悪魔の種
「それで、どうやって契約するんだよ」
セルマとの契約の方法を聞く。
「へ?知らないの?」
セルマは驚愕したと言わんばかりに目を見開く。あーそういや行ってなかったな。
「あー…俺、この世界の人間じゃないんだよ。なんかの召喚に巻き込まれたっぽいんだ」
取り敢えずセルマに俺の今の状況を伝えることにする。何かわかるかもしれないしな。
「異世界召喚…また珍しいものに巻き込まれたね。それで、多分こっちの世界に召喚されたであろうお友達を探すってことで良いんだよね?」
「おう、じゃあさっさと契約しちまおうぜ」
説明し終えた俺はセルマに契約を促す。
「うん、それじゃあ手を出して」
セルマもそれに答えてくれたようで契約を進めてくれるみたいだ。
「ほい」
右手をセルマの前に出してセルマの言葉に素直に従う。
「それじゃあ契約を始めるよ。あ、言い忘れてたけど死ぬほど痛いと思うから我慢してね」
「は?」
セルマは俺の手を握りながら不穏な言葉を口にする。その言葉のせいで俺の頭は一瞬真っ白になった。
セルマの言葉を理解するのと契約が始まったのはほぼ同時だった。
「ちょっとまがぁぁぁぁぁ!」
右手から全身に痛みが走る。思わず片膝をついて始まってしまった痛みになんとか堪えようとするが全くの無意味だった。
「あがががががっ!」
「うわ痛そう…でも力を手に入れるためだから、頑張って」
俺が痛みに耐えている時だった。頭の中に小さな言葉が紡がれ始めた。
≪【紋章:勇気の証】が授与されました。これに伴い、【紋章:悪魔の種】を散布します。【紋章:悪魔の種】の適合者を確認。散布終了しました≫
右手に黒い光で六芒星の文様が描かれていく。それに驚いたのは俺じゃなくてセルマだった。俺は痛みでそれどころじゃないからな!
「え!?これってまさかっ!」
その言葉を最後にセルマの姿が消えた。すると俺の身体から痛みが引いていく。
「はぁ…はぁ…何なんだよいったい…」
『それを言いたいのはこっちなんだけど?』
「おわっ!?」
頭の中にセルマの言葉が響く。辺りを見回すがセルマはどこにもいない。どこ行った?
『ここだよ、君の右手の甲』
セルマの言葉を頼りに右手の甲に目を向ける。其処には左上が青く輝く六芒星の紋様が描かれていた。
『それは【悪魔の種】。魔王になるために必要な物だよ』
「魔王?この紋様がか?」
小さく輝く紋様がに手を触れる。
『そうだよ、召喚されて早々に面白いことに巻き込まれてるね』
セルマの楽しそうな声が頭に響く。その声を聞きながらさっき頭に紡がれた言葉を思い出していた。
「勇気の証…照?」
右手の甲を摩りながら、俺は空を見上げこの世界召喚されたと確信した幼馴染の名前を口にするのだった。
次回は、照sideのお話です