第8話
はじめまして。
この物語は、桜を追いかけて日本を旅する青年の話です。
仕事に疲れ、少し立ち止まってしまった主人公カナタが、軽キャンピングカー「あお」で桜前線を追いかけながら日本を北へ旅していきます。
満開の桜だけではなく、散り始めた桜、葉桜、そして桜のない道もあります。
旅の中で出会う人や景色、そして小さな思い出が、少しずつカナタの心を前に進ませていきます。
ゆっくりとした旅の物語ですが、よかったらカナタと一緒に春の日本を旅してみてください。
第8話 寒緋桜
朝の海を見たあと。
カナタは「あお」に戻った。
ドアを開けると、車の中は少し暖かくなっていた。
カナタは運転席に座る。
エンジンをかける。
軽い音が静かな朝に響いた。
「さて……どこ行くかな」
ナビも決めていない。
この旅は、急ぐ旅ではない。
桜を探しながら、ゆっくり進むだけ。
カナタは海沿いの道を走る。
青い海。
ゆっくり流れる雲。
沖縄の朝は、どこか時間がゆっくりだった。
しばらく走ると、小さな公園が見えた。
昨日見た桜の場所だった。
カナタは「あお」を止める。
車を降りて、公園へ歩く。
朝の光の中で、桜は静かに咲いていた。
濃いピンク色の花。
下を向くように咲く花びら。
寒緋桜。
カナタは桜を見上げる。
風が吹く。
花がゆっくり揺れる。
カナタはスマホを取り出す。
少し調べる。
「桜前線」
画面に地図が出る。
桜の開花は、南から北へ進んでいく。
沖縄。
九州。
本州。
東北。
北海道。
春が、日本を旅している。
カナタはその地図を見る。
そして、ふと思う。
「じゃあ……」
桜を見上げる。
「追いかけてみるか」
沖縄から始まる桜。
それを北へ。
日本を旅しながら。
カナタは小さく笑う。
「面白そうだな」
カナタは桜をもう一度見上げる。
風が吹く。
花が揺れる。
この桜が、旅の最初の桜。
そう思うと、少し特別に見えた。
カナタは「あお」に戻る。
エンジンをかける。
青い軽キャンピングカーがゆっくり動き出す。
桜前線を追いかけて。
カナタの旅は、
ここから本当に始まった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この物語では、日本のいろいろな場所を旅しながら、桜と人の小さな物語を書いていきたいと思っています。
桜は満開の時間がとても短く、同じ場所でも少しの時間で景色が変わってしまいます。
その変わっていく景色も含めて、旅の時間なのだと思います。
満開の桜だけではなく、散った桜や葉桜、そして桜のない日もある旅になりますが、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
もしよろしければ、ブックマークや感想などいただけるととても励みになります。
これからもカナタの桜の旅は続いていきますので、よかったらまた次の話でお会いできたら嬉しいです。




