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脇役(おれ)と主人公(あいつ)の異世界召喚  作者: 白羽月
蒼眞編Ⅰ
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小さな出会い

「うっ…照はどこだ…?」


ゆっくりと立ち上がり、周りを見渡しても薄暗い森ばかり。


「取り敢えず…この森を出ないとな…」


ゆっくりと道無き道を歩いていく。動かないことには何もならないしな。てか飯がないから…今日中にこの森から出ないと餓死…?やばいぞこれ…。


不穏なことを考えつつ、歩いていくと地面が踏み固められた通路のような物を発見する。


「これは…道か?誰かがここに来てるってことか?よかった…なんとか餓死は免れそうだな」


考えをまとめる為に声に出す。そこでふと小さな選択を迫られていることに気がついた。


「これ…どっちに進もう…」


そう、左右どちらに進むかである。


右を見ても木が鬱蒼と生い茂る薄暗い道。


左を見ても木が鬱蒼と生い茂る薄暗い道。


全く道標がないのである。


「てかそもそもこんな場所、人が来るのかすら怪しいじゃねぇか…でも動かないとなぁ…」


考えていても仕方ないという結論に至り、右へ行く道を選択する。この小さな選択が後々大きな分岐点であることに俺はまだ気づいていなかった。


歩みを進めて幾らかの時間が過ぎた時。通路に光が差し込み始めた。


「日光…出口か!?」


やっと森から出られると思い思わずテンションが上がってしまう。勢いよく走り出すと、通路の先には光でよく見えないが開けた場所が見え始めた。


「キタコレ!やっと出られるぞ!」


そのままの勢いでジャンプしながら森の終わりを迎えた、ハズだった。


「って…まだ森かよ…」


地面に着地しながら辺りを見回すと、さっきの薄暗い森とは違う神秘的な場所に出た。中央には大きな石碑が静かに佇んでいる。


「にしても綺麗なところだな。さっきと全然違う」


取り敢えず確認をと、中央に立つ石碑に近づいていく。石碑には小さな文字がびっしりと書かれていた。


「読めねぇ…何語だよこれ…」


よくわからん字がびっしりと…もしかして異世界語?ここ異世界?え、よくある異世界召喚でもされたの?


そこまで考えついた時、ふと照の足元に現れた紋様を思い出した。


「俺じゃなくて、彼奴が呼ばれたのか」


その時、石碑に小さなヒビが入った。


「っ!?」


慌てて後ろに飛び退く。石碑には尚もヒビが入り続けていく。


「おいおい…なんだ?何が起こってる?」


目の前の光景に頭が混乱しその場に佇む。徐々に入っていた石碑のヒビから光が漏れ始める。


「………やばくねぇかこれ…」


俺の呟きと同時に石碑が音を立てて崩れていく。崩れた石碑から黒い光の粒が溢れ出るように現れ、石碑があった場所の頭上で一つの形を作っていく。


「……嫌な予感しかしない…」


人型で、体の周りに氷の粒が舞い、肌が青白いそれは、大きく伸びをしていた。


「んーっ!久しぶりの外だぁ…あれ、君は誰?」


「お前が誰だよっ!」


思わず突っ込んでしまった。


「ごめんごめん、僕はセルマ。水を司る魔霊さ」


「魔霊?」


思わず聞きなれない言葉に反応してしまう。それよりも今は状況を整理しないと。

会話は成立するみたいだけど、明らかにやばいし、これは逃げるべきだよな?


「そうだよ、それで君は…なんで笑ってるの?」


「へ?」


セルマと名乗った魔霊?に指摘されて初めて気付いた。おれの口がにやけていることに。


そして自覚する。自分が歓喜していることに。退屈な日常が終わり、夢にまで見た異世界に来て、面白いことが沢山待っている。そんな気がしていることに。


「すまん、嬉しくてついな」


「嬉しい?如何して?」


「お前に会えたこと、いや。この世界に来れたことが、かな?」


早く照と合流しなければ、面白いことを逃してしまう。俺の頭はそれでいっぱいだった。


「あははっ、面白いね君。気に入ったよ」


そう言いながらセルマは俺に近づいてくる。


「そりゃどうも、それじゃ俺帰るから」


そう言いながら踵を返そうとしてーー


「帰れるの?」


「うぐっ」


ーーセルマの言葉に足を止められる。


そうだ…俺この森で迷ってるんだった…。


「帰してあげてもいいよ?」


悩んでる俺にセルマがそんな事を言い出した。


「本当か?」


「ただし、条件があるけどね」


……嫌な予感しかしない。


「……どんな条件だよ」


「僕と契約して欲しいんだ」


「契約?」


俺の言葉にセルマはニコリと笑顔を見せる。


「そう。僕ら魔霊は契約者がいないと外に出歩けないんだよ。だから僕と契約して僕を連れてって欲しいんだ」


「いいけど…俺にデメリットはないのか?」


「うーん、むしろメリットしかないんじゃないかな?」


どゆこと?


「僕ら魔霊は契約する時力を上げる代わりに対価を要求するんだよ。魔霊契約すると聖霊契約出来なくなるけど、君は聖霊と契約してないみたいだし聖霊契約が解除されることもない。僕が求める対価は面白いこと。君についていけば面白いことがいっぱいあるんでしょ?」


そう言いながら俺の周りをくるくると回り始めるセルマ。うーん、聖霊とか気になる単語はあるけど俺が契約できるかわからんし、まぁいいか。


「よし、良いぞ」


「やったね!それじゃあ契約だ!」


俺はセルマと契約することにしたのだった。

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