第6話
「おまわりさんが居るから、もう大丈夫だよ。」
「うん。」
交番に、入ろうとすると人が出てきた。
目が合う。
よく知っている顔だ。
「遥!」
「健志!」
お互いに、驚いた顔をした。
なんで、こんな所に?
「交番で、何やってるんだ?」
「迷子を連れて来たやんわ。健志こそ何やってるん?」
「えっ?俺も迷子連れてきたんだけど。」
ハルカちゃんを見ると、きょとんってしている。
2人でやり取りしていると、交番から女の人と男の子が出てきた。
「ママ!お兄ちゃん!」
ハルカちゃんが、叫ぶとお母さんに駆け寄った。
「ハルカ。」お母さんが、ハルカちゃんを、抱きしめた。
「ハルカ心配したんだから。大丈夫だった?」
「うん。このお兄ちゃんが、一緒だったから大丈夫だったよ。」
ハルカちゃんが、俺を見る。
お母さんが、頭を下げた。
俺も、あわてて頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました。」
お母さんが、お礼を言ってる横で、
お兄ちゃんと、ハルカちゃんが遊んでた。
微笑ましく思う。
よかったね。ハルカちゃん。
遊んでいる子供達に、お母さんが言った。
「ほら、タケシとハルカもお礼しなさい。」
タケシだって?
俺と遥は顔を見合わせると笑ってしまった。
そんな俺達を、お母さんと、子供達が不思議そうに見ていた。
警官に事情を聞いてみると、
お母さんの仕事が遅くなって、
家に急いで帰ったが、子供達がいなくなっていた。
捜したけれど見つからない。
困って交番に行ったら、遥とタケシ君が居た。
遥が、交番から出ようとしたら、
ハルカちゃんを連れた俺が来たって訳だ。
「ママと、お兄ちゃんに会えて良かったね。」
「うん。あのね、」
ハルカちゃんが、真剣な顔をしている。
「何?」
「もう、ケンカしちゃダメだよ。」
俺は、笑って「わかったよ。」と、
ハルカちゃんの頭を撫でた。
俺と遥は交番を出て歩き出す。
子供達が、手を振ってきた。
俺達も、手を振り返した。
「バイバイ。」
二人並んで、歩く。
俺が、今日の事を謝ろうとすると、
遥が口を開いた。
「タケシ君にハルカちゃんやって、思わず笑ってしもうた。」
「そうだな。同じ名前だもんな。」
本当に、妙な偶然だ。
「お母さん見つかって良かったな。」
「そやな。良かったわ。」
遥が笑顔で答える。
俺の好きな笑顔。
遥の、手を握る。
「記念日忘れて、悪かったな。」
遥は、何も言わずに無言で歩く。
まだ、怒ってるんだろか?
雅美の事も謝らないといけないな。
「雅美は、会社の同僚なんだ。昨日、落ち込んでたから、慰めてあげただけなんだ。
でも、まさかあんなメール送ってくるなんて、思っても見なかった。」
携帯を取り出してメールを打った。
『ありがとう。でも、俺には大切な彼女がいる。ごめん。』
メールの文面を、遥に見せると、雅美に送った。
正直な気持ち。
遥は、とても大切な彼女。
今日の出来事で、改めて思いしめされた。
遥が、大きくため息をついた。
「しゃ〜ないわ。許したる。優しい健志君やもんな。」
「本当に、ごめんな。」
「わかったって。でも、気いつけや。うちも、もてるんやで。」
遥が、ポケットから何かを取り出し手に握った。
「これ、さっきタケシ君に口説かれて、プレゼント貰ったわ。」
遥が、俺の目の前で手を広げた。
手の平には、青いビー玉が乗っていた。
「遥も、貰ったのか。」
「えっ?」
驚いた顔で、俺を見た。
ポケットから、赤いビー玉を取り出し遥に見せた。
「俺も、好きな子にあげてくれって、ハルカちゃんから貰ったぜ。」
遥の手の平に、赤いビー玉を乗せた。
赤と青、2つのビー玉が、手の平の上で並ぶ。
2人で、ビー玉を見つめた。
遥が、口を開いた。
「そっか、ハルカちゃんが、うちにってくれたんか。」
そう言って、俺に青いビー玉を渡した。
「赤いビー玉は、うちが貰うわ。青いビー玉は、健志にやる。
だって、他の男からプレゼント貰ったらあかんやろ?」
「そうだな。遥が他の男に口説かれないように、今度ペアリング買いに行こうな。」
「そやな。」
色々あった1日だった。
遥とケンカして、同じ名前の迷子に出会って、
交番で遥に会って、遥と仲直りして。
隣を見ると、遥がうれしそうに歩いている。
幸せだと思った。
今から行きたい場所がある。
遥に問いかける。
「今からどうする?俺、行きたい場所があるんだけど。」
「うちも、行きたい場所があるんやけど。」
2人、口をそろえて言った。
「公園。」
手を繋ぎ歩き出す。
お互いの手に、赤と青のビー玉を握り締めて。
最後まで、読んでいただきありがとうございました。
自己満足な作品ですけど、感想、ご意見などいただけると、うれしです。