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アサクリ最新作の騒動―――これもう第二の慰安婦問題だろ

作者: 岡座 道糞

 つくづく思うが『なろう系』は極めてマトモな娯楽である。これ等の作品は、ちゃんと、言うまでも無く、フィクションである。司馬遼太郎の小説群を正しい歴史と勘違いしたのを司馬史観というのだが、作者の司馬はそういうのを鬱陶しく思っていたようだ。だがアサクリシャドウズに描写される”弥助、偉大なサムラ~イ”は全くフィクションでは無い。彼らはコレをリアルな歴史だと本気で思っている。あるいはリアルの歴史に価値など見出してない。彼らの、自分達の歴史観を日本人に押し付けようという熱意は並外れたものであり、恐らくはこれ等の行為を善導だと本気で思っているのである。

 アサシンクリード最新作『アサシンクリード・シャドウズ』は日本の戦国時代を舞台にしているのだが、その主人公に歴史に実在した黒人『弥助』を起用した事が原因で炎上している。一部の人間が騒ぐ程度の炎上でなく、製作元のUBIソフトの株価が暴落するなどの大騒ぎになっているのだ。ゲームの主人公に黒人を起用する事が何故にこのような大騒ぎに発展したのか? そもそも、まだ発売もされていない作品が何でこんなに荒れているのか? 


 結論を述べるなら、シャドウズそのものは”切っ掛け”に過ぎず、彼らの粗雑さを批判する為に引用されているに過ぎない。よく『ラストサムライ』などを引き合いに出して「コレは良いのか!?」とか騒ぐ擁護派がいるかなんも理解していない。ラストサムライはトム・クルーズ演じるネイサン・オールグレン大尉ではなく渡辺譲のカツモト・モリツグである。それに対して『弥助』は史実の大活躍した伝説の侍として紹介されているのである。


 問題の中心にあるのは『弥助』が侍か否か? 等という矮小な議論では無い。UBIの歴史認識では『弥助』とは”日本人から神のように敬われ、6万人の忍者軍団と戦い、武士団のトップに上り詰め、信長の首を持ちさることで日本の歴史を変えたと見なされている、中世日本で一番強かった伝説の侍”なのだ。恐ろしい事に、UBIが特別狂ってるのではなく、海外のWikipediaやらブリタニカやらCNNやら何やら認識ではそのようになっているのである。



 このようなイカレタ歴史認識の火付け役と目されるのがトーマス・ロックリーとかいうイギリス人だ。彼はWikipediaの”弥助”のページを見て売れる(・・・)と思ったらしく、それ以降『弥助の専門家』として名を売るべく歴史研究家と小説家の仮面をとっかえひっかえして出鱈目な主張をさも正史であるかの如く吹聴している。


 偶に彼がWikipediaの”弥助”ぺージの一次資料を抹消して改竄したという意見もあるが、コレは正確では無い。彼以前から意味不明のブラックナショナリズムだの黒人上げ運動はあった。彼は歴史的一次資料がA4用紙1枚ぐらいの人物の”専門家”になっただけである。彼は『弥助の専門家』として俺がソース! の怪文書を山ほど流し込んだのだ。こんなだから、海外における弥助研究なる代物はロックリーかそれ以外の妄想をもっともらしく並べ立てた代物になっている。


 妄想の構図も醜悪で、例えば本能寺の変の時に嫡男の信忠に本能寺の状況を知らせたのは村井貞勝という人物なのだが、ロックリーは彼の存在を抹殺してそこに弥助を押し込んでいる。正に絵にかいたような文化盗用だ。シャドウズの争点で弥助がホモセクシャルか否かというのがあったが、彼の著書ではそういう事になっている。根拠は信長は男色家だったから! (そもそも、信長が男色家だったかは後世による俗説の疑いも強い)ある人物がホモとして、彼と交友関係がある男性は全て彼と肉体関係にあるという事になるのだろうか? そしてそれを肯定的に捉える? 撫でポなみのトンチキ描写だな。男女の関係で書いたら権力勾配を利用した性的略取やら気色悪い妄想としか言われないような事がLGBTの文脈では全面肯定されるのである。


 だがロックリーは愚かさからこういう事をしているのでは無い、彼は確信犯なのである。査読ありの場では、弥助が侍であったか否かは諸説あると述べる一方で、査読が無い場面では、無茶苦茶な内容を語り、査読を求めず歴史家に自著を読ます事で、さも査読を受けたかのように偽装する。日本語版では『織田家の末裔を名乗る疑わしい人物が述べるところ』(なんか敷地内に卑弥呼の墓があるよ)という部分が英語版で『織田家の伝承』になっているなど、このような言語で内容を変えてる事は、彼が愚かさから妄想を陳列しているのでは無く確信犯的にこのような活動をしている証明と言えよう。


 小説ともなるとフルスロットルの妄想が陳列される。『弥助』は6か国語を完璧に操れた! とか。しかし彼はコレを妄想だとは思っていないようだ。過去のインタビューで彼の詳細はフィクションより優れているなどと述べている。そして真に恐ろしいのは、このような行為をトーマス・ロックリーは恐らく善行だと思ってやっている事である。彼はこのような本をアフリカの恵まれない子供たちに勇気付ける為とか言って無償で配っているのである。泣いてる子供を慰める為に公園の桜をへし折って渡してあげるようなものだろう。「わぁキレイ、ありがとうオジサン」ハンッ。



 彼の狂った歴史認識は、上記のスーパー黒人侍ヤスーケーに留まらない。こんなもん序章である。彼の認識によると、戦国日本では6000人だか60万人だか6億人だか6兆人の黒人奴隷がおったそうだ。証拠? 日本人は人種差別主義者だから証拠を隠蔽したんだ! との事。なんでもイエズス会は黒人奴隷に反対していたのに弥助以降、戦国大名が黒人奴隷を連れ歩く大ブームが産まれたんだと。つまり同時期のヨーロッパで実際にあった黒人奴隷を連れ歩く文化も日本が発祥だったんだよ!!? 証拠? 日本人は人種差別主義者だから証拠を(以下略)


 そもそも奴隷制の議論なんて、白人がやらかした大西洋の奴隷貿易のせいで定義が混沌に満ち溢れた代物である。戦国時代の日本に奴隷的立場の人間が居たか? と問われれば「居た」と言うより他に無い。しかし、それはどう言う定義の奴隷なのか? 丁稚奉公も奴隷労働か? というような複雑怪奇な議論になる。そこ等の配慮がロックリーにはかけらも無い。単にてめえら白人がそうだったから日本人もそうだったに違いないとかいう願望でしかない。


 彼の主張の根拠なんて牽強付会の体現でしかない。江戸幕府が第二帝政期フランスに派遣した外交団、池田使節団に参加していた玉木三弥という人物がいる。ロックリーは彼が弥助の子孫だと主張している。根拠は白黒写真に写っている顔がアフリカ人っぽいから。三弥の”弥”は弥助の”弥”と同じだから。⋯⋯⋯一事が万事こんな程度である。

 

 ロックリーが主張する歴史認識の話からは外れるが、平安時代の征夷大将軍、坂上田村麻呂は黒人だったとか。仏像が黒いのは黒人だからとか。侍が勇敢である為には黒人の血が必要だとか。訳の判らない聞いた事も無い事が白人どもの世界では”ただしい歴史”として流布されており、日本においても正しい歴史なのだという事になっており、それに異を唱えると”正しい歴史”を学べなどと説教されて、人種差別主義者扱いされる訳である。


 多文化共生の名の基に行われる”歴史の包括化”というヤツはこの域に達する。ロックリーも多文化共生と絡めて弥助の話をしている。いいかげん、主義者や確信犯という存在について正しい理解をすべきだろう。彼らは端からフィクションだのリアルだの気にしていない。彼らにあるのは自分達の思想に都合が良いか否かだけであり、彼らがフィクションどうこう言うのは単にマトモに立証できない事柄を主張し続ける方便でしかない。


 気が付いたら「私の祖先は日本で奴隷だった」とか主張する謎の黒人が表れ、それを支援する謎の市民団体や弁護士現れ訴訟を起こし、社民党や共産党みたいな政党が国家賠償しろとか言い出し、否定する人間を片っ端から差別主義者扱いして、自民党が日和って意味不明の玉虫色解決を目指して「日本政府が認めた!」とか言われる事になるのだ。コレは妄想か? 従軍慰安婦問題の推移そのものである。しょうもない文筆家がマスコミに取り上げてもらう為に書き上げた妄想文がこんな大事になった。


 このポスト真実の世界で真実だの歴史的資料なんてクソの役にも立たない。旭日旗騒動が正に象徴的である。それまで旭日旗なんて、だ~れも騒いでいなかったのに、韓国人サッカー選手が試合に勝ったからと自国の旗を他国のグランドに突き立てるという行為をして批判されたから、旭日旗がどうのと意味不明の言い訳をしたら。そんな主張に「日本人としてやましさを感じないのか、この人でなし!」とか同調し旭日旗はヘイトだ~とか言われた今に至るわけだ。


 左翼は後退したな~んて勘違いしてる連中は現実を見た方が良い。極左連中は共産主義やらを捨て去り、LGBTだの多文化共生だのに変わっただけで、今全盛を迎えているのである。証拠は無いけど根拠はある! 俺がそう思った! とかはモリカケ問題でも良く見られた典型的な極左論法である。こんな敬意のひと欠片すら持ち合わせていない連中と、机を合わせて生活しろなどと強制させられるのが多文化共生であり、そんなものを推し進める事が良い事だと言うのが多文化共生運動なのである。ホント、素晴らしい時代だよ21世紀。最低すぎてマジで最高だね!

この頭おかしくなる歴史認識論争に、経済専門家面して諮問会議に入り込んでいたデービット・アトキンソンのSNSアカウントが参戦。証拠は無いけど、黒人奴隷は沢山いたんだよ! みたいなロックリーの珍説を批判する人に「嘘だという証拠はあるのか!」などと魔女狩り裁判もビックリの主張をした。このバカ臭すぎて詭弁とすら言えぬ主張がお気に入りらしく何度も言っている。この前もふざけたイギリス人観光客が神社の鈴でターザンゴッコしてるのに苦言を呈すと「差別主義者!」などと言っていたそうだし。⋯⋯⋯マジであのアカウントなんなの? 


あれがガチに本人だとしたら、自称保守の改革論者どもは、あんな人間を親日的外国人などとヨイショしている訳である。完全にホラーだな。

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デービット・アトキンソンの件は、本当に酷かった 自民党がああいった人物を 要職に付けてるのが、自民党がもはや左翼政党である証拠以外の何物でもない 自分から訳の分からない事を言って(日本に黒人奴隷が大勢…
[一言] 投稿お疲れ様です 今回の騒ぎで私が連想したのは故森村誠一せんせを中国共産党と新聞赤旗が操り有りもしない生体実験云々で騒いだ"悪魔の飽食"や告発者が謎の自殺遂げた"南京大虐殺"の其れなんでさ…
[一言] 面白いことに、東大の助教授が歴史的な検証を無視して感情論で他者は罵倒したことがおかしいことを指摘しない自称マスメディアは存在価値はあるのか
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