとか間に合った。テレビのスイッチを押すのがあと数秒遅れていたらこの天使の声を聴き逃していたかもしれない。
この声の主は佐藤美織。彼女はプニテレビの新人アナウンサーで情報番組エイトニュースの総合司会に抜擢された期待の新人なのだ。そして今最も人気のある女性アナウンサーでもある。
俺はこの天使の声を聴くのを毎朝の楽しみにしている。高校を卒業してから生活リズムを変え毎朝八時に起きているのだが、それは天使こと佐藤美織ちゃんの声を聴くためと言っても過言ではない。
やっぱり画面の向こうにいる女性は良い。
むしろ画面の中以外の女性は女性じゃない。こんなことを言うと若干、いやかなり危ない奴だと思われるかもしれないが俺がこんなことを言うのには海の底よりも深い事情がある。それは幼少期から現在に至るまでに女性達から酷い仕打ちを何度も受けたことだ。母親から虐待される、同級生の女子から虐められる、見知らぬ女性に誘拐されるなど、もう数えるのも嫌になるくらい女性から酷い仕打ちを受け女性の汚さを見せられた。そのため今では極度の女性嫌いになってしまい女性と話すのも嫌になってしまった。
少し話が長くなったが要約すると俺は今まで女性から酷いことをされ画面越しでないと女性をまともな目で見れなくなってしまった。ということだ。画面越しで自分と無関係の女性なら危険性もないので嫌悪感は覚えないし美織ちゃんの天使のような声は今までの女性達との辛い思い出を消し去ってくれるような気さえする。
『では次のニュースです。本日未明、能力者の犯行と見られる殺人事件が起こりました』
おっと、ニュースを見逃してしまうところだった。今言っていた能力者とは、火を操ったり雷を落としたりという科学で説明のできない漫画やアニメに出てくるようなことができる人間のことだ。今から十年前に最初の能力者が現れて以来少しずつ増えてきていて同時にその能力で犯罪を犯す者も増えてきている。こういった能力による犯罪のニュースはほぼ毎日何処かで起こっている。もちろん対策機関もあるが対処しきれていないのが現状だ。
『今日のゲストは能力犯罪対策局 局長 小倉 優子先生です。宜しくお願いします。』
『宜しくお願いします。今日は能力者から身を守る方法についてお話します』
専門家のババアの話が始まったので顔を洗い着替えを済ませる。前は画面越しなので嫌悪感を覚えた訳では無いが、ババアに興味はない。ババアじゃなく美織ちゃんの出番を増やせ。それに俺みたいな非能力者はこんな話を聞いてもしょうがないのだ。能力者からすれば非能力者の抵抗なんて子供の駄々に等しいのだから。
時計を見ると時刻は八時五十分を指している。そろそろ仕事の時間なので一階に向かう。因みに俺の家は二階建てで一階が仕事場、二階が自宅となっている。一人暮らしには広すぎる家だ。そして、仕事は何でも屋とか便利屋とかいうものらしい。というのも、一ヶ月前に祖父が死んでしまったため祖父の財産、この家、そして仕事を受け継ぐことになったのだが。最初の二週間は悲しみに暮れていたためまだ仕事を始めて三週間しか経っていない。俺にとってたった一人の家族で女嫌いの俺の良き理解者でもあったので悲しみも人一倍だった。
「はぁ、それにしても本当に客なんてくるのか?」
一階が仕事場とは言ったものの俺が今いる部屋以外は今の所使っていない。この部屋は大きなテーブルを挟んでソファーが二つそして本棚が一つ有るだけ。あとの部屋は仕事に使うであろう道具が置かれた物置部屋が二つとトイレだけだ。
ピンポーン
家の玄関のインターホン音が鳴った。店の玄関にはインターホンではなく鈴がついているので違いが分かりやすい。まあ、それでなくても音の近さで分かるが。
「はーい、今行きます!」
小走りで家の玄関に行くとそこに居たのは宅配員の方だった。依頼人が入口を間違えたかも知れないと少し期待していたのだがそんなことはなかった。まあ、こっちの玄関には看板すらないので間違う訳もないが。
「お届け物です。吉野 久さんでよろしいですか?」
「あ、祖父は一ヶ月前に亡くなりまして……俺は孫なんですけど代わりに受け取ってもいいですか?」
「それは、なんて言ったらいいか……ご愁傷さまです。親族の方でしたら大丈夫です」
まだ祖父が亡くなってから一ヶ月しか経っていないため祖父宛の荷物や郵便は届いている。
「ありがとうございましたー」
差出人は夜田空架、住所は東京。全く見覚えのない名前だ。祖父の知り合いだろうがこれは開けても良いんだろうか? 開けるべきか開けないべきかは取り敢えずこのダンボール箱を家に運んでから考えることにしよう。それにしてもこのダンボール箱、中々大きくて重い。二十キロ位はあるんじゃないだろうか。一体何が入っているんだ?
「よいしょっと、あー、重てー」
さてと、このダンボール箱をどうするべきか
「やっぱり中身が気になるし開けないで放置するわけにもいかないよな」
テープが何枚にも重ねられているため開けるのが大変だ。何を厳重に閉じる必要があるんだろうか。
「よし、開いた!中には何が……」
次の言葉が出なかった。大方動物かドッキリグッズだろうと思っていたが中に入っていたものは俺の言葉を失わせるのに充分すぎた。
答えを言おう。ダンボール箱の中に入っていたのは、
「ひ、あの、えっと、宜しくお願いします!」
俺の大嫌いな女。しかも痩せこけた少女だった。
「えっと、何かのドッキリ?」
「パパとママにここでお世話になりなさいって言われて来ました……やっぱり、ご迷惑ですよね」
パパとママに言われて?子供をダンボール箱に入れて送り付けるなんて正気の沙汰じゃない。しかもお世話になりなさいってのもよく分からん。それにこの子なんだか怯えているみたいだ。まあ、無理もないか。
「怖がらなくて大丈夫だよ。とりあえず君が知っていることを全部教えてくれるかな」
「分かりました、パパとママにここに住んでいる人のお世話になりなさいって言われてきました。あとこの手紙も見せなさいって」
やっぱり祖父が関係していたんだな。あれ、そういえば子供とはいえ女と普通に話せてるな、子供は俺に害を与える恐れがないからか。いや、そんなことよりまずは手紙だ。
「見せてもらっても良いかな?」
「お、お願いします!」
手紙を読むと以下のことが書かれていた。
娘の処遇は任せます。あとはお好きにどうぞ。
これだけ、たったこれだけしか書かれていなかったが俺は理解した。恐らくこの子は親に捨てられてしまったのだ。そしてその引取り先が俺の祖父だったんだろう。しかしなぜこんな事をしたのかが分からない。それに祖父が死んでしまった今、この子をどうするべきなのだろうか。
「あの、私はどうなるんでしょうか?」
「うーん、普通に考えれば君のパパとママの所に返すのがいいんだろうけど」
「戻らなきゃいけないんですか……」
少女をよく見ると顔は痩せこけていて髪の毛はボサボサだった。そしてダンボールで送られてきたことから考えると虐待もしくは育児放棄を受けていたんじゃないだろうか。そんな家に返すのは俺としては気が進まない。
「これは君さえよければなんだけど、しばらくの間ここで暮らさないか?」
「いいんですか、私みたいな役立たずがここに居ても」
目にうっすらと涙を浮かべながら話す少女に少しだけ母親に虐待されていた頃の自分を重ねてしまう。そして俺の中の何かに火がついた。
「もちろん、パパとママの元に帰りたいなら全力で手伝う。でももし君が帰りたくないなら今日からここが君の家だ!」
「私は…帰りたく…ありません、怖いパパと無視するママの所には帰りたくないです!」
後先のことは考えずに見ず知らずの少女を保護した俺はもしかすると警察に捕まったりするのかも知れない。これは捨て犬を助けて悦に浸るような偽善的なことなのかもしれない。それでも助けたいと思ってしまったらもう止まれない。
こうして俺の最初にして最後になるかもしれない依頼が始まった。
ショウセツ ムズカシイ