第3話 青い車「あお」
はじめまして。
この物語は、桜を追いかけて日本を旅する青年の話です。
仕事に疲れ、少し立ち止まってしまった主人公カナタが、軽キャンピングカー「あお」で桜前線を追いかけながら日本を北へ旅していきます。
満開の桜だけではなく、散り始めた桜、葉桜、そして桜のない道もあります。
旅の中で出会う人や景色、そして小さな思い出が、少しずつカナタの心を前に進ませていきます。
ゆっくりとした旅の物語ですが、よかったらカナタと一緒に春の日本を旅してみてください。
第3話 青い車「あお」
カナタの車は、小さな軽自動車だった。
青い車。
特別な車ではない。
五年前、仕事を始めたときに買った
ただの通勤用の車だった。
カナタはその車の前に立つ。
アパートの駐車場。
昼の光が車の屋根に反射している。
「これで旅か……」
少しだけ不安になる。
普通の軽自動車だ。
長い旅なんてできるのだろうか。
でも、よく考える。
ホテルに泊まるお金はない。
だったら、車で寝ればいい。
カナタはスマホで調べる。
「車中泊」
すると、いろいろな記事が出てきた。
軽自動車でも
車中泊をして旅している人がいる。
後部座席を外して
ベッドを作ったり。
カナタは車の後ろを開ける。
「……できるかもな」
その日から、カナタは車を少しずつ改造し始めた。
ホームセンターへ行く。
板。
工具。
カーテン。
必要そうなものを買う。
アパートの駐車場で作業する。
後部座席を外す。
板を置く。
簡単なベッドを作る。
思ったより悪くない。
カナタは少し笑う。
「なんとかなるか」
小さな棚も置く。
カメラを置く場所。
ライト。
ポータブル電源。
旅に必要そうなものを、少しずつ揃えていく。
数日後。
カナタは完成した車を見ていた。
完璧ではない。
でも、旅はできる。
カナタは車のボンネットを軽く叩く。
「名前つけるか」
少し考える。
青い車。
それなら。
「……あお」
そのままの名前だった。
でも、それでよかった。
カナタは運転席に座る。
ハンドルを握る。
「よろしくな、あお」
エンジンをかける。
軽い音が響く。
この小さな車と一緒に
日本を旅する。
桜を追いかけて。
カナタの旅は、
もうすぐ始まる。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この物語では、日本のいろいろな場所を旅しながら、桜と人の小さな物語を書いていきたいと思っています。
桜は満開の時間がとても短く、同じ場所でも少しの時間で景色が変わってしまいます。
その変わっていく景色も含めて、旅の時間なのだと思います。
満開の桜だけではなく、散った桜や葉桜、そして桜のない日もある旅になりますが、ゆっくり読んでいただけたら嬉しいです。
もしよろしければ、ブックマークや感想などいただけるととても励みになります。
これからもカナタの桜の旅は続いていきますので、よかったらまた次の話でお会いできたら嬉しいです。




