目標と冒険者の条件
授業後の話です。
授業が終わったあと、俺たちはいつもの遊び場でのんびりしていた。
「うぅ~、家に帰りたくないぃぃ~…親父の訓練で殺されるぅ~」
・・・レオンがさっき言われた内容に泣き言を言ってる。でも確かにあの量はキツイ。
「まぁ、その、なんだ…レオン。がんばれ。」
「おう・・・。」
少しの沈黙の後、俺は疑問に思ってたことを聞いてみた
「なぁ?レオンはあんなに親父さんに鍛えてもらってるけど、何になるんだ?親父さんみたく騎士でも目指してるのか?」
「ん?あぁ、俺はな!物語の勇者に憧れてるんだっ!!そんで、親父に”勇者みたくバンバン魔物を倒して、困ってる人たちを助けたい”って言ったら
「それでこそ儂の息子だっ!はっはっは!」って言ってくれて、次の日から訓練をつけてくれるようになったんだ。」
レオンがさっきまでの憂鬱といった感じを振り払って答えてくれた。
それに”勇者”か。確か上位世界の者たちって神は言ってたっけ。
「そうだったのか。じゃあレオンは将来村を出てくのか?」
アイリスもリリィも気になるのか、レオンに顔を向けた。
「…まだわかんない。村の人も大切だし、強くなって親父みたくみんな守っていきたいとも思うけど、きっと村の外にはいっぱい困ってる人がいて、俺が助けられる人たちもいると思うんだ。まだ、勇者たちみたく強くないけどな」
レオンが苦笑しながらもそう答え 続けて俺にも訊いてきた
「ノルンはどうなんだよ?今日親父に魔物のこととか訊いてたけど何になるんだ?」
「俺は、世界を見てみたいと思ってる。だから冒険者になって旅でもしようかと思ってな。
…それでレオンも一緒に冒険者にならないか誘おうかと思ったんだが「いいぞ!」・・・は?」
「だから、俺もノルンと一緒に冒険者になる!」
「いや、勇者に憧れてるんだろう?冒険者は勇者じゃないぞ?俺はありがたいが」
「冒険者をやってても困っている人を助けられるだろ!それに”本当の勇者”は周りから認められて勇者って呼ばれるって親父が言ってたしな。
だから冒険者でも”勇者”になれる!」
そう笑顔で告げるレオンに俺は感謝した
「そうか・・・じゃあ、俺と冒険者になってくれレオン!」 「あぁ!よろしくなノルン!」
そこにアイリスが宣言するような大きな声で
「あ、アタシも!アタシも冒険者を目指してる!だからアタシも仲間に入れてっ!!」
と告げてきて吃驚した。だが、仲間が増えた喜びもあった
「……みんなが、冒険者…なるなら、私も、なる」
リリィがそんなこと言うとは…。するとレオンが、自分の将来をそんな理由で決めないほうが良いと諭すようにつげるが
「……だって…みんなと、離れたく、ない…。」
と、獣人族の証の耳としっぽを寝かせて、シュンとしながら言われると断り辛い
それにリリィが決めたなら、仲間はずれにはしない。
「わかった。これからも二人ともヨロシクな。
この4人で冒険者になろう!」
リリィはパァっと笑顔を咲かせながら頷き
アイリスも当然っ!みたいな表情をしている
レオンも気合をいれている
「じゃあ明日から冒険者になるための訓練だな!うおぉぉ!燃えるぜ!」
レオンの言葉を聞きながら、おれは両親にどう説明しようかと考えていた
「とりあえずレオンはいいにしても、俺は親に冒険者になることをまだ言ってないんだよ…。絶対説得はするけどな。アイリスたちはもう言ってあるのか?」
「えっ!?ま、まだ、、、かな。」「……私も、まだ」
「あはは、なら先に説得しないとな~。
今日はもう帰って、各々説得ってことで解散するか」
気づいたらもう夕方だ。
「おう!わかったぜ。俺も親父に冒険者になるって伝えないと!
じゃあな、ノルン、アイリス、リリィ!」
「またな。」 「じゃあね」 「……バイバイ」
あれは絶対に訓練があることを忘れてるな。
「俺たちも帰るか。じゃあな二人とも。」 「じゃあねノルン!」 「……うん。バイバイ」
さて、なんて言おう……。
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結局俺は、許可がでるまで頼み込むのを決め、正直に冒険者を目指すことを伝えることにした
「ただいまー」
「おかえりなさいノルン。今日は早かったわね
もうすぐお夕飯ができるから、できたら呼ぶわね♪」
「わかった。」
まだ時間かかりそうだから、少し寝るか、、、
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「ノルーン、ご飯だよー。お母さんの料理が冷めちゃうから、早くおいで」
部屋の外から父さんのそんな声が聞こえ、起きた。
「今いくー」
食堂につくと二人とも席について待っててくれたようだ
今日は自家製野菜たっぷり入ったシチューとパンがメインだ。
この世界のパンは柔らかいのが主流だ。保存食などの硬いパンもあるが、食卓にあがるのは柔らかいものが殆どだ。
「さて、じゃあ食べようか」
三人で食事の前のお祈りをしてから、食べ始めた
「ノルン、今日はどんなことを習ってきたんだい?」
父さんに訊かれて今日あったことを話し 本題を切り出した
「今日、レオンたちと将来のことを話したんだ。それで、俺は冒険者になりたいんだ!だから、、、冒険者になることを認めてくれますか?」
真面目な顔つきで父さんに尋ねられた
「・・・ノルンは、冒険者が危険なことは理解してるかい?生半可な覚悟や実力では魔物に殺されると。魔物以外にも危険があると。」
殺されるかもしれないと想像して、少し怖かったがなるべく冷静に答えた。
「わかってるし理解している。」
「じゃあ、それを理解してまで冒険者になりたいのは何故だい?」
「俺は世界を見てみたい。村での暮らしは勿論好きだ。でもそれ以上に外の世界を知りたいんだ。
本や村にくる行商人の話だけじゃなくて、自分の目で見て世界を感じたいと思ったんだ」
父さんは目を閉じながら考え、母さんは微笑みながら俺たちを見つめていた
そして、体感的に数分位に感じた沈黙を破る父さんの声が聞こえた。
「・・・わかった。いいよ、ノルン。冒険者になることを許してあげる」
「っ!!ありがとう!父さん「だけど条件がある」、、、何?」
「僕と母さんから生き残るために必要な”力”を教える。でもそれは、僕やエリンが培ったモノや僕らの親などから代々受け継いできたモノも含まれる。だから、たとえノルン相手でも僕たちは容赦なく叩き込んで教える。
それと今ノルンは10歳だ。14歳のになるまでこれから毎日稽古をつける。一回でも弱音を吐いた時点でその後一切の稽古はつけないし、冒険者になることの許可も取り消す。
この条件が飲めないなら、冒険者をあきらめるんだ。」
飲み込まれそうなほど綺麗な紅い瞳に見られながらそう問われた俺は
瞳を逸らさずに断言した
「俺にすべてを教えてください。お願いします」
そしたら今までの緊張感が嘘のように霧散し、両親は笑みを浮かべながら頷いてくれたのだった
「じゃあ、これからビシビシいくから覚悟してね!
僕はノルンに剣技と僕ら吸血鬼の技術・魔法を教えるよ」
「あら、じゃあ私からは魔法を教えてあげるわ♪私のとっておきの魔法をおぼえられるかしらね♪?
ノルンは視た感じだと魔力が多そうだし、あとで一緒に魔法適正を調べましょうね!」
「うん!父さん、母さん、よろしくお願いします!」
「じゃあ、これからのことが決まったことだし食事を再開しようか。
エリンが心を込めて作ってくれた料理が冷めてしまっては勿体ないからね!」
「ふふっ。たくさん作ったからいっぱい食べてね♪」
無事に俺は冒険者になることを許可がもらえた
・・・他のみんなは大丈夫だったか気になったのだった
ノルンは無事に許可がもらえてよかったですね!
ちなみに、ギルとエリンは元冒険者です。
現在、ギルは村で鍛冶屋をやってます エリンは基本家の仕事をやってます ノルンはエリンの手伝いです