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剣と魔法のプロトフェイズ  作者: えんぴつくん
3/15

[ep.2.5]入学式

朝の光が、学院の荘厳なホールに差し込んでいた。

広々とした大理石の床に、高い天井。壁に浮かぶ魔石の灯りが、静かにゆらめいている。

エストレーラ学院。選ばれた者しか入ることの叶わない、名門中の名門。


カエデは、長い椅子に静かに座っていた。両隣には見覚えのある顔。

ミリアとリオンも同じ列に座っている。


「……本当に、ここに来たんだな」

自分の手のひらを見つめながら、カエデはぽつりと呟いた。


ミリアが少し身を寄せて、にっこり笑う。


「ねえ、カエデちゃん。試験のときより、ちょっと背伸びた?」


「そうかな?」


「うん。あと雰囲気も違う。すごく……キリッとしてる」


「それは……たぶん緊張してるだけだよ」


「ふふ、そうかもね。あ、リオンくんもいるよね?」


「……ああ。二人とも、合格して当然って感じだったしな」


リオンはそっけないようでいて、どこか照れたように視線を逸らす。


そのとき、壇上に一人の人物が歩み出た。

ローブをまとった長身の老魔術師。白い髭に、重厚な雰囲気。


「静粛に──」


声は大きくなかったのに、ホール中の空気がぴたりと止まる。


「エストレーラ学院へ、ようこそ。ここは、才ある者が集い、己を磨く場。

しかし、才とは誇るものではなく、磨くための“原石”にすぎん。

真の力とは、己を律し、他者を思い、歩み続けることで手に入る。

そのことを……三年後、己の成長で示してみせよ」


淡々とした口調だったが、なぜか言葉が胸に響いた。


(……努力し続ける。あの日から、ずっとそうしてきた。

ここでも、それを続けるだけ)


カエデはぎゅっと拳を握る。


「これより、新入生の諸君に学院の生活を……」


説明が続く中、ミリアがそっと囁く。


「ねえ、カエデちゃん」


「ん?」


「これから、よろしくね。私、同じクラスだったら嬉しいな」


「うん。きっと、なるよ。なんとなくだけど、そんな気がする」


二人の笑顔が重なる。


その瞬間、小さな未来の始まりが、確かに動き出した気がした。

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