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来世は異世界で  作者: 三日月
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ノア2

どぞ!


「……というわけで、ノアと契約したんだ…。」


俺は今、両親にノアの事と契約に至った経緯を説明していた。

吃驚したのが、家に着くなり父さんが「ノルンの身体に変な魔力を感じる」と言ってきたため、話すタイミングが早くなったことだ。


そして説明をし終わったとき、父さんは瞳を閉じて考え込み、母さんはいつも通り微笑んでいた。…ただし目は除く。


そんな両親を前にノアは相変わらずのニコニコ顔だ。



「ご紹介に与りました”ノア”と申します。元天使・現悪魔の堕天使です!」



しかも自己紹介までしたよ。

…悪魔ってなると、やっぱりこの世界でも悪いイメージがあるのかな?



そこに、黙ってた父さんが口を開いた。


「ノア君はノルンをどう思っているんだい?

僕は別に召喚獣が悪魔だろうと天使だろうと気にはしないけど、もしノルンむすこを傷つけるようなら、それ相応の仕打ちは受けてもらうよ?


…あぁ、嘘はつかないでね。すぐにわかるから。」


軽く殺気を出しながら告げる父さんに、ノアは表情を崩さずに

「ノルン様のことは私の主人と思っておりますよ。ノルン様は私に仲間を望まれましたが。もちろん、私も仲間と思っていますがね。」



「なんで主人なんだい?」



「ん~、なんで?と申されましても・・・ただ私がそうしたかったから、ですかね。

私は私の初めての契約者を主人と定めようと思ってたんですよ。

もちろん、気に入らなければ契約なんてしません。」



父さんは殺気を消して続きを問う



「ノルンのどこを気に入ったんだい?主人とするからには、相当基準は厳しいだろ?

だけど軽く見積もっても、実力とかはノアの方がまだ・・上に思える。君ほどの実力者なら、主人候補が腐る程選べるだろう。」



「そうですね、主に二つ。

まず一つ目が魔力ですかね。光と闇のバランスが心地良い感じがしたので。

二つ目に魂ですね。」



無言で父さんが続きを促す



「私はこれでも、堕天するまでは神の近くで働いてたのですよ。その仕事の合間に私は様々なモノを見てきました。魂もそのうちの一つです。


十個の魂があると十個ともすべて違うんです。その者が歩んだ生によって魂は装飾されてくんですが、死ぬとその装飾がリセットされる。

そしてまた生を受け装飾されてく。


ですが、ノルン様の魂は少し変わっていましてね。それが面白いと思えたので契約したのですよ。」



「…それはノルンに何か悪影響はあるのかい?」


緊張した感じで訊く父さんにノアは軽く首を横に振った


「いえいえ。その程度では問題はありません。ただ、私が見たことない事例だったので興味が沸いただけです。

それに何か悪影響があるなら、まず”神”が手を加え直します。」


「そうかい。問題ないのならいい。」

ほっとしたようにつぶやく父さんと、同じく横で様子を窺ってた母さんは力を抜いた。

そして俺に顔を向けた



「ノルン自身に思い当たることはあるかい?」



あるといえば、ある。というか一つしかない。確実に前世の記憶が装飾として魂にくっついてることだろう。



「……あるには、ある。だけど、それを言うのはまだ待ってほしい。」


二人は少しの沈黙の後に、優しく俺の頭を撫でながら「時がきたら教えてほしい。」とだけ言ってくれた。


たかだか前世の記憶のことだけなのだが、もしこの記憶がなかったらノルンは今の俺と違った人物になったに違いない。それは父さんと母さんの子を俺が乗っ取ったことにならないだろうか?

そしてそれに対する二人の反応を見るのが怖かった。


だが、それでもいつかは言おうと思ってた。自分の気持ちに決着をつける意味でも必要だと思う。なるべく考えないようにしてたけど、旅立つ前には必ず…。



「ノルン、あんまり深く考え込まないでいいのよ?私たちはどんなことを言われても大丈夫だから。ギルも私も色んな出来事に出会ってきたんだから!」


気分が落ちそうになったところで母さんが救ってくれた。そんな母さんに頷き意識を切り替えた。



「大丈夫ですかノルン様?」

本気で俺の顔色を心配してくるノアに苦笑しつつも、様付けがむず痒くて帝政を求める



「様はつけなくていいいよ、ノア。」


「いえ、そういうわけには…」


幾許かの問答の末に、慣れたら様付けを止めるという結論に至った。

本当に悪魔なのか疑いたくなるような誠実さを持って俺には接してくる。しかも、意外と頑固だ。



「そういえば、僕からノア君に聞きたいことがあるんだ。」


「?なんでしょう?答えられる範囲でなら。」


「なんで堕天したんだい?悪魔に堕ちるなんてそうそうないだろ?」



「あー、それは天使に厭きたからです。それまでは無欲に仕事に忠実にと天使の王道をただただ歩んでいました。しかし、きっかけは忘れましたが、私の中に欲が生まれたのです。その欲が食欲なのか色欲なのか強欲なのか、様々な欲がありますがどれだったかは忘れました。


ですが、欲を知ってしまった後、私は天使でいることが酷く苦痛になってきたのです。なので神に理由を告げて、それまでの役職などもすべて後任の天使に任せて悪魔に堕ちました。

天使から悪魔になると堕天使と呼ばれます。生粋の悪魔にはなれませんが一応悪魔の分類です。


それからは生まれた欲を満たすために行動したりしましたが、それも最近は減っていきました。その後、召喚魔法の呼び掛けに応え、今に至ります。」



「ふーん。そうか。」


「おや?ずいぶん冷たい感想ですね」



「いやね、僕は前にも堕天使にあったことがあって、そいつも似たような事を言っててね。

息があったから暫く行動を共にしたこともあるんだけど、置手紙を残していきなり消えたからそれ以降会ってないんだ。」



どうしてるかなぁ、とつぶやきながら虚空を見てる父さんの瞳に、懐かしさと少しの寂しさが浮かんでいた。


「あなたにそんな人いたの?私、初耳なんだけど?」


少し嫉妬してるようなムスッとした母さんに苦く笑いかけながら父さんは

「ものすごく気が合うヤツでさ、名前も似てたからすぐ意気投合しちゃったんだ」

と話した



「アルバートっていうんだけどね、最初はびっくりしたよ。目の前にいきなり羽の生えた人間が居たんだもん」


笑いながら話す父さんが出した

名前を聞いた瞬間、ノアが目をパチクリしてから聞きなおしていた

「アルバート、ですか?」



「うん?そうだよ」



「…それ多分、私が堕天使になってから面倒みてくれた方です。数少ない堕天使の中にアルバートという名前は彼しかいません」



父さんの顔が驚愕に満ちていた

「彼は元気だったかい?」



「ええ。よく旅の話や悪魔についての話をしてくれましたよ。」



「そうかい!それじゃあ…………」



それから暫く、父さんのノアに対する質問責めと昔話が続いた…。

俺と母さんは先に夕飯を食べ始めて、途中ノアから目線で助けを求められたが、旧友の事を聞きたい父さんの気持ちを優先させて、心で謝りながらもノアの助けを拒否した。



後日ノアが、「まさか休憩なしで、次の日になるまで話をされるとは思いませんでした」とため息をしながら愚痴ってきたのを俺は忘れない。




流石に村での話が長いので、あと数話で旅に出します

次は一気に飛んで、旅立つちょっと前です。

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