38話 でちゃったよ・・・
川を挟んだ向こう側、なだらかな上り坂になっている草原。
たどり着くのにはまず川を渡らなければならない。
急流なわけでも深いわけでも無い、夏に子供が水遊びするのによさそうな程度の川ではあるが、橋など当然ない。
渡る為に橋を作っても、草原を忌避する村の人たちには迷惑だろう。
岩で飛び石でも作ろう。
村の近くで作るよりも、少し下流に作るのがよさそうだ。
子供が万が一川で流された時などには助けやすくなるだろう。
そう考えて川原を少し下流に歩いていくと、川の半ば当たりに岩が顔を出している所があった。
適度に村から離れているし、ここが都合がよさそうだ。
他に岩が無いか周りを見渡すが、良さそうな物は見当たらない。
森から持ってくるか?それもどうかと思う。
ふむ。
地面に手を付いて辺りに意識を浸透させてみる。
注意して感じてみると、土と石と岩の判別ができた。
早速岩を二つ、チカラを使って掘り出す。
なかなかゴツゴツとした岩だ。足場としては安定してはいないが、自分が渡る為だけなのでかまわないだろう。
それを空間転移で川の水面から落とす。
それほど大きな音はしなかった。
盛大に「どっぱーん」とやると気持ちがよさそうではあったが、村まで聞こえて驚かすのもどうかと思うのでやめておこう。
間隔はちょっと広めになった。
またいで足が届く距離では無いが、ちょっとジャンプすれば楽に渡れる。
岩の上をひょいひょい渡って川向こうに到着。
先ずは丘の上に上ってみよう。
見た限りにおいて、動物はいない。
水場の脇にこれだけ草が生えているんだから、草食動物がいてもいいだろうに。
村の人たちが狩り尽くした訳でもないだろうし、何かあるのだろうか?
ちょこちょこ小さな花がみられる。
何か面白いものでも生えていないか見ながらのんびり歩いていき、丘の上に立って先を見て驚いた。
恐竜がいた。
それほど大きそうにも見えないが、見た感じとしては草食の恐竜だ。
体は丸い山形で長い首と尻尾。色は濃い緑だろう。
そんなのが群れているわけではなく、ちらほらと点在している。
なんだこれは。
全体的にのんびりした感じなので、それほど危険だとは思わないが、人と恐竜が一緒の時代に居るとは・・・
確か恐竜は、もっと温暖な気候だから生息できた爬虫類。
四季のあるここでは冬などどうしているのだろうか。
呆然と見つめる事しかできなかった。