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陰陽師の憂い  作者: 高木 圭
三章 発見
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51話 深夜の内緒話

宴という名のお食事会の後、真っ暗の中村の人はそれぞれの家に帰っていった。

そして当然ながら、ここに自分の家など無いので自分の寝る所が無い。


村はずれまで行って軽く穴を掘って寝床とした。

あまり(こだわ)って作る訳にもいかないので、屋根は無し。

代わりに細かくした薪に埋まるようにして眠る。割り箸に埋もれている様な感じになった。


眠りに落ちかけた所にお水様がやってきて声をかけてきた。


「あなたって不思議な人なのね。」


「お水様は眠らないの?」


「眠らないわ。眠くならないもの。多分今までもそうだったんだと思う。」


「ふーん。じゃ、夜は一人なんだね。今まではどんな風に過ごしてたんだろうね。」


「どうだったのかしらね。それよりも、これからどう過ごしていくかの方が分からないわ。」


「寂しいって思う?」


「そうね。ねぇ、火を出してくれない?」


眠らせてはもらえないようだ。諦めて体を起こして火を出す。


「不思議よね。何故こんなことができるの?」


そう言いながら火にじゃれてくる。


「なんでだろうね。でも、できるのは僕だけじゃないよ?この山の反対にある村にもできる人がいるんだ。僕はそこから来たんだ。」


「なぜ来たの?」


「いろんなものが見てみたかったからかな。」


「そうなの。私も付いて行ってもいいかしら?私もいろいろ見てみたい。」


「お水様が居なくなっちゃったら村の人が困るよ。それにさ、お水様はここに居ることに何か意味があるんじゃない?」


「ここに居る意味?」


「そう。この村ってさ、お水様が居たからできたんだと思うんだ。なら、お水様は村ができる前からここに居た事になるじゃない?

ただ居ただけなのかもしれないけど、元々ここには水が無かったのにここに居たなんて不思議だもん。」


「そうなのかな?でも、確かにみんなの事を考えたらここに居ない訳にはいかないから、ここに居る意味が有っても無くても動けないんだけどね。」


「お水様は優しいからね。みんなの事を考えない訳にはいかなそうだもん。」


「優しい?」


「そうだよ。だってさ、倒れちゃうまでみんなの為にがんばってたじゃない?これは優しさだよね。」


「そっか。ありがとう。

ねぇ、私に名前付けてくれない?あなたにはお水様って呼ばれたくないの。」


「どうしたの? いいけどさ。

名前ね。名前なまえ・・・ミーシャでどうかな?」


「ミーシャ。ありがとう。この名前、誰にも教えないでね?この名前で呼んでいいのはあなただけだから。」


「それは光栄だね。でも、他に人が居る時はどうする?」


「それは・・・その時は”ねえ”とか”ちょっと”とか呼んでくれればいいわ。」


「それは嫌だなぁ。じゃ、ウィンディーネって呼ばせてもらうよ。今は多分だけどお水様と呼ばれてた時とは違っちゃってるから、違う名前で呼ぶよ。」


「そうなの? ちょっとややこしくなる気もするけど・・・いいわ、そうして。それじゃ、もう眠りなさい。火、ありがとね。」


おやすみ。

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