29話 異世界といえば魔法でしょ
小走りに村に向かいながら思う。
ミレイと交代して自分も水浴びをしたが、すっきりとはしたが水が冷たかった。
いつもは夜に少し暖めて風呂に入るのだが、昼間だから大丈夫だろうと思ったのが甘かったようだ。
ミレイは平気そうだ。いつものことなのだろう。
だからこそ余計に侮ってしまった。
これは風邪を引けるかな。
二人とも身奇麗にしたので急いで村に向かう。お昼は過ぎている。
ミリヤさんを心配させるし、お腹も空かしているだろう。
そこで思ったのだが、鍋が出来上がるのを待たなくても今まで使っていたものを持っていけばいいのではないだろうか。
そこに思い至らなかったのが情けないが、思いついたのだから持って行こう。
昼はすでに待たせているので諦めて、夜は一緒に鍋を食べよう。
自分で鍋の道具一式を持ち、ミレイには昼用に採った食べ物を持ってもらっている。
小走りとはいえ、ちゃんと付いて来ているミレイ。
本当に弱いのだろうか?
それとも周りが強いだけなのだろうか?
「ミレイ大丈夫?」
振り向いて聞くと、声を出すのは辛いみたいでうなずいている。
息は上がっていたのね。ちょっと安心。他の人が力の塊だったらどうしようかと思った。
まぁみんなマッチョだが。
男も女もムッキムキだが。
子供ですらなかなかのモノだった。
それ位でないと生き残れないのだろうが、それだとよくミレイは生き残れているものだ。
神に感謝しよう。
「ちょっと歩こうか。流石に疲れたよ。」
そう言って歩き出す。
それにミレイも合わせて、隣に並ぶ。
「ありがとうございます。このまま行ったら転んじゃってたかもしれません。」
お母さんには悪いが、もう少し我慢してもらおう。
「でも、さっきはどうやって風の悪魔を倒したんですか?いきなりバラバラになってましたよ?」
やっぱり気付くよね。
しかしあれも風の悪魔扱いなのか。多分違うものだよ?
「本当は、僕が狩りする時って弓矢使わないんだ。ああやって倒してるんだよ。」
もうチカラの事も話してしまおう。
「そのうちミレイにも教えるから、それまでは話さないでね?あれを見たミレイでも変だと思うでしょ?」
「そうですね。何が起こったのか分かりません。あんな事、誰でも出来るようになるんですか?」
「多分出来ると思うよ? でも、誰でもできる物だって分かってもらってからじゃないと怖がらせちゃうかもしれないからね。だから、ミレイが出来るようになるまで内緒ね?」
よかった。チカラの事を思い出しても怯えているわけでは無さそうだ。
「やっと村が見えてきたよ。」