31話 自分の事は自分で・・・だったよね?
「とりあえずは、これくらいあればいいかな?」
ジャガイモ人参キャベツにトマト。説明しながら採り集めた。
「これが食べられるんですかぁ・・・ちょっと信じられないですねぇ。」
「人参やキャベツはこのままでも食べられるけどね。あと味付けするものが欲しいから、また家に寄るね。」
そう言って家に向けて歩き出す。
昼ご飯を持っていくときに一緒に持って行っても良かったのだが、肉の血抜きに時間がかかるから、一緒に取りに来ようと持ってこなかったのだ。
ついでに、人避けの法があるからミレイ一人では入れないことを知っておいてもらう為だ。
何かの時に、訪ねるつもりで迷子になられても困る。
「さて、家に着いたんだけど、ミレイ分かる?」
「え、着いたって・・・家なんて無いですよ!?」
「うん。ちゃんと着いてるんだよ。でも、ミレイには分からないようになってるんだ。一人の時に来ようとしてもたどり着けないから、気をつけてね。」
「よく分からないですけど・・・ケイさんって、本当に不思議な事ができるんですねぇ・・・」
「これは本当に特殊な事なんだけどね。だから、これはミレイには多分教えないと思う。覚えるのにすっごく時間がかかっちゃうから、それなら他のものを覚えて慣れた方がいいと思うからね。
じゃ、入るよ。僕に捕まって、目を閉じて、ただ付いて来る事だけを考えて。」
「はい、わかりました。」
後ろに回って服を抓むミレイ。
ゆっくり歩いて境界をくぐる。
「ほら着いたよ。目を開けてごらん?」
「ふぁ・・・本当に家があります・・・」
「ちょっと待っててね。必要なものを集めてくるから。あ、後ろに下がると外に出ちゃうから気をつけてね。」
肉。塩。唐辛子。胡椒。欲しいものを集めてくる。
しかし、手荷物が多いなぁ・・・毛皮を風呂敷代わりに使うか?いや、今手頃なのが無いな。
しょうがないか。最後の木桶も持っていってしまおう。
何かかごを作れるような蔓を探さないとな。
「おまたせ。さ、戻ろうか。」
ミレイはまだキョロキョロしていた。
*****
発見は、切るのに黒曜石を使っていた事だ。
肉を捌くのも、矢の先を尖らせるのもこれを使っているそうだ。
実際使ってみると、本当に切れ味がいい。これは便利だ。
鏃として矢の先に付けたりはしないのかな?金属が見つかるまではそうしていた筈なんだが、そこまで至っていないという事なんだろうか。
薪をまな板代わりに唐辛子を細かく刻んで胡椒は石ですりつぶして。トマト仕立てで鍋を作った。
お母さんは普段食べているのが重かったらしく、食べやすいといっぱい食べてくれた。
問題は鍋が小さいことだ。所詮は一人用に作ったものだからね。
大きいのを早く作ろう。 3人では全然足らなかったので3回も作り直した。
その為か匂いの為か、周りの人たちも興味を持ったようだ。
だから4回目の鍋はみんなに振舞うために作った。
食べさせてみると、みんな驚きながらも美味しいと言って喜んでくれた。
無駄になるかもと思いながらも一応と思い、鍋は5組焼く準備をしてあるが、無駄になるどころか足りない感じだ。
焼き方を教えて自分たちで作れるようになってもらおう。