第6話
はじめまして。
この物語は、桜を追いかけて日本を旅する青年の話です。
仕事に疲れ、少し立ち止まってしまった主人公カナタが、軽キャンピングカー「あお」で桜前線を追いかけながら日本を北へ旅していきます。
満開の桜だけではなく、散り始めた桜、葉桜、そして桜のない道もあります。
旅の中で出会う人や景色、そして小さな思い出が、少しずつカナタの心を前に進ませていきます。
ゆっくりとした旅の物語ですが、よかったらカナタと一緒に春の日本を旅してみてください。
第6話 沖縄の空気
フェリーは朝、港に着いた。
カナタは「あお」のエンジンをかける。
船の中には車の音が少しずつ広がっていた。
前の車が動き出す。
カナタもゆっくりとアクセルを踏む。
スロープを下りる。
そして、港の外へ出た。
その瞬間。
カナタは思わず言った。
「……あったかい」
空気が違う。
やわらかい。
福島の冬とは、まるで別の季節だった。
風がやさしい。
太陽の光も、どこか明るい。
カナタは少し笑う。
「冬なのに、春みたいだな」
空は青かった。
雲がゆっくり流れている。
遠くに海が見える。
カナタは窓を開ける。
暖かい風が車の中に入ってきた。
気持ちいい。
カナタは「あお」をゆっくり走らせる。
知らない町。
知らない道。
でも、不思議と落ち着いていた。
急ぐ旅ではない。
桜を追いかける旅。
それだけだ。
カナタは海沿いの道を走る。
青い海。
白い波。
見たことのない景色だった。
しばらく走ると、小さな公園が見えた。
カナタは「あお」を止める。
少し歩く。
すると。
ピンク色の花が見えた。
「……桜?」
近づく。
花の色が濃い。
下を向くように咲いている。
カナタはスマホで調べる。
寒緋桜。
沖縄の桜だった。
カナタはその桜を見上げる。
風が吹く。
花が揺れる。
冬なのに、桜が咲いている。
不思議な感じだった。
カナタは小さくつぶやく。
「ここから始まるんだな」
桜は南から北へ咲いていく。
沖縄。
九州。
本州。
東北。
北海道。
カナタは桜を見ながら思う。
「追いかけてみるか」
桜前線を。
日本を北へ。
カナタの旅は、まだ始まったばかりだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この物語では、日本のいろいろな場所を旅しながら、桜と人の小さな物語を書いていきたいと思っています。
桜は満開の時間がとても短く、同じ場所でも少しの時間で景色が変わってしまいます。
その変わっていく景色も含めて、旅の時間なのだと思います。
満開の桜だけではなく、散った桜や葉桜、そして桜のない日もある旅になりますが、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
もしよろしければ、ブックマークや感想などいただけるととても励みになります。
これからもカナタの桜の旅は続いていきますので、よかったらまた次の話でお会いできたら嬉しいです。




