61話 生まれちゃった?
「まずはミレイ、落ち着こうよ。」
「そうですね、落ち着きましょう。」
「じゃ、まずはただいま、ミレイ。遅くなってごめんね。」
「はい。おかえりなさい、ケイさん。本当に遅かったです。ずっごく危ない所だって聞いてたから、すっごく心配してたんですよ?」
抱き寄せて頭を撫でる。そうすると背中に手を回してくれた。
そしてそれを見ている自分そっくりな精霊。温かみのある笑顔だ。
「ごめんね、そしてありがとう。でも、結局草原の、あそこの向こうには行かなかったんだ。ていうか、行けなかったんだ。」
「え、行けなかったんですか?じゃ、どうしてたんですか?」
「あそこの先ってさ、崖になってたんだ。だから、降りれそうなところを探してあるいてたら、ぐるっと回って戻ってきちゃったんだ。」
分かりやすく土で形を作って説明した。
「こんな風になってるんですか。じゃ、崖から落ちちゃうから危ないって事だったんですね。」
「それもあるだろうけど、崖の下にとっても強そうなのがいっぱい居たからね。確かに向こうには行かない方がいいと思うよ。そのうち行ってみたいとも思うけどね。」
「いつか行っちゃうんですか?」
「いつかは行ってみたいね。ま、どうやって行くかは分からないんだけどね。」
チカラを使って降りる道を作ってしまえば降りれるけど、今は言わないほうがいいだろう。まだ暫くは行っている暇は無いだろうから。
「それでミレイ、僕が居ない間にいったい何があったの?」
「ケイさんが行っちゃってから、暫くは大丈夫だって自分に言い聞かせながら生活してたんですけど、3日たっても10日たっても戻ってきてくれないじゃないですか。
だから落ち着かなくて、狩りに行っても狩りなんて出来なくて、襲われちゃったりしましたし、危ないから家に居なさいってみんなが言ってくれたから家に居たんです。
それでも落ち着かなくて、ケイさん帰ってきてくださいってずっと考えてたんですよ。
そしたら今日、この子が声を掛けてきたんです。」
「いっぱい心配してくれたんだね、ありがとう。ごめんね?で、君はどこからきたの?」
「さあ?僕は気がついたらミレイさんの目の前に居たんだ。それまでどこに居たのか分からないよ。」
そう言ってミレイの目の前に行った。本当に目の前、いうか胸の前。触れるか触れないかぎりぎりの所だ。
「そうそう、その時のミレイさんの腕、その時の様にしてみて。」
そう言ってミレイの腕をぽんぽんと叩く。ミレイはお祈りをする時のように手を組んだ。組んだ腕の中にすっぽりと納まるように精霊は居た。
これは・・・ミレイのお祈りによって精霊が生まれたって事だろうか?
もはや何でもありですね。
流石にこんなのは西側の魔術でも聞いたことが無い。