ノルン
最初はノルンの母視点です。
途中からノルン視点に変わります。※ノルン視点は生まれてから10年後です。
※追記・文章を少し付け足しました。
「エリンさん!生まれたよっ!元気な男の子だっ!」
よかった…。早く抱いてあげたい。
それがこの子を産んで心の底から思ったことだった。
「ほらっ、エリンさん。」
子供を渡してくれたのは仲のいい村の友人で、私より1か月くらい早く女の子を生んだサマンサだ。
「ありがとうサマンサ。あぁ!かわいいわね「エリンッ、生まれたのかい!!?」ギル、そんなに大きな 声を出すとこの子がびっくりしてしまうわ。」
「あ、あぁごめんよ…。エリン、僕にも抱かせてくれないかい?」
「えぇ。ふふっ私たちの子よ」
無事に生まれてきてくれた喜びから思わず笑みがこぼれてしまうわね
「男の子かっ!なら名前はノルンの方だな!」
「そうね。」
男の子に生まれてきてよかったと思う。男の子が欲しかったってのもあるし
ノルンは私が考えた名前で、女の子の時のための名前も考えていたけど、そっちの方はギルが名付けたいと譲ってくれなかったのだ。
・・・お世辞にもギルのネーミングセンスは良いとは思えないから。
「この子のためにも、より頑張らないと!」
「えぇ。もちろんよ。これから育児で大変になるけど、それもあっという間に過ぎ去ってしまうものだから。」
そう、子供が私たちの腕の中に居てくれるのもほんの一瞬。いつの間にか羽ばたいていってしまうから。一瞬一瞬を大切に・・・。
「僕も手伝うよ。」
「ふふっ。ありがとう。あなた」
お互いに甘さを含んだ声。この人に出会えてよかった、会えなければこの幸せは私に訪れることは無かったろうし。
「将来ノルンは何になるだろうね。僕たちみたく冒険者になっているのか、それとも商人とかになるのか な?それとも国とかに仕える騎士とか大臣とかになってるかな?
嗚呼。もう将来が楽しみだ!」
待ちきれないといった表情のギルに苦笑しながらも告げる
「まだ気が早いわよぉ。……私はノルンがお嫁さんを紹介しにくるのが楽しみだわ♪」
「あんたたち二人とも気がはやいよ。まったく。」
そういって呆れた目でサマンサが私たちをみたのだった。
サマンサが居ることを忘れてたわ。ふふっ。
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「ノルーン!ちょっと手伝ってーー」
「わかったー。いま行くよー母さん」
俺は手伝いに向かうために畑の雑草抜きを中断して立ち上がろうとしたとき、急に鈍い頭痛がしたと思ったら身体の力が抜けて、そのまま意識がゆっくりと落ちていくのを感じた…
「ノル--っ!--ン!---ッ!!--」
暗くなっていく意識の中で誰かの声が聞こえた。
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「---っつぅ、…ここは、俺の部屋か?なんで…」
そこで気を失う前のことを思い出し、そしてあの自称・神のことも思い出した。
「そうか、思い出したっ!記憶が戻ったのか…不思議な感覚だな。篁幸雄として日本で暮らしていたときの 記憶と、ノルンとしてこの世界での暮らしの記憶が混在してるのは。」
取り敢えず父さんと母さんに会いに行くか。
父さんと母さんといえば、今まで気にしてなかったが見た目は凄く若い。
俺は今10歳だが、覚えている限りで二人とも全然老いてない。まぁ神の言ってた長命種族なんだろう。
二人は他種族だから俺はハーフってことになる。髪の色と瞳の色は父親譲りで
顔はどっちかといったら母親に似ているらしい。そのほか細かいところは母親譲りだ。たとえば、爪が綺麗な形で整っていたり。
確か母さんはハイエルフって種族って言ってたのは覚えているが
その時の記憶が戻る前の俺は、純粋に年齢を訊いたが・・・思い出してみれば笑いながら「秘密よ♪それと女性に年齢を訊いてはダぁ~メっ!」と頭を撫でられたが
目が全く笑ってなかった…。
父さんの種族を訊いたら吸血鬼と言ってた。・・・この世界の吸血鬼は日光に当たったり、ニンニクもどきとかの強烈な匂いを嗅いでも大丈夫のようだ。ちゃんと鏡に映るし、血を吸っている所も見たことないから所詮は地球での話か。
それに二人とも美形だ。
母さんはエメラルドグリーンの綺麗なフワフワとした長髪で毛先に少し癖がついてる。瞳の色は濃い青色で、性格もおっとりしてるから人ウケも良いので人気者だ。さらに左目側に泣きぼくろまで有るから色っぽさもある・・・
”天は二物を与えず”とか聞いたことあるが、あの神、二物どころか三つも四つも一人に与えてるじゃないか!!
