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剣と魔法のプロトフェイズ  作者: えんぴつくん
13/15

[ep.10]リスタート

※毎日投稿していた本作ですが、今回でいったん一区切りとなります。

来週からは【毎週土曜日更新】に切り替えてお届けしていきます!要望などあればまた戻します。

次回の更新は”7月19日(11:30)”です。

翌朝。

陽は昇っていたが、カエデの心に差し込む光はまだ遠かった。


彼女は、誰もいない訓練場に立っていた。

剣を構える手に、迷いはない。だが、その瞳はどこか曇っていた。


(私の剣技は……通じていた。あの魔人に、ちゃんと傷をつけられた。

それは間違いじゃない。きっと、努力してきた成果だった)


けれど、それでも守れなかった。


(魔法は使える。回復も、攻撃も、少しは。

でも、あの時……最後に魔人が放った魔法、あれは……)


思い出すたびに、胸が締めつけられる。

あの一撃を、受けてしまったのはミリアだった。


(あの時、私は動けなかった。防げなかった。……力が足りなかった)


剣技だけでは届かない。

魔法だけでも足りない。


(私は、両方を極めないといけないんだ)


小さく息を吐いて、カエデは剣を振った。

魔力を込める。斬撃に意志を宿らせる。


剣を振るたび、魔力の流れが身体の中でざわめいた。

それは、ほんの微かな、だが確かな“気配”。


(……そうだ。私には、まだ知らないことがたくさんある)


あの日、図書館で見た古代の本。

文字は読めなかった。けれど、何かが胸に引っかかっていた。


(魔人が言ってた……“勇者は、神に創られた存在”って)


なら、私はなれない。

でも、ならば——私は私なりの“戦い方”を見つければいい。


「……もう、後悔はしたくない」


カエデはまっすぐに前を見た。

その小さな背中に、決意の気配が宿る。


誰かに言われたわけじゃない。

誰かのために、ただ自分で選んだ道。


「もっと強くなる。剣でも、魔法でも。

誰かを守るために……私にしかできない方法で」


そして彼女は、再び剣を構えた。

夜が明けきる前の静かな空気の中で、ただ一人、鍛錬を始めた。


訓練場の片隅、木剣を振るたびに汗が飛び散る。

ただ黙々と、型を繰り返す。

兄に教わった動きを、ひとつひとつ思い出すように。


けれど——集中できない。


カエデの意識は、昨日図書館で目にした古代書に引き寄せられていた。

それは、今の自分にとって“何かの鍵”になるような気がしてならなかった。


(あの文字……読めなかったけど、妙に惹かれる)


本能が、何かがあると告げていた。


(……やっぱり、あれを調べたい)


そう思った時、自然と剣を納めていた。

剣術は、今の自分にとって“ある程度は通用する”と証明された。

でも、魔法は——あの魔人の大魔法には、まるで届いていなかった。


(私の剣は通じた。でも、魔法ではあの魔人に届かなかった)


今の自分に足りないもの。それは「知識」だ。

そして、「魔法」だ。


「……決めた。しばらく、剣の練習は必要最低限にしよう」


その分、古代文字の勉強に時間を費やすことにした。


カエデは稽古場を後にし、再び図書館へと足を向けた。

ここまで毎日読んでくださった皆さま、本当にありがとうございました!

これからは週1のペースで、1エピソードあたりのボリュームも増やしつつ、より丁寧に描いていく予定です。

引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!

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