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父の声

 遠くからサイレンが鳴り響いた時、あたしは森の中でミルミルの実を摘んでいた。

『ミハル!!  ミハル!!』

 父の声がどこからか聞こえてくる。

 姿は見えない。

 見えるはずはない。

 だって声は首から下げた携帯から鳴り響いていたのだから。

「パパ。このサイレンはなに?」

『緊急事態だ。今、どこだ? 誰かと一緒か?』

 あたしは後ろを振り向いた。小さな男の子が不安そうにあたしを見ている。

「ケイちゃんと一緒に森の中よ」

『すぐにケイちゃんを連れて戻れ』

「家に?」

『家じゃない。トンネルへ行くんだ。途中で誰かの車に出会ったら乗せてもらえ』

「パパは?」

『パパは後から行く』

「どうして?」

『パパはエレベーターに閉じ込められた人達を助けなきゃならない』

「じゃあ、あたしパパを待ってる」

『だめだ。すぐに行きなさい。トンネルがもうすぐ崩れる。急げ』

 崩れる? トンネルが? あたしは後ろを振り返り四つ年下の男の子の手を握った。

「ケイちゃん。急ぐよ」

 ケイちゃんはきょとんとした顔で。

「どうして?」

「トンネルが崩れるのよ」

 あれ? トンネルが崩れる? それって随分昔にあった事じゃ?

 あれ? ケイちゃんが何でこんな小さいままなの?

 あれ? なんでパパが?

 二〇九〇年にカペラ系第四惑星に取り残されたパパの声が……ああそうか。 

 これは……

 景色が急速に薄れていく。

 まって! あたしはまだ、ここにいたい。

 でも、駄目だ。あたしはこれが夢だと気がついてしまったから。

 それに、眠る前のあたしはかなりヤバイ状態だった。あまりノンビリと寝ては入られないはず。

寝てる場合じゃないぞ

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