父さんは父さんで不潔に思われない程度の髪の長さで、これまたキレイに光が反射する銀髪で、吸血鬼特有だという紅い瞳をしているイケメン。
……そんなことを考えながら両親を探す俺。
多分、いるとしたら寝室か大部屋のどっちかだろう。もう夜みたいだな
何時かは分からないが結構遅い時間だと思う。
大部屋を覘くと母さんがいた、、、。けども、大部屋のソファにもたれるように寝ている。それだと風邪ひくぞ?毛布をかけてあげて、起こすか迷ったが起こすことに決めた。
「母さん。おーい、かあさん。」
「ん、んぅぅ、?。ノルンっ!!よかった!いきなりノルンが倒れてるって聞いて吃驚しちゃって、
お医者様に診てもらっても原因がわからないって言われて!
そ、それよりも大丈夫?!どこか具合が悪かったの?もう大丈夫なの?
えっと、それから、……」
「お、落ち着いて母さん。もう大丈夫だから。それと心配かけてごめん…。」
すると母さんは安心したように、目元を緩め優しい笑みをうかべながら
「そう。良かったわぁ。」
そう言って軽く抱きしめてくれたのだった。
ふと父さんが見えなくて聞いてみたら
「あー、お医者様のところに行って原因を調べてると思うわ。流石にもう夜も遅いから帰ってくるだろう けど…。「……ただいま。」あら丁度ね。おかえりなさいギル。」
今まで聞いたことがないくらい暗い声で父さんが帰ってきた。
「だめだ。村の図書館にまで探しに行ったけど、原因がわからなかった…。」
「父さん、心配かけてごめん。もうこの通り大丈夫だから元気出して!」
「ノルンっ!あぁ良かった、、、原因がわからないって言われた時は本当に焦ったんだよ…。でも無事でいてくれて良かった。」
自分で原因がわかっているが、原因を話すかどうか迷う。二人が本当に心配してくれていたのはわかっているのだが・・・
前世の記憶を取り戻した俺を、篁幸雄という私の存在が記憶が彼らに受け入れてもらえるだろうか?気味が悪いと思われて拒絶されないだろうか?
「・・・あっそうだわ。ノルン。明日アイリスちゃんにお礼を言いなさいね。倒れてるあなたを見つけて 知らせてくれたのはアイリスちゃんなんだから。」
「アイリスが?わかった。」
意識が落ちる前の声はアイリスだったのか。
アイリスとは、同じこの村で生まれた同い年の女の子だ。それにあと二人同い年の仲がいい友人たちが居る。
「取り敢えずノルン。今日はもう寝なさい。倒れていたことだし、身体の調子が万全じゃないのだろう。 僕もつかれたしね。」
「わかったよ父さん。それじゃあ父さん母さん、おやすみなさい。」
「ええ。しっかり休むのよ?おやすみノルン」 「ノルンおやすみ」
二人の返事を聞いてから部屋へと戻りベッドに寝っ転がったら、睡魔はすぐに俺を深い眠りへと誘った。
ノルンの一人称が私から俺になっていますが、これは記憶を取り戻す前のノルンが使っていたときの名残です。
ギル父さんはネーミングセンスがないみたいですね。笑
あとやっと他の子を名前だけでも出せました