27話 恐怖に歪む顔
「これだけあれば、お昼には十分だね。」
「はい。3人でお腹いっぱい食べれます。」
うれしそうに笑う。幸せそうだなぁ。
「こんなに安心していっぱいごはん採れるなんて、夢のようです。ケイさんのおかげです。」
「じゃ、これからも一緒にいっぱい採ろうね。そして、いっぱいいろんなの食べようね。ミレイが知らないだけで、他にも食べられる物、いっぱいあるんだよ?」
「そうなんですか?どれです?」
「今採っても食べにくいものだから、食べるための道具が出来たら教えてあげるね。楽しみにしておいて。」
「その道具があれば、あの赤い木の実も食べられます?」
「うん。その為にも今作ってるから、楽しみにね。あと、お母さんもごはんが食べやすくなるよ。お肉とかだと、弱ってる体には重たいからね。まず食べやすいもので元気になってもらおう。」
「そうなんですか・・・いつもお母さん、ごはん採ってきてもちょっとしか食べなかったのって、その所為なんですね。私に遠慮してるのかと思ってました。」
「ミレイにいっぱい食べて欲しいって思ってるのもあると思うけどね。」
親子助け合ってるんだなぁ。感心感心。
お・・・何か気配。狙われてるか?
「ちょっと待って、ミレイ。何かいるみたい。」
「え!」
「ゆっくりこっちに来て、身を低くして。大丈夫。ちゃんと守るから。」
そう言って弓を取る。矢は残り2本。どうせこれでは倒せないだろうから、矢と一緒にチカラを放ってしまおう。
何処から来る?後ろか?風は左から。なら右か?
ミレイの右側に立つ。
上!?
焦げ茶色に黄緑の斑。知らない奴だ。木の枝から飛び掛ってきた。
右上に向けて矢と風を放つ。飛び掛ってきている以上、避けることなどできないはずだ。
矢は右肩に刺さり、風は頭を半分に切り裂いた。
体には慣性が働き、結果抱きかかえるように倒れることになった。
血まみれである・・・
着替えもうないんだよな。
そんなことを思ってため息をつく。
ミレイを見ると、もう一匹居た!
ミレイは恐怖に全く動けないでいる。
「ミレイ!」
死体を抱え込んでいるため起き上がれない。まともに動けない。
チカラを使うにも集中も足らない為、身振りで補う。
左手を振り、その五指の軌跡に合わせて風を飛ばす。
見事に胴を輪切りにした。
五指の分全てで切り裂いているので細切れになっている。
問題は・・・ミレイも血まみれだ。
肉片をかぶってしまっている。
「ミレイ、大丈夫かい?」
恐怖に固まっている。声も出ないようだ。
抱き起こして「もう大丈夫」と声をかけるも効果は無さそうだ。
幸いここは自分の家に近い。連れて行って休ませよう。