[ep.7.5]枯れない花
私の名前はミリア・アステル。
小さい頃、大怪我をしたことがある。そのとき通りがかった冒険者の人に魔法で治してもらった。……あの温かさが、ずっと心に残ってる。
それ以来、私の夢は決まった。
たくさんの人を魔法で助けたい。笑顔にしたい。痛みを消してあげたい。
その夢を叶えるために、私は回復魔術の修行を重ねた。誰かに教えてもらい、何度も練習し……もっと上手くなりたくて、エストレーラ学院を目指した。
そして——試験当日。
私は、ちょっと不思議な子を見かけた。
小柄で、私よりずっと幼く見えた。でも、話してみると驚いた。大人っぽい話し方で、落ち着いていて……何だか、ただ者じゃないって感じた。
その子の名前は、カエデ・メテオール。
試験では一度離れたけど、発表でその子が“上位合格”だと知って驚いた。あんなに小さいのに、剣技も魔法も一流だった。才能って、こういう人のことを言うんだと思った。
「そばにいれば、何か学べるかも」
そう思って、私はカエデを野外課題に誘った。
実際、カエデの動きは他の誰よりも洗練されていた。魔物三体の討伐も順調に終わった。……はずだった。
あれが現れるまでは。
魔人。存在しないはずの……伝説の敵。
カエデは迷わず剣を抜いて、立ち向かった。
私たちは動けなかった。見ていることしかできなかった。
そのときの自分を、私は一生許せない。
小さな女の子が命を賭けて戦っているのに、私は、ただ見ていただけ。
カエデなら、きっと勝てる。戦って、勝つ方法を持っている。そう信じたかった。
だけど、魔人が……魔法を構えた瞬間。
“これは、ダメだ”
“カエデが死ぬ”
……考えるより先に、身体が動いていた。
私の出せる、最大限のバリアを全身に張って——
その前に立った。
痛かった。熱かった。
でも、それよりも……
カエデが、無事でいてくれるかどうか、それだけが気がかりだった。
──かえでちゃんの声が聞こえた気がした。
「なんで庇ったの?」って。
なんでだろうね。
……きっと、守りたかったんだと思う。
でも、もう分かんないや。
ただ、最後に言わせて。
かえでちゃんのこと——
私は、ずっと尊敬してたよ。
大好きだった。