74話 なつかしい味
雪がうっすらと降る中、ミレイと連れ立ってノース村に向かう。
今でこそ皮の足袋に下駄もどきを履いているが、今まで靴も無い状態で雪の中を歩いていたと考えると、何故大丈夫だったのか不思議に思う。
道々食べれるものを探して摘んでいくが、さすがに冬ではあまり無い。
干し肉などある程度蓄えはあるが、心細くもある。
向こうから何か冬に食べられる物の種でも持ってこようか。
ミレイの手には出来立てのタオルがある。
糸は太く、ゴワゴワした感じではあるが初めての布だ。
ミレイはそのタオルで生まれて来る赤ちゃんを包むんだと嬉しそうに言っていた。
一つでは足りないだろうと作る為の材料は持たされている。
待っている間にがんばって作り続けるつもりのようだ。
その姿を見て他の村人も作り出してくれるとありがたい。
「では、ミレイの事よろしくお願いします、ミリヤさん。」
「気をつけて。ちゃんと帰ってきてくださいよ?」
「もちろんです。僕も早く生まれて来る子を見たいですよ。」
「お願いしますよ?私のお父さんはそう言って出かけて帰ってこなかったんです。生まれて来る子にそんな寂しい思いをさせないでくださいね?」
「それ、私のおじいちゃんの事? 私のお父さんはどうなの?死んじゃったって思ってたけど、もしかしてそんな風に居なくなっちゃった訳じゃないよね?」
「あんたのお父さんは違うわよ。狩りに行って、帰ってこなかったの。血がいっぱいあった所があったらしいから襲われちゃったんでしょうね。
まぁ、帰ってきてくれなかったのは一緒なんだけどね。」
「お父さんの事、いっぱい話して?」
「じゃ、僕はこれで出かけますね。二人とも元気でいてくださいね。」
「いってらっしゃい。」
「帰ってくるの待ってるね。」
これからが戦いだ。
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扉をくぐって元の世界。本当に久しぶりだ。
明日顔を出すとメールをしておく。 これから向かうと夜になるだろうから、どこかホテルで泊まって行こう。 予約もしておく。
シャワーを浴びて身支度を整え、車に乗り込む。
感覚が追いつかない。ゆっくり行ったほうがいいな。事故でも起こして帰れなくなりましたでは笑えない。
部屋に荷物を入れて食事に出かける。
何を食べても、美味しいのだが味付けが濃い。
随分と変わったものだ。