学園長室
理事長室に案内してもらうためにサラさんの後ろについていく。途中、他の教室から変な視線を感じたけど、そういうのは向こうで色々と浴びてきたので特に何も感じなかった。横にいるセラムさんは暗い顔してたけど。
「セラムさん、なにかあった?」
「へ?」
僕が声をかけると、セラムさんは堪えるのに必死だったのか素っ頓狂な声を上げた。
「悲しそうな顔してたからさ、何かあったのかなって」
その声の事には触れずに、笑顔でセラムさんに接する。
「いえ…あの、天野照さんは視線が気にならないのですか?」
「照でいいよ。うーん、こういう視線には慣れてるからなぁ…」
実際向こうじゃいろんな視線を浴びてきたし、わざわざ気にすることでもないよね。
「そうなんですか…凄いですね、照さんは」
セラムさんに少し笑顔が戻った。よかった、女の子が悲しい顔してるのは見たくないからね。
「にしても、なんでこんなに視線を感じるんだろう…僕が見慣れないのはわかるけど…」
明らかにそれだけじゃない気がする。なんかこっちを見下すような視線も感じるし。
「そのことは後でお話ししましょう。さ、学園長室に着きましたよ」
僕が考え込む前にサラさんが声をかけてくる。サラさんの前には偉い人が好みそうな扉があった。
「学園長、マグナードです。火急の件でご相談があります」
「入れ」
扉をノックしながら要件を話すサラさん。すると中から入室を許可する声が返ってくる。
その言葉を聞いてから扉を開けるサラさん。僕とセラムさんもその後に続く。
「失礼します」
「「失礼します」」
サラさんに習い、言葉を出す。僕の言葉と被るようにセラムさんも同じ言葉を発していた。
中に入ると大きな木の机が部屋の奥にありそれと対をなすようにある座り心地の良さそうな椅子に一人の老人が座っていた。彼が学園長なんだろう。
「それで、火急の件とはなんじゃ?」
「Dクラスで魔法の実演を行った際に、セラムさんの魔法が暴発し、召喚魔法が発動してしまいこちらの天野照を異世界から召喚してしまいました。」
学園長の言葉を合図に、サラさんが事情を説明する。今考えると魔法の暴発で召喚魔法って色々とおかしい気がする。
「召喚魔法じゃと!?あのセラムがか…」
学園長が驚愕した様子でセラムさんを見つめる。
それにしてもあのって言葉が引っかかるんだけど…まさか…。
「セラムさん、魔法苦手?」
「………はい…」
長い沈黙の後、消え入るような声で頷くのだった